2020年9月27日日曜日

情緒的な主張が目立つ日経 山内菜穂子政治部次長の「風見鶏~『幸せ』視点の少子化対策」

 27日の日本経済新聞朝刊総合3面に載った「風見鶏~『幸せ』視点の少子化対策」は情緒的な主張が目立った。記事の後半部分を見てみよう。

二連水車(福岡県朝倉市)
    ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

これからの少子化対策は何を重視すべきか。駒村康平慶応大教授は「不妊治療のニーズが高まる根底には、長時間労働や不安定な労働がある」と指摘し、働き方改革を挙げる。「少子化は社会のゆがみの結果であることを直視すべきだ」

世界をみれば新しい成長のあり方を模索する動きがある。フランス政府は19年、「使命を果たす会社」という新たな会社の形態を法で規定した。仏食品大手ダノンは6月、この形態へ定款を変更した。社会や環境などで目標を設定し、第三者が進捗状況を監督する。

首相は官房長官として、男性の国家公務員に1カ月以上の育休取得を促す制度の創設を主導した。4月から6月までに子どもが生まれた男性職員の85%が、1カ月以上の育休を取得する見込みという。長時間労働は晩婚化の原因の一つとも指摘されてきた。中小企業を含めて働き方改革のレベルをもう一段上げるには、法整備などで政府の強い後押しが不可欠だ。


◎「少子化は社会のゆがみの結果」?

少子化は社会のゆがみの結果」だと「駒村康平慶応大教授」に語らせ「長時間労働」の是正を求めている。しかし、筆者の山内菜穂子政治部次長はこの政策が有効だと言えるデータを示していない。

北欧諸国は労働時間が日本より少ないが「少子化」傾向は共通して見られる。北欧レベルでもやはり「長時間労働」なのか。それとも北欧には別の「ゆがみ」があるのか。

OECD加盟国で言えば出生率の1位はイスラエルで2位がメキシコ。この2国は2019年の1人当たり年間労働時間で日本を上回る。メキシコはOECDでトップの「長時間労働」だ。こうした事実は「長時間労働」をなくしても「少子化」克服にはつながらないと示唆している。

記事の続きを見ていこう。


【日経の記事】

もう一つは子どもへの視点だ。池本美香日本総合研究所上席主任研究員は「出生数ではなくどんな家庭環境の子どもでも幸せにするという目標が要る」と語る。

中間的な所得の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の割合「子どもの貧困率」は18年時点で13.5%に上る。新型コロナウイルスによる危機は非正規など不安定な雇用で働く人に追い打ちをかけた。小売業など職種によっては親が在宅勤務できず、長期の休校中、子どものケアが十分にできなかった家庭も多い。

全国の児童虐待相談対応件数(速報値)は1~5月、前年比で1割増えた。切れ目なく子どもを見守るには学校や保育園といった現場のほか、厚生労働省や文部科学省、警察庁など省庁間の連携も鍵となる。コロナ禍を機に、子どもの貧困や格差の問題にもっと目を向ける必要があるだろう。

少子化は社会を映す鏡といわれる。余裕をもって子どもと向き合える働き方を目指し、親の経済状況にかかわらず子どもがチャンスをつかみ取れるように支援する――。首相には、安心して新しい家族をつくることができる社会へ政策を着実に実行してほしい。それは結果的に少子化対策となるはずだ


◎「結果的に少子化対策となるはず」?

余裕をもって子どもと向き合える働き方を目指し、親の経済状況にかかわらず子どもがチャンスをつかみ取れるように支援する」ことが重要だとの主張には同意できる。しかし「それは結果的に少子化対策となるはずだ」との見方には賛成できない。山内次長が何ら根拠を示していないからだ。「少子化対策となる」かどうかはエビデンスに基づいて議論すべきだと思えるが…。


※今回取り上げた記事「風見鶏~『幸せ』視点の少子化対策」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200927&ng=DGKKZO64237020V20C20A9EA3000


※記事の評価はD(問題あり)。山内菜穂子次長への評価は暫定C(平均的)から暫定Dへ引き下げる。山内次長に関しては以下の投稿も参照してほしい。

説得力欠く日経 山内菜穂子政治部次長の「風見鶏~少子化対策 失われた30年」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/08/30.html

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