2017年10月26日木曜日

上昇局面での利食いは「逆張り」? 日経 嶋田有記者に疑問

26日の日本経済新聞朝刊マーケット総合1面に載った「スクランブル~すくむ個人、株高誘発 逆張り不発、マインド変更も」 という記事では、「順張り」「逆張り」の使い方が引っかかった。上昇局面での利食い売りは「逆張り」と言えるのか。個人的には違うと思う。
ヒガンバナ(福岡県久留米市)
      ※写真と本文は無関係です

まずは記事の最初の段落を見てみよう。

【日経の記事】

10月2日から続いた日経平均株価の連続上昇記録は「16」で終了。だが市場では慨嘆よりもスピード調整を歓迎する声が多い。例えば、海外勢主導の急速な上げに乗り遅れた個人投資家。「逆張り」の形容詞で語られる個人は、伝統的に上げ相場で売りを増やしがち。特に売買代金の多くを占める信用取引では、売りを仕掛けて損失を被ったデイトレーダーも多い。個人も従来型の「上がれば売り」のマインドセット変更を迫られている。



◎「マインドセット」は要る?

まず「マインドセット」という横文字が余計だ。「個人も従来型の『上がれば売り』のという考え方の変更を迫られている」などで事足りる。

次が問題のくだりだ。

 【日経の記事】

デイトレーダーは一般に上昇相場では逆張りスタイルをとる。実際、今年5月の株高局面では信用買いの手じまい売りが膨らみ、株価の上値を抑えた。だが、今回の上昇期間中は違う。「買い残高が減らない」(カブドットコム証券の斎藤正勝社長)という。



◎これは「逆張り」?

筆者の嶋田有記者は「今年5月の株高局面では信用買いの手じまい売りが膨らみ、株価の上値を抑えた」ことを「上昇相場」での「逆張りスタイル」と捉えている。だが、これは「順張りスタイル」であってもおかしくない。「投資の教科書」というサイトでは「順張り投資は上昇していく株の途中を買って、さらに値が上がったところで売って利益を出す投資手法です」と解説している。
キリンビール福岡工場(朝倉市)のコスモス
           ※写真と本文は無関係です

信用買い」の場合、「順張り」か「逆張り」を決めるのは、買いを入れた時の相場動向だ。上昇局面であれば「順張り」、下落局面であれば「逆張り」となる。「手じまい売り」を入れる時の相場動向は関係ない。だから「株高局面」で「信用買いの手じまい売り」が膨らんだとしても、「デイトレーダーは一般に上昇相場では逆張りスタイルをとる」根拠とはならない。

この記事には他にも気になる点が多かった。順に指摘していく。

【日経の記事】

東京証券取引所による、20日申し込み時点の買い残高(東京・名古屋市場の制度・一般信用の合計)は約2兆5700億円。9月末(約2兆5900億円)からほぼ横ばい。益の出た取引を手じまい、次の銘柄を仕込む回転が滞っている様子がうかがえる


◎「回転が滞っている様子がうかがえる」?

買い残高」が「ほぼ横ばい」だと「益の出た取引を手じまい、次の銘柄を仕込む回転が滞っている様子がうかがえる」だろうか。大量の「手じまい」と大量の新規買いがほぼ同水準だったために残高が「ほぼ横ばい」という可能性もある。記事の情報だけでは「回転が滞っている」かどうか判断できない。
天ケ瀬温泉(大分県日田市)※写真と本文は無関係です

記事の続きをさらに見ていく。

【日経の記事】

一方、信用売りも増えている。松井証券の信用売り残は24日、アベノミクス相場で初めて600億円を超えた。特に目立つのが日経平均の2倍の値動きをする上場投資信託(ETF)、「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型ETF」を使った取引。果敢に信用売りで挑んだ投資家が「踏み上げられ買い戻しを迫られている」(大手ネット証券)。同ETFの逆日歩は24日に100円超に跳ね上がった。「細る利益確定売り」と「売り方の買い戻し」が株を押し上げる。


信用売りも増えている」と言われると…

信用売りも増えている」と書いてあると「信用買いだけでなく信用売りも増えている」と理解したくなる。しかし、記事では「買い残高」は「ほぼ横ばい」と説明していた。

信用売りも増えている」と書いた直後に、「信用売りで挑んだ投資家」が「買い戻しを迫られている」と説明しているのも引っかかる。「買い戻し」は「信用売り」の残高が減る要因なので、「信用売りも増えている」話とうまく繋がっていない。



※今回取り上げた記事「スクランブル~すくむ個人、株高誘発 逆張り不発、マインド変更も
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171026&ng=DGKKZO22710150V21C17A0EN1000


※記事の評価はD(問題あり)。嶋田有記者への評価も暫定でDとする。

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