2020年3月18日水曜日

小幡績 慶大准教授の市場理解度に不安を感じる東洋経済オンラインの記事

小幡績 慶応大学大学院准教授は「市場を理解」していると自負しているようだ。16日付の東洋経済オンラインに載った「なぜ米緊急緩和や日銀のETF買いは最悪なのか~FEDも日銀も『愚かなこと』をやってしまった」という記事では「なぜ下がるのか。中央銀行関係者も市場関係者も呆然とし、理由がわからず、頭を抱えた。愚かだ。当然だ。市場を理解しないメディアのニュースキャスターなどは、『新型コロナウイルスの影響がさらに拡大』といったコメントで報じているが、まったく違う」と自信たっぷりに解説していた。
筑後川沿いの菜の花(福岡県久留米市)
       ※写真と本文は無関係です

しかし記事を読むと「この人は市場をきちんと理解していないのでは?」との疑問が湧いてくる。特に以下のくだりが引っかかった。

【東洋経済オンラインの記事】

しかし、今回の最大のミスは「サプライズを演出しようとして失敗したこと」である。

FOMC(米公開市場委員会)は、もともと今週17-18日に予定されていた。そこでは市場関係者全員が利下げを予想していたし、FEDもそのつもりだった。だから、織り込み済みの政策をそのまま打ち出すのでは効果がないから、敢えて、たった48時間だが、前倒しの、予期せぬ日曜日の夜発表することでサプライズを演出することを狙ったのだ。

これが、最悪だ。最悪中の最悪だ。

もし、あなたが暗闇で誰かに襲われないかびくびくして歩いていたときに、後ろからいきなり警官が現れたら、それが警官であろうが、強盗であろうが、あなたはびっくりして大声をあげて逃げ出すだろう

同じことだ。

市場のセンチメントは最悪である。恐怖指数は最大である。そのときに、サプライズが出てくれば、良いニュースか悪いニュースか、中身は関係ない。サプライズ自体がもっとも怖いのだから、ショックが起きる。ショックはセンチメントが最悪なのだから、マイナスの極みに振れる。そういうことだ。

例えば、誕生日を迎えたかなり高齢のひいおじいちゃんに、ドッキリカメラで「サプライズー!」といって驚かせたら、心臓発作で死んでしまうかもしれない。そんなことも分からない医者はいない。だが、金融緩和をする人や、ましてや金融政策と無関係な株の買い支えをする人々が、金融の中枢にいる。

最悪だ。

今度こそ、学んで欲しい。



◎例えが当てはまらないような…

実際の記事では「誰かに教われないがびくびくして」と書いているが、こちらの判断で「誰かに襲われないかびくびくして」に直していることをまず断っておく。

本題に入ろう。

誰かに襲われないかびくびくして歩いていたときに、後ろからいきなり警官が現れたら、それが警官であろうが、強盗であろうが、あなたはびっくりして大声をあげて逃げ出すだろう」と小幡准教授は言う。自分は「大声をあげて逃げ出す」タイプではないと思うが、一般的にはそうだと受け入れてみよう。ただ、今回の「FED」(筆者を尊重して、ここではFRBではなくFEDを用いる)には当てはまらない。

今回の「サプライズ」を発した主体が「FED」なのか、それとも得体の知れない組織だったのか、投資家は当初分からなかったのならば、「後ろからいきなり警官が現れた」という例えが当てはまる。

しかし今回の件では、「FED」が「サプライズ」を演出した主体であることを投資家は発表時に認識している。なので「びっくり」したとしても「大声をあげて逃げ出す」必要はない。

日曜日の夜発表」ならば、この材料をどう評価すべきか考える時間も与えられている。なのに「良いニュースか悪いニュースか、中身は関係ない。サプライズ自体がもっとも怖いのだから、ショックが起きる」となるのが不思議だ。

誕生日を迎えたかなり高齢のひいおじいちゃんに、ドッキリカメラで『サプライズー!』といって驚かせたら、心臓発作で死んでしまうかもしれない」という例えも苦しい。「心臓発作で死んでしまう」可能性はゼロではないが、例えば朝起きて「ひいおじいちゃん」がリビングに行くと孫たちがこっそり全員集合していて「サプライズー!」と声を合わせたとしても、ほとんどの場合は健康面に問題ないだろう。

特殊なケースを除けば、医師も「そんなサプライズは絶対にやめてください」とは言わない気がする。

とは言え、取りあえず一般的にはそういうものだと受け入れてみよう。

この例えがはまるとしたら「サプライズ」によって投資家(あるいは市場)が「死んでしまう」必要がある。しかし、今回の「サプライズ」に投資家が売りで応じているのならば投資家に「死んで」いる感じはない。しっかり「サプライズ」を受け止めて行動している。市場も機能している。

良いニュースか悪いニュースか、中身は関係ない。サプライズ自体がもっとも怖いのだから、ショックが起きる。ショックはセンチメントが最悪なのだから、マイナスの極みに振れる」との見方にも同意できない。

例えば、WHOが緊急会見をして「簡単かつ確実にウイルス感染を防ぐ方法が分かった」と発表したら明らかに「サプライズ」だが、これに株式市場は「マイナスの極みに振れる」形で反応するだろうか。

市場を理解」している小幡准教授の見解が正しければ、これまた株価暴落だ。本当に「理解」しているのならばだが…。



なお、先に触れた記事中のミスについては以下の内容で問い合わせを送っている。

【東洋経済新報社への問い合わせ】

慶応大学大学院准教授 小幡績様  東洋経済オンライン 担当者様

なぜ米緊急緩和や日銀のETF買いは最悪なのか~FEDも日銀も『愚かなこと』をやってしまった」という記事についてお尋ねします。記事には「もし、あなたが暗闇で誰かに教われないがびくびくして歩いていたときに、後ろからいきなり警官が現れたら、それが警官であろうが、強盗であろうが、あなたはびっくりして大声をあげて逃げ出すだろう」との記述があります。

誰かに『教』われない『が』」となっているのは「誰かに『襲』われない『か』」の誤りではありませんか。回答をお願いします。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

東洋経済では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。


◇   ◇   ◇


※今回取り上げた記事「なぜ米緊急緩和や日銀のETF買いは最悪なのか~FEDも日銀も『愚かなこと』をやってしまった
https://toyokeizai.net/articles/-/337719


※記事の評価はD(問題あり)。小幡績 慶大准教授への評価も暫定でDとする。

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