2015年4月27日月曜日

日経 瀬能繁編集委員のほとんど何も分析しない記事(2)

せっかくの機会なので、瀬能繁編集委員に関する判断材料を追加で紹介したい。取り上げるのは、2014年10月29日の日経朝刊総合面に載った「真相深層~少子化対策より交付金?」という記事だ。掲載直後に瀬能編集委員へ送ったメールを基に、この記事の問題点を検証してみる。

メールを送ったのは、慶応大学の男子学生から「この記事はおかしいのではないか」と相談を受けたのがきっかけだ。記事では人口密度と出生率に関して、以下のように記述している。


ブルージュ(ベルギー)の西フランドル庁舎
                  ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

最近の欧州の例は真逆の結果を示しているからだ。欧州連合(EU)統計局の地域別データからは、人口密度が高い地域ほど出生率が高いという相関があることがわかる



慶大生が疑問に感じた内容は以下の通り。


【慶大生の疑問】

欧州には人口密度が高い地域ほど出生率が高いという相関がある」という説明は誤りではないか? 欧州の国別データで見ると、逆の相関(人口密度が高いほど出生率は低い)になってしまう。記事には「欧州の地域別人口密度と出生率」というグラフが付いていて、ここでも「人口密度が高い地域は出生率も高いという緩やかな相関を示す」と解説している。しかしグラフには人口密度の低い地域のデータが圧倒的に多く、相関を見るのに適していない。これで本当に統計学的に有意な相関が見出せるのか?


瀬能編集委員には慶大生の疑問を伝えるとともに、以下のように補足した。 


瀬能編集委員に送った補足の内容】

確かにグラフでデータの分布だけ見ると、相関関係はほとんどないように見えます。グラフに関して相関係数やP値を示して「統計学的に有意な数字だ」と訴えれば、学生も納得するでしょう。ただ、人口密度の高い地域のサンプルが少ないという問題は残ります。「人口密度6000人、出生率2.5の辺りに他と離れて存在する1地域を外れ値として除けば、少なくとも見た目の相関は完全になくなります。


慶大生の疑問に答えてくれるようお願いもしたが、この件で瀬能繁編集委員から返信はなかった。記事の説明には問題があると考えるべきだろう。この記事に関しては、さらに2点を指摘した。


~指摘その1~

【日経の記事】

「人口密度が高い地域ほど出生率が低いという議論をしていた」と日本創成会議のメンバーの一人、加藤久和明治大教授は振り返る。日本や米国のデータをみると、人口密度が高い地域ほど出生率が低いという相関はある。だが「なぜかという原因を突き止められなかった」(加藤氏)。それもそのはず。最近の欧州の例は真逆の結果を示しているからだ。欧州連合(EU)統計局の地域別データからは、人口密度が高い地域ほど出生率が高いという相関があることがわかる。
ノートルダム大聖堂(アントワープ)
        ※写真と本文は無関係です


【メールで指摘した内容】

「日米では人口密度と出生率に負の相関がある」「相関が生じる原因は不明」だとしましょう。その場合「欧州では人口密度と出生率に正の相関がある」と分かれば、「日米でなぜ負の相関が生じるのか分からないのも当然だ」となるでしょうか? 例えば、「日米では大都市ほど子育て支援策が貧弱だが、欧州では逆に大都市ほど支援策が充実している」という条件があって、これが出生率に影響を与えているとしましょう。その場合、「欧州では人口密度と出生率に正の相関が見られるのだから、日米で負の相関が出る理由が分からないのも当然だ」とはなりません。「逆の相関関係が見出せるのは、出生率に影響を与える主な要因が子育て支援策の充実度だからだ」との結論を導き出せます。

ついでに言うと「真逆」はお薦めしません。基本的には辞書にも載っていない新しい言葉です。市民権を得つつあるとは思いますが、紙面では「正反対」などとした方が無難です。特に高齢読者は「真逆」になじみが薄いようです。


~指摘その2~

【日経の記事】

都市部で少子化対策をやるのが効果的と小峰隆夫法政大教授はいう。(中略)ただ、政府が人口減を本気で止めようというのであれば、大都市への人口流入を止める前に、いま大都市にいる20~30歳代の若者向け出産・子育て支援を充実するのが先ではないか



【メールで指摘した内容】

「都市部で少子化対策をやるのが効果的」「大都市にいる若者向け出産・子育て支援を充実するのが先」と主張する根拠はあるのでしょうか? 記事では「人口密度と出生率に相関関係はあっても因果関係はない。都市部だから出産・子育てがしにくいという根拠はない」と示唆しています。ならば「都市部に限定した支援策を打ち出しても意味はない。都市部の出生率が低いのは偶然なのだから、都会でも田舎でも同じように支援していくべきだ」となるのが自然です。



※上記の指摘に対しても瀬能編集委員から反応はなかった。記事の内容も含めて判断すると瀬能編集委員には厳しい評価を下すしかない。

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