2020年7月14日火曜日

理解に苦しんだ日経 中山淳史氏の「Deep Insight~テスラが変える車のKPI」

日本経済新聞の中山淳史氏(肩書は本社コメンテーター)が書く記事が相変わらず苦しい。14日の朝刊オピニオン面に載った「Deep Insight~テスラが変える車のKPI」という記事では理解不能と思える記述も見られる。中身を見ながら具体的に指摘していく。
大雨で増水した筑後川(福岡県久留米市)
         ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

時価総額が売上高の何倍にまで達しているかを示す「プライス・トゥー・レベニュー」という指標がある。それで見ると、トヨタを含め主要な自動車メーカーの倍率は1倍を割り込む(成長を期待されていない)一方、テスラは10倍超だ。これはフェイスブック(9倍)などと同水準であり、テスラがIT企業と似た期待感で株が買われていることを示す。



◎トヨタは「成長を期待されていない」?

プライス・トゥー・レベニュー」が「1倍を割り込む」企業は「成長を期待されていない」と中山氏は見ているのだろう。根拠は不明だ。

投資家が期待する「成長」とは、基本的には「利益成長」だ。「売上高」と「時価総額」を比べて「成長を期待されていない」とか「期待されている」とか論じて意味があるのか。

続きを見ていこう。今回の記事で最も理解に苦しんだ部分だ。

【日経の記事】

買われすぎとの指摘はあるが、根拠はないと言い切る確かな反論も逆にないプライス・トゥー・レベニューでいえば、あと15~20年で電気自動車は世界の自動車市場(年間約1億台)の約3割を占め、先行者利益のあるテスラは25%のシェアを握る。各種調査のそんな平均値に従えば、同社の販売台数は今の約40万台から800万台近くにまで増える計算だ。



◎何が言いたいのか…

買われすぎとの指摘はあるが、根拠はないと言い切る確かな反論も逆にない」がまず分かりにくい。最初は「買われすぎとの指摘はあるが、(買われすぎとの指摘に)根拠はないと言い切る確かな反論も逆にない」と理解したくなった。

少し分かりやすく言えば「買われすぎとの指摘はあるが、その指摘に根拠なしとは言い切れない」といった趣旨になる。つまり「買われすぎとの指摘」を支持する内容になる。これは文脈的に整合しない。

おそらく「買われすぎとの指摘はあるが、(高水準の株価に理論的な)根拠はないと言い切る確かな反論も逆にない」と伝えたかったのだろう。例えば「買われすぎとの指摘はあるが、テスラの株価をバブルと言い切れる確かな根拠もない」とすれば、格段に分かりやすくなる。ほぼ同じ意味になるはずだ。

プライス・トゥー・レベニューでいえば、あと15~20年で電気自動車は世界の自動車市場(年間約1億台)の約3割を占め、先行者利益のあるテスラは25%のシェアを握る」というくだりは色々と考えたが、結局は何が言いたいのか分からなかった。「プライス・トゥー・レベニューでいえば」が何のために付いているのかが難問だ。

プライス・トゥー・レベニュー」は「トヨタを含め主要な自動車メーカーの倍率は1倍を割り込む一方、テスラは10倍超」となっている。この事実から「あと15~20年で電気自動車は世界の自動車市場(年間約1億台)の約3割を占め、先行者利益のあるテスラは25%のシェアを握る」と予測できるということか。全く理解できない。

自分の読解力不足なのかもしれないが、これをすんなり理解できる読者は当たり前にいるのか。

付け加えると、上記の書き方だと「テスラ」が「25%のシェアを握る」のが「世界の自動車市場」なのか、「電気自動車」市場に限った話なのか判断に迷う。

中山氏に「Deep Insight」を任せるのは、やめた方がいい。やはり結論はここに落ち着く。


※今回取り上げた記事「Deep Insight~テスラが変える車のKPI
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200714&ng=DGKKZO61452240T10C20A7TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。中山淳史氏への評価もDを据え置く。中山氏については以下の投稿も参照してほしい。

日経「企業統治の意志問う」で中山淳史編集委員に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_39.html

日経 中山淳史編集委員は「賃加工」を理解してない?(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_8.html

日経 中山淳史編集委員は「賃加工」を理解してない?(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_87.html

三菱自動車を論じる日経 中山淳史編集委員の限界
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_24.html

「増税再延期を問う」でも問題多い日経 中山淳史編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_4.html

「内向く世界」をほぼ論じない日経 中山淳史編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_27.html

日経 中山淳史編集委員「トランプの米国(4)」に問題あり
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_24.html

ファイザーの研究開発費は「1兆円」? 日経 中山淳史氏に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_16.html

「統治不全」が苦しい日経 中山淳史氏「東芝解体~迷走の果て」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/blog-post.html

シリコンバレーは「市」? 日経 中山淳史氏に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_5.html

欧州の歴史を誤解した日経 中山淳史氏「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/03/deep-insight.html

日経 中山淳史氏は「プラットフォーマー」を誤解?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post.html

ゴーン氏の「悪い噂」を日経 中山淳史氏はまさか放置?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/blog-post_21.html

GAFAへの誤解が見える日経 中山淳史氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/gafa-deep-insight.html

日産のガバナンス「機能不全」に根拠乏しい日経 中山淳史氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post_31.html

「自動車産業のアライアンス」に関する日経 中山淳史氏の誤解
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/blog-post_6.html

「日経自身」への言及があれば…日経 中山淳史氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/deep-insight.html

45歳も「バブル入社組」と誤解した日経 中山淳史氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/45-deep-insight.html

「ルノーとFCA」は「垂直統合型」と間違えた日経 中山淳史氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/fca.html

当たり障りのない結論が残念な日経 中山淳史氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/deep-insight.html

中国依存脱却が解決策? 日経 中山淳史氏「コロナ危機との戦い」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/03/blog-post_26.html

資産は「無形資産含み益」だけが時価総額に影響? 日経 中山淳史氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/06/deep-insight_16.html

やはり苦しい日経 中山淳史氏の「Deep Insight~『時間経済』は商機か受難か」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/06/deep-insight_27.html

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