2020年7月1日水曜日

香港は「中国外」? 日経社説「香港繁栄へ独立した法制度を維持せよ」に注文

1日の日本経済新聞朝刊総合1面に載った「香港繁栄へ独立した法制度を維持せよ」という社説にはいくつかツッコミを入れたくなる部分があった。
有明佐賀空港 空港公園に展示されているYS-11型機
             ※写真と本文は無関係です

まずは最初の段落を見ていこう。

【日経の社説】

香港の自由と繁栄を支えてきた「一国二制度」と「高度の自治」の根幹を揺るがす法制度が突然、出現した。しかも、香港立法府の頭越しに中国・北京で拙速に審議・決定した手法は余りに強権的である。今からでも遅くない。中国は香港の統制強化につながる措置を直ちに考え直すべきだ。


◎「突然」でもないような…

同じ朝刊の1面の記事では「中国が香港への統制を強化する『香港国家安全維持法』は習近平(シー・ジンピン)指導部が導入方針を明らかにしてからわずか1カ月あまりで成立した」と書いている。「いよいよか」とは思うが「突然、出現した」感じはない。

続きを見ていく。

【日経の社説】

香港国家安全維持法は中国内だけで通用してきた共産党政権による国家安全の考え方を香港にも適用する内容である。その司令塔として香港行政長官をトップとする「国家安全維持委員会」を新設し、顧問を中央政府から送る。



◎この書き方だと…

香港国家安全維持法は中国内だけで通用してきた共産党政権による国家安全の考え方を香港にも適用する内容である」と書くと「香港」は「中国内」ではないと取れる。しかし、言うまでもなく「香港」は「中国」の一部だ。

最後にもう1つ。

【日経の社説】

香港返還に向けて1984年に中英両国が署名した共同宣言では、香港の独立した司法制度を約束している。世界中から香港に人や資本が集まるのは独立した法体系という伝統ゆえであり、中国本土も多大な恩恵を受けてきた。国際公約を骨抜きにする新制度は香港の市場機能を弱め、外国人の安全まで脅かす恐れがある


◎どういう根拠で…

国際公約を骨抜きにする新制度は香港の市場機能を弱め、外国人の安全まで脅かす恐れがある」と書いているが、なぜ「外国人の安全まで脅かす恐れがある」のかには触れていない。そこは説明が欲しい。

好ましいかどうかは別にして、「香港国家安全維持法」を用いて抗議行動などを抑え込めば、外国人観光客などにとっては、従来より「安全」に過ごせる可能性もありそうだが…。



※今回取り上げた社説「香港繁栄へ独立した法制度を維持せよ
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200701&ng=DGKKZO60981370Q0A630C2EA1000


※社説の評価はD(問題あり)

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