2020年9月22日火曜日

「女性雇用」は「非正規が増えただけ」? 日経「菅新政権 政策を問う」の無理筋

 「女性活躍」に関する記事は総じて説得力に欠ける。22日の日本経済新聞朝刊1面に載った「菅新政権 政策を問う(4)女性活躍 脱最下位、支援に課題」という記事もそうだ。問題のくだりを見ていこう。

増水した筑後川 ※写真と本文は無関係です


【日経の記事】

安倍晋三前首相が成長戦略に据えた女性活躍。今、急速にしぼんでいる。コロナ禍が原因だ。

前政権時代に就業者は約400万人増え、うち330万人が女性だった。しかし3月以降、コロナ禍が飲食業などで働く彼女たちを直撃した。労働力調査によると非正規女性は7月時点で3月から88万人も減った。

安倍政権で増えた女性雇用の4割強は非正規。活躍推進といいながら不安定な非正規雇用が増えただけ。そんな政策の脆弱さが明らかになった。


◎「非正規雇用が増えただけ」?


まず「活躍推進といいながら不安定な非正規雇用が増えただけ」と言えるだろうか。「前政権時代」に増えた「就業者」の「うち330万人が女性」。その「4割強は非正規」だとすれば、正規雇用が200万人近く「増えた」計算になる。それでも「非正規雇用が増えただけ」なのか。

活躍推進といいながら不安定な非正規雇用が増えただけ」との記述からは「非正規雇用が増え」ても「活躍」にはならないとの前提を感じる。だとすれば「非正規女性は7月時点で3月から88万人も減った」ことを根拠に「女性活躍」が「急速にしぼんでいる」と見なすのはおかしい。「非正規女性」は「コロナ禍」の前から「活躍」していないはずだ。

非正規女性」も「活躍」していると見るのであれば「活躍推進といいながら不安定な非正規雇用が増えただけ」と嘆く必要はない。「非正規雇用が増えた」のも「活躍推進」に当たるのだから。

女性活躍」に関する記事が説得力に欠けるのは「女性活躍」の基準に問題があるからだ。今回の記事では「女性活躍 脱最下位、支援に課題」という見出しを付けている。「国際労働機関によると日本の女性管理職比率は主要7カ国(G7)で最下位」という事実から「女性活躍」で「最下位」と見なしたのだろう。

非正規社員や平社員はいくら仕事をしても「女性活躍」の対象にはならないと考えるのならば「女性管理職比率」で「女性活躍」の度合いも見るのも分かる。だが、個人的には非正規社員や平社員の中にもきちんと仕事をして「活躍」している人は山のようにいると思える。さらに言えば、家事や育児に打ち込む専業主婦も立派な「女性活躍」だと映る。

なのに「日本の女性管理職比率は主要7カ国(G7)で最下位」だから何とかしましょうと言われても共感できない。「女性活躍」ではなく「女性昇進」ならば「管理職比率」で見ることに賛成できるのだが…。


※今回取り上げた記事「菅新政権 政策を問う(4)女性活躍 脱最下位、支援に課題

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200922&ng=DGKKZO64106830R20C20A9MM8000


※記事の評価はD(問題あり)

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