2020年3月27日金曜日

梶原誠氏による最終回も問題あり 日経1面連載「コロナ危機との戦い」

日本経済新聞の朝刊1面で連載した「コロナ危機との戦い」が27日で終わった。社内で高く評価されている書き手に任せたのだろうが、完成度は総じて低い。梶原誠氏(肩書は本社コメンテーター)が書いた「(5)『島国化』は繁栄生まぬ」という記事も例外ではない。
菜の花(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です

「何があってもとにかくグローバル化は大事」という毒にも薬にもならない訴えは良しとするとしても、もう少ししっかりした内容に仕上げてほしい。問題点を具体的に指摘してみる。


【日経の記事】

起点は2016年にある。英国が欧州連合からの離脱を決めた「ブレグジット」と、米国第一主義を掲げるトランプ氏が大統領選を制した年だ

◎何と何?

英国が欧州連合からの離脱を決めた『ブレグジット』と、米国第一主義を掲げるトランプ氏が大統領選を制した年だ」という文は、何と何を「」で結んでいるのかよく分からない。

ブレグジット」と「大統領選」だと考えると「ブレグジットを制した年」になってしまう。「ブレグジット」と「大統領選を制した年」でもしっくり来ない。この文では「16年は」という主語を省略しているので「16年は『ブレグジット』と『大統領選を制した年』だ」となる。やはり苦しい。

改善例を示してみる。

【改善例】

起点は2016年にある。英国が欧州連合からの離脱「ブレグジット」を決め、米国第一主義を掲げるトランプ氏が大統領選を制した年だ。


記事の問題点は他にもある。

【日経の記事】

覇権主義と結びついたグローバル化は反発を受けるだけだ。中国が「ワン・チャイナ」を押しつけたからこそ、香港人は大規模デモで逆襲した。


◎「グローバル化」と関係ある?

香港に対して「中国が『ワン・チャイナ』を押しつけた」として、それは「覇権主義と結びついたグローバル化」の一例なのか。基本的に中国の国内問題だ。普通は1国1制度であり、政治的な自由度に差がある地域を抱えている中国はかなり異例だ。それを「ワン・チャイナ」にするのが好ましいかどうかは別として「覇権主義と結びついたグローバル化」と結び付けるのは無理がある。

最後にもう1つ。

【日経の記事】

1929年10月24日の米株価大暴落「暗黒の木曜日」は、世界恐慌を招いた。保護主義が経済のブロック化を経て第2次世界大戦につながった。収まらない米中の緊張や、原油産出量の調整に背を向けたサウジアラビアやロシアの姿勢には、当時のきな臭さがある



◎逆では?

保護主義が経済のブロック化を経て第2次世界大戦につながった」歴史と「原油産出量の調整に背を向けたサウジアラビアやロシアの姿勢」を重ねて「当時のきな臭さがある」と梶原氏は言う。個人的には逆だと感じる。

OPECとロシアが協力して価格維持策を取る方が「ブロック化」に近い。カルテルを形成する動きとは逆に「原油産出量の調整に背を向けたサウジアラビアやロシア」は自由競争に近付いているように見える。自由競争を支持する立場から言えば好ましい展開だ。梶原氏は違うのだろうか。


※今回取り上げた記事「コロナ危機との戦い(5)『島国化』は繁栄生まぬ
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200327&ng=DGKKZO57276300W0A320C2MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。梶原誠氏への評価はE(大いに問題あり)を据え置く。梶原氏については以下の投稿も参照してほしい。

日経 梶原誠編集委員に感じる限界
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_14.html

読む方も辛い 日経 梶原誠編集委員の「一目均衡」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post.html

日経 梶原誠編集委員の「一目均衡」に見えるご都合主義
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_17.html

ネタに困って自己複製に走る日経 梶原誠編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_18.html

似た中身で3回?日経 梶原誠編集委員に残る流用疑惑
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_19.html

勝者なのに「善戦」? 日経 梶原誠編集委員「内向く世界」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_26.html

国防費は「歳入」の一部? 日経 梶原誠編集委員の誤り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_23.html

「時価総額のGDP比」巡る日経 梶原誠氏の勘違い
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/gdp.html

日経 梶原誠氏「グローバル・ファーストへ」の問題点
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/blog-post_64.html

「米国は中国を弱小国と見ていた」と日経 梶原誠氏は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_67.html

日経 梶原誠氏「ロス米商務長官の今と昔」に感じる無意味
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/04/blog-post.html

ツッコミどころ多い日経 梶原誠氏の「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/deep-insight.html

低い韓国債利回りを日経 梶原誠氏は「謎」と言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_8.html

「地域独占」の銀行がある? 日経 梶原誠氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_18.html

日経 梶原誠氏「日本はジャンク債ゼロ」と訴える意味ある?
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_25.html

「バブル崩壊後の最高値27年ぶり更新」と誤った日経 梶原誠氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/27.html

地銀は「無理な投資」でまだ失敗してない? 日経 梶原誠氏の誤解
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/blog-post_56.html

「日産・ルノーの少数株主が納得」? 日経 梶原誠氏の奇妙な解説
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_13.html

「霞が関とのしがらみ」は東京限定? 日経 梶原誠氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/deep-insight.html

「儒教資本主義のワナ」が強引すぎる日経 梶原誠氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/deep-insight_19.html

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