2017年10月5日木曜日

マネックスのロボアドを「業界最安」と誤解させる日経の罪

取材先に上手く誘導されているのか、書いている方も確信犯なのか。5日の日本経済新聞朝刊金融経済面に載った「マネックス、ブラックロックと『ロボアド』」という記事は、読者に誤解を与える不正確な内容になっていた。記事の全文と日経への問い合わせは以下の通り。
豪雨被害を受けた福岡県朝倉市 ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

マネックス証券はブラックロック・ジャパンと組み、新しい「ロボット・アドバイザー(ロボアド)」のサービスを開始する。ブラックロックの上場投資信託(ETF)である「iシェアーズ」シリーズの7本を投資対象とし、ブラックロックやマネックスの市場見通しをもとに適切な資産配分とその見直しを指南する。10月20日から提供を始める見通し。

ロボアドはコンピューターのプログラムが個人投資家に資産運用を指南する。今回のサービスは、複数の質問に答えればその後は全自動で資産運用を行う従来のロボアドに比べ、個人投資家がアレンジを加えられるようになるのが特徴だ。手数料は運用残高に対して年率0.3%と、ロボアドでは業界で最も安い水準となる

ETFの買い付けや資産見直しの実行も自身で行う。今後の資産形成に生かせるよう、自身で売買などを行いたい個人のニーズを取り込む。


【日経への問い合わせ】

朝刊金融経済面の「マネックス、ブラックロックと『ロボアド』」という記事についてお尋ねします。 記事では、マネックスのロボアドに関して「手数料は運用残高に対して年率0.3%と、ロボアドでは業界で最も安い水準となる」と説明しています。しかし、実際には無料でロボアドを利用できるサービスが多数あります。松井証券の「投信工房」や、カブドットコム証券の「FUND ME」などです。「ロボアドでは業界で最も安い水準」との記述は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

ロボアドは「投資一任型」と「助言型」に大別できます。そして「助言型」では手数料を取らないのが一般的です。マネックスのロボアドは個人投資家が「ETFの買い付けや資産見直しの実行も自身で行う」ようなので助言型に分類できます。それで「年率0.3%」の手数料を取るのであれば、「助言型のロボアドとしては手数料が高い」と評価する方が自然だと思えます。

今回の記事は情報に誤りがある上に、高コストのサービスを低コストだと紹介しているとも思えますが、いかがでしょうか。

御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。クオリティージャーナリズムを標榜する新聞社として、掲げた旗に恥じない行動を心掛けてください。



◎このビジネス成り立つ?

ロボアドが7本のETFの組み合わせを選んでくれるだけなのに、マネックスでは「年率0.3%」の手数料を取るらしい。これはビジネスとして成り立つのか。リバランスなどもロボアドがやってくれるのならば、毎年「0.3%」を払う人もいるかもしれない(これも手数料は高いし、それに見合う価値はないと思うが…)。
豪雨被害を受けた福岡県東峰村 ※写真と本文は無関係です

しかし、マネックスのサービスは「ETFの買い付けや資産見直しの実行も自身で行う」ものだ。2年目以降は「見直しを指南」してくれるのだろうが、自分でリバランスをきちんとやろうと考える人が「年率0.3%」の手数料を黙って払い続けるだろうか。

記事を読む限り、マネックスのロボアドは投資家にとって魅力がなさすぎる。「投資対象はわずか7本のETF」「やってくれるのは助言のみ」「それで毎年0.3%の手数料を取る」--。このサービスに近付くべき理由が見当たらない。

なのに「従来のロボアドに比べ、個人投資家がアレンジを加えられるようになるのが特徴だ。手数料は運用残高に対して年率0.3%と、ロボアドでは業界で最も安い水準となる」などと前向きに紹介する気が知れない。


※今回取り上げた記事「マネックス、ブラックロックと『ロボアド』
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171005&ng=DGKKZO21885070U7A001C1EE9000

※記事の評価はE(大いに問題あり)。

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