2020年3月22日日曜日

見出しの「雇用危機防げるか」を論じていない日経「チャートは語る」

22日の日本経済新聞朝刊1面に載った「チャートは語る~雇用危機防げるか 宿泊・運輸・小売り、日米欧で1億人」という記事は期待外れの内容だった。「雇用危機防げるか」との見出しを見て「まだ『危機』ではないとの認識なのか。それに、どういう基準で『雇用危機』かどうかを判断するのだろう?」と疑問が湧いたので、記事を読んでみた。
筑後川沿いの菜の花(福岡県久留米市)
      ※写真と本文は無関係です

まず、本文には「雇用危機」という言葉は出てこない。「雇用危機防げるか」を論じてもいない。「万が一企業の破綻が広がっても、雇用喪失とその痛みを最小限に抑える政策をためらうことなく打ち出す必要がある」というのが記事の結論だ。1面トップなので見出しで盛り上げたのだろうが、中身が伴っていない。

他にもいくつか気になる点があった。記事を見ながら指摘したい。

【日経の記事】

世界で雇用不安が広がっている。新型コロナウイルスの流行で経済活動が停滞。旅行や外食需要が消失し、ホテル・レジャー、運輸、小売りは実質休業に近い状況が広がる。こうした3業種の雇用者数は日米欧の全雇用者の4分の1に相当する1億人に上る。感染拡大が止まらず、今の状況が長期化すれば、雇用や消費など実体経済への打撃は計り知れない。企業の破綻を防ぎ、雇用不安を緩和する政策が急務となっている。



◎なぜ「日米欧」限定?

世界で雇用不安が広がっている」と打ち出したものの、記事では「日米欧」への影響を描いているだけだ。「新型コロナウイルスの流行で経済活動が停滞」しているのは「日米欧」に限った話ではない。フィリピンやマレーシアも国内の移動制限に踏み切ったと報じられている。

そもそも、今回の問題の震源地で経済規模でも世界第2位の中国を除いて「世界」の「雇用不安」を論じるのが解せない。日経にとっては「世界=日米欧」なのかもしれないが…。

次は言葉の使い方について。

【日経の記事】

ホテルや航空会社にはひたひたと信用不安が迫る。ホテル最大手のマリオット・インターナショナルは北米や欧州の客室稼働率が足元で25%を割り込んだ。コマーシャルペーパー(CP)や社債の利回りは上昇が止まらない



◎「上昇が止まらない」のに「高止まり」?

コマーシャルペーパー(CP)や社債の利回りは上昇が止まらない」と書いているが、「(ボーイングなど3社の)CP」と「米国の低格付け社債利回り」に関するグラフでは「信用リスクは高止まりが続く」と説明している。

上昇が止まらない」のならば「高止まり」ではない。「高止まりが続く」のならば「上昇」は止まっているはずだ。

付け加えると、ここでも「北米や欧州」限定が気になった。例えば「香港を拠点にする大手のキャセイパシフィック航空は21日までに、新型コロナウイルスの世界的な蔓延(まんえん)で空の旅行需要が激減しほぼ全ての旅客便を2カ月間欠航するとの方針を示した」とCNNが報じている。「航空会社」に「信用不安が迫る」のは欧米だけではないはずだ。


※今回取り上げた記事「チャートは語る~雇用危機防げるか 宿泊・運輸・小売り、日米欧で1億人
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO5707287021032020SHA000?disablepcview=&s=3


※記事の評価はD(問題あり)。担当記者への評価は以下の通りとする(敬称略)。

後藤達也(暫定D→D)
奥平和行(D据え置き)
佐竹実(暫定D→D)
真鍋和也(暫定D)


※後藤記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「先進国の金利急低下」をきちんと描けていない日経 後藤達也記者
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_87.html


※奥平記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「空飛ぶクルマ」の記事で日経 奥平和行編集委員に問う 
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_15.html

解読困難な日経 奥平和行編集委員「岐路に立つネット覇者」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/04/blog-post_12.html


※佐竹記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「フィンランドを見習え」が苦しい日経 佐竹実記者「Disruption 断絶の先に」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/disruption.html

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