2020年9月4日金曜日

「全要素生産性はむしろ下がっている」? 誤解を招く日経「途上の経済政策(4)」

12年10~12月期」と比べて「全要素生産性はむしろ下がっている」と日本経済新聞が書いている。しかし記事に付けたグラフを見ると「年率換算の前期比上昇率」は低水準ながらもプラスを維持している。記事の説明は正しいのだろうか。日経には以下の内容で問い合わせを送った。
大雨で増水した筑後川(福岡県久留米市)
       ※写真と本文は無関係です



【日経への問い合わせ】

4日の日本経済新聞朝刊経済面に載った「途上の経済政策(4)成長の地力 高まらず~古びた規制や慣行 壁に」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは「経済の地力を示す潜在成長率は1~3月期に0.9%と政権発足当時の12年10~12月期(0.8%)とほぼ同じ。技術革新などを反映する質的な成長要因である全要素生産性はむしろ下がっている」との記述です。

これを信じれば「全要素生産性」は「12年10~12月期」と比べて「下がっている」は


ずです。記事に付けたグラフを見ると「全要素生産性」の「年率換算の前期比上昇率」は「12年10~12月期」が1.0%。直近の2020年1~3月期が0.4%で、この間ずっとプラスを維持しています。つまり「全要素生産性」は「上がって」います。

全要素生産性はむしろ下がっている」との説明は誤りではありませんか。「全要素生産性の上昇率はむしろ下がっている」と伝えたかったのかもしれませんが、そうは書いていません。記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。グラフに誤りがあるという可能性も残ります。いずれも問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

せっかくの機会なので「国内企業は円安や法人税率引き下げなどの恩恵を受けながら、総じて成長投資には動かず内部留保を膨らませた」との記述にも注文を付けておきます。この書き方だと「内部留保」とは「成長投資」に向かわなかった分が蓄積したものとの印象を読者に与えてしまいます。

これに関しては、2018年9月8日付の御紙の記事でも「(内部留保は)現預金など手元資金そのものと思われがちだが、設備投資やM&A(合併・買収)に使われ、子会社の株式や機械設備などに形を変えている場合もある」と注意喚起しています。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある対応を心掛けてください。


◇  ◇  ◇


追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「途上の経済政策(4)成長の地力 高まらず~古びた規制や慣行 壁に


※記事の評価はD(問題あり)

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