2020年9月5日土曜日

「歴代最長の次は安定か混沌か」に答えを出さない日経ビジネス安藤毅編集委員

雑誌は「遅いメディア」だ。誌面を作る上でこの認識は欠かせない。 「安倍首相、電撃辞任」といった注目度の高い話だと、読者もネットやテレビなどでかなりの情報を仕入れた上で雑誌を手に取ると考えるべきだ。そこで読んでもらうためには何らかの付加価値が要る。

大雨で増水した筑後川(福岡県久留米市)
       ※写真と本文は無関係です

その点で日経ビジネス9月7日号の緊急特集「安倍首相、電撃辞任~『歴代最長』の次は安定か混沌か」に合格点は与えられない。特に安藤毅編集委員が書いた「ポスト安倍、路線継承が濃厚」という記事は辛い。

特集の最初で「コロナ禍の折、この後に待ち受ける日本の政治・経済のシナリオは再び安定か、混沌か。早期の次期衆院選の可能性もちらく中、危うさばかりが目立つニッポンの道のりを展望する」と宣言したのだから「安定か混沌か」に安藤編集委員なりの答えを出すべきだ。

しかし記事ではこれまでの経緯を振り返って行数を稼いだ後、以下のように記事を締めている。


【日経ビジネスの記事】

自民党執行部は9月14日に新総裁を選出。16日に臨時国会を召集し、首相指名選挙を行う方向で検討している。

一方、15日にも立憲民主党や国民民主党などによる新党の結党大会が開かれる予定だ。政権と野党勢力が新たな体制となり、今の衆院議員の任期満了が約1年後の21年10月に迫る中、衆院解散・総選挙の時期が次の焦点になってくる。

「新総裁選出の御祝いムードを追い風に早期に解散に踏み切るか、それとも当面は新型コロナ対応などを重視し、来年の任期満了近くの選挙になるか。このどちらかの可能性が大きい」

自民内ではこんな見立てが語られている。仮に来年秋の選挙となれば、来年9月にもう一度行われる次の総裁選で「選挙の顔」として別の総裁を選ぶ可能性もある。

今年初めに誰も予想しなかったような政治・経済状況となる中、永田町は本格的な「政治の季節」に入った。先に待つのは安定、混沌のどちらだろうか


◎結局「成り行き注目」では…

この後に待ち受ける日本の政治・経済のシナリオは再び安定か、混沌か」という問題提起に対し、安藤編集委員が出した答えは「先に待つのは安定、混沌のどちらだろうか」。「AとBのどちらになるのか」との問いに「AとBのどちらになるんでしょうね」と返して、答えになるのか。

全く分からないのならば、そう書いてくれた方がまだ納得できる。「これまでのところ、石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長、菅義偉官房長官が出馬の意向を固めた。選挙戦はこの3氏を軸に展開される公算が大きくなっている」「両院議員総会方式は石破氏に不利に働くとの見方が根強い」「今回の日経調査でも浮き彫りになったように岸田氏は世論調査で支持率が伸び悩んでいる。発信力が弱いとの指摘があり、巻き返しに懸命だ」といった広く言われている話を改めて読み進めてきたのは、その後に「安定か、混沌か」に関して安藤編集委員にしか書けない分析が出てくると期待したからだ。

しかし安藤編集委員は「先に待つのは安定、混沌のどちらだろうか」で逃げてしまう。こんな成り行き注目型の結論で良ければ、素人でも出せる。「自分は何のために政治の世界を取材してきたのか」を改めて自問してほしい。

安定か、混沌か」に明確な答えを出せとは言わない。条件付きでもいい。だが「先に待つのは安定、混沌のどちらだろうか」ではダメだ。安藤編集委員はそのことに早く気付いてほしい。


※今回取り上げた記事「安倍首相、電撃辞任~『歴代最長』の次は安定か混沌か」https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00733/


※記事の評価はD(問題あり)。安藤毅編集委員への評価はC(平均的)からDへ引き下げる。安藤編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「キャメロン発言が示唆に富む」? 日経ビジネス安藤毅編集委員https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_11.html

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