2019年11月30日土曜日

井上智洋 駒沢大准教授による日経ビジネス「気鋭の経済論点」の問題点

日経ビジネス11月18日号の「気鋭の経済論点~世界の天才集める中国 国力を決める『頭脳資本主義』」という記事はツッコミどころの多い内容だった。筆者である駒沢大学経済学部准教授の井上智洋氏に問題があるのだとは思うが、構成を担当した中山玲子記者の責任も重い。
のこのしまアイランドパーク(福岡市)
       ※写真と本文は無関係です

問い合わせから11日が経ってようやく回答が届いた。質問も含む形となっている回答の内容を紹介したい。


<日経ビジネス編集部の回答>

いつも日経ビジネスをご愛読いただき、誠にありがとうございます。11月18日号の「気鋭の経済論点~世界の天才集める中国 国力決める『頭脳資本主義』」について、お寄せ頂いたご質問につき、以下、回答させていただきます。

(1)「ユニコーン」の定義について

【ご質問】

記事では中国企業に関して「時価総額が1000億円以上の未上場企業であるユニコーンが次々と生まれた」と記しています。「ユニコーン」と見なす基準は一般的には「時価総額が10億円ドル以上」です。御誌の9月16日号にも「未上場ながら企業価値が10億ドルを上回る『ユニコーン』」との記述が見られます。「時価総額が1000億円」では今の為替相場で計算すると「10億ドル」に届きません。

「ユニコーン」を「時価総額が1000億円以上の未上場企業」とするのは誤りではありませんか。あるいは9月16日号の説明が間違っているのでしょうか。

【ご回答します】

読者が理解しやすいように、日本円で表記いたしました。また、金額の数字についても、
読者の理解しやすさなどを総合的に判断し、「1000億円」と表現いたしました。
頂戴したご指摘は今後、参考にさせていただきます。ありがとうございます。


(2)1860~1914年の「覇権国家」について

【ご質問】

記事に付けた表によると「1860~1914年」の「第2次産業革命」で言えば「そのときの覇権国家」は「米国(ドイツ)」です。常識的には、第1次世界大戦を契機として英国から米国への「覇権」交代が起きたのではありませんか。世界システム論で知られる米国の社会学者イマニュエル・ウォーラーステイン氏などもこの立場です。

 「そのときの覇権国家」に明確な基準はないとは思いますが、一般的な認識とかけ離れていませんか。「1860~1914年」の「覇権国家」を「米国(ドイツ)」と理解して大丈夫ですか。記事のような説明が幅広く受け入れられているのならば、自分の歴史認識の方を改めなくてはと思っています。

【ご回答します】

表の「1860~1914年」というのは、覇権国家の時期ではなく、第2次産業革命の時期を表しています。また、「米国(ドイツ)」というのは、第2次産業革命をきっかけに覇権を握った国という意味になります。なお、(ドイツ)とありますのは、覇権を握ろうとしてドイツが失敗したということを表しております。表には「時期」と表示しましたが、もう少し詳しく書いた方が理解しやすかったかもしれません。ご指摘ありがとうございます。


(3)「デフレマインドが浸透」した時期について

 【ご質問】

記事には「インターネット元年といわれた1995年ごろ、日本はバブルが崩壊した後で、デフレマインドが浸透し、企業は守りに入ってしまったのだ」との記述があります。これを信じれば「1995年ごろ」には既に「デフレマインドが浸透」していたはずです。

日本で「持続的な物価下落という意味でのデフレ状況」にあると月例経済報告に記載されたのは2001年です。「1995年ごろ」にも「デフレ」的な傾向はあったでしょうが、日本全体に「デフレマインドが浸透」するのは「デフレ」に陥ってしばらく経ってからのはずです。

「デフレマインドが浸透」した時期を明確に判断するのは難しいでしょうが、「1995年ごろ」に「デフレマインドが浸透」していたと見なすのは無理がありませんか。

【ご回答します】

一般的にはデフレ開始年は1998年とされていますが、ディスインフレ(低いインフレ率の状態)も広い意味ではデフレ的状態であると捉えました。とはいえ、「インターネット元年といわれた1995年ごろ」は、「インターネット元年といわれた1995年以降」とした方が、誤解がなかったかもしれません。ご指摘、誠にありがとうございます。


(4)「スマイルカーブ理論」について

【ご質問】

2013年1月21日付の「日経ものづくり」の記事によると「スマイルカーブ理論」とは
「バリューチェーンの上流工程(商品企画や部品製造)と下流工程(流通・サービス・保守)の付加価値が高く、中間工程(組立・製造工程)の付加価値は低いという考え方を示している」はずです。他の用語解説を見ても、似たような内容になっています。

しかし、今回の記事は違います。「上流、下流に位置する研究開発や設計デザイン、マーケティングは付加価値が高いのに対し、中流にある組み立てや部品、小売りは低くなるというものだ」となっています。

日経ものづくりを信じれば「小売り=流通」は「付加価値が高く」なりますが、御誌の記事では逆です。御誌では「部品」も「付加価値」が低いとの位置づけです。一方、日経ものづくりでは「部品製造」を「付加価値が高く」なる「上流工程」としています。

常識的に考えると「流通・サービス・保守」を「下流工程」とする日経ものづくりの説明の方が正しそうです。今回の「スマイルカーブ理論」に関する説明は誤りではありませんか。いずれの記事にも問題がないのならば、2つの記事の食い違いをどう理解すればよいのか教えてください。

【ご回答します】

スマイルカーブでの各ビジネスの配置について、「組み立て」や「部品」、「研究開発」を、掲載させていただいたグラフのように位置付けたため、記事中にあるような表現になりました。

いただいたご指摘は、今後の参考にさせていただきます。ありがとうございます。


 (5)「頭脳資本主義」について

【ご質問】

「AIの普及によって、労働者の頭数ではなく労働者の知的レベルが、一国のGDP(国内総生産)や企業の売り上げ・利益を決定づける『頭脳資本主義』の時代が到来しつつある」との記述から判断すると、これまでは「労働者の頭数」で「一国のGDP(国内総生産)や企業の売り上げ・利益」が決まっていたと井上様は考えているのでしょう。

これは解せません。「GDP」で考えてみましょう。「労働者の頭数」で決まるとするならば、米国と中国ではどちらの「GDP」が多くなるでしょうか。もちろん中国です。そうなっていますか。

日本とインドではどうでしょう。「労働者の頭数」ではインドが上回りますが「GDP」
でも日本を凌駕していますか。「労働者の知的レベル」なども含めて「GDP」が決まっていく時代を「『頭脳資本主義』の時代」と呼ぶならば、ずっと前からそうだったのではありませんか。

【ご回答します】

今後は、人口が少ない国でも多い国のGDPを上回るということが、顕著な形で現れるというのが、「頭脳資本主義」の持つ意味になります。これまでも、労働者の知的レベルがGDPなどに影響する傾向はありましたが、今後はさらにこうした傾向が強まってくるといったことを記事では説明をしております。


いつも弊誌をお読みいただき、感謝申し上げます。頂戴したご質問は、今後の参考にさせていただきます。引き続き、日経ビジネスをどうぞよろしくお願い申し上げます。


◇   ◇   ◇

回答内容そのものはかなり苦しい。「『米国(ドイツ)』というのは、第2次産業革命をきっかけに覇権を握った国という意味になります」と言うが、表のタイトルには「そのときの覇権国家」と明記している。また「スマイルカーブ理論」については質問に答えているとは言い難い。

しかし、それはそれでいい。「外部ライターの記事もしっかりチェックしなければ…」と中山記者が教訓を得てくれることを願う。


※今回取り上げた記事「気鋭の経済論点~世界の天才集める中国 国力を決める『頭脳資本主義』
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00123/00032/


※記事の評価はD(問題あり)。井上智洋・駒沢大学経済学部准教授への評価は見送る。中山玲子記者への評価はDで確定とする。中山記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「パナソニックの祖業=自転車」が苦しい日経ビジネス中山玲子記者
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_25.html

2019年11月29日金曜日

「ドイツでは可能な理由」を分析しない日経 武智幸徳編集委員の不思議

「何のために最初にフランクフルトの話を持ってきたのか?」--。日本経済新聞の武智幸徳編集委員が29日の朝刊スポーツ面に書いた「アナザービュー~『緩衝地帯』は必要ですか」という記事を読んで、そう思わずにはいられなかった。
姪浜渡船場(福岡市)※写真と本文は無関係

記事の全文を見た上で、なぜそう感じたのか説明したい。


【日経の記事】

11月23日、ドイツでブンデスリーガの試合を見た。ホームのフランクフルトは長谷部誠がフル出場し、鎌田大地も後半から登場。5万700人の観客で大盛況だった。

フランクフルトのスタジアムは2006年ワールドカップ(W杯)で5試合に使われ、入場者は常に4万8000人と発表された。W杯はすべてのチケットが指定席として売られ、世界中のVIP、取材・放送関係者の席も確保しなければならない。当時はそれがファンに用意できる最大限だったのだろう。

フランクフルトの試合では自軍ゴール裏の椅子を取り外し、立ち見にできる(欧州連盟管轄の試合は除く)。実際、そこはクラブカラーの黒で塗りつぶされていた。

残り2節となった今季のJリーグ。12月7日の最終節、横浜MとFC東京の直接対決に優勝決定が持ち越されたら、日産スタジアムはどんなことになるのか。今から楽しみでしかたない。

同スタジアムの最多入場者記録は02年W杯日韓大会決勝の6万9029人(ブラジル対ドイツ)だった。それを11月2日のラグビーW杯決勝が7万103人(イングランド対南アフリカ)で更新したばかり。どちらにしても代表戦が1位、2位を占めている。それをJリーグが塗り替えたら、これは結構愉快だろう。

代表は誰にとっても「マイチーム」かもしれない。それとは別に「マイクラブ」を持つ幸せを創設から26年間、ずっとJリーグは唱えてきた。記録更新はそれを象徴する話に思えるから――。

なんて、独りで力が入っていたが、どうやら記録更新は難しいらしい。座席の数だけ売れない事情がもろもろあるようなのだ。サポーター同士の国境紛争を避けるため、アウェー側に設ける空席の緩衝地帯もその一つ。席数でざっと1500くらいになるというから大きなマイナス材料だ。

W杯は高額なチケットにカネを払えるいちげんさんが増え、民度の高まり? とともに呉越同舟にしても騒動は起きにくくなった。が、クラブ同士の戦いは依然として可燃性は高く、衝突を避けるために緩衝地帯は必要と言われたら従うしかない。見たいサポーターはいるのに、サポーターの安全のために売れない席がある。空席は何の代償なのか、釈然としない気持ちを抱えながら


◎せっかくドイツに行ったのならば…

フランクフルトのスタジアムは2006年ワールドカップ(W杯)で5試合に使われ、入場者は常に4万8000人」。そして「11月23日」の「ブンデスリーガの試合」では「5万700人」と「W杯」を上回っている。

一方、「日産スタジアム」はサッカーでは「02年W杯日韓大会決勝の6万9029人」が最多で、「Jリーグ」の試合がどんなに人気でも「記録更新は難しいらしい」。それは「アウェー側に設ける空席の緩衝地帯」が理由の1つだと武智編集委員は教えてくれる。

ここまではいい。しかし「なぜドイツではできて日本では無理なのか」を武智編集委員は分析してくれない。

クラブ同士の戦い」は「可燃性」が高いと言うが、それは「ブンデスリーガ」も同じではないか。イメージ的には「ブンデスリーガ」の方が危なそうな気がする。

実際には「ブンデスリーガ」の「可燃性」が低いのか。「可燃性」が高くても気にせず観客を詰め込んでいるのか。「緩衝地帯」以外の対策で「可燃性」の高さに対応しているのか。

あるいは「緩衝地帯」を設けながらも何らかの方法で観客席を増やしているのか。「自軍ゴール裏の椅子を取り外し、立ち見にできる」ことが影響しているのかもしれないが、どの程度の効果があるのかは書いていない。「Jリーグ」では「立ち見」への対応がどうなのかも触れていない。

結局、「ブンデスリーガ」ではできて「Jリーグ」ではできない理由は分からないままだ。その分析をサボって何のための編集委員なのか。「空席は何の代償なのか、釈然としない気持ちを抱え」ているのならば、なおさらしっかり考えてほしかった。



※今回取り上げた記事「アナザービュー~『緩衝地帯』は必要ですか
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191129&ng=DGKKZO52751540Y9A121C1UU8000


※記事の評価はD(問題あり)。武智幸徳編集委員への評価もDを維持する。武智編集委員については以下の投稿も参照してほしい。

日経 武智幸徳編集委員はスポーツが分かってない?(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_21.html

日経 武智幸徳編集委員はスポーツが分かってない?(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_43.html

日経 武智幸徳編集委員は日米のプレーオフを理解してない?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_76.html

「骨太の育成策」を求める日経 武智幸徳編集委員の策は?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/02/blog-post_87.html

「絶望には早過ぎる」は誰を想定? 日経 武智幸徳編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_4.html

日経 武智幸徳編集委員はサッカーと他競技の違いに驚くが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/blog-post_2.html

日経 武智幸徳編集委員は「フィジカルトレーニング」を誤解?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_14.html

W杯最終予選の解説記事で日経 武智幸徳編集委員に注文
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post.html

「シュート選ぶな 反則もらえ」と日経 武智幸徳編集委員は言うが…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/12/blog-post_30.html

2019年11月28日木曜日

「イスラム教の元王朝」と言える?日経 秋田浩之氏「Deep Insight」

本社コメンテーターの肩書で記事を書いている日本経済新聞の秋田浩之氏によると「13世紀にはイスラム教の元王朝が生まれた」らしい。しかし「元王朝」が「イスラム教」の「王朝」だったイメージはない。記事の説明で正しいのか以下の内容で問い合わせてみた。
のこのしまアイランドパークのコスモス
       ※写真と本文は無関係です

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 秋田浩之様

28日の朝刊オピニオン面に載った「Deep Insight~中国接近、教皇への期待」という記事についてお尋ねします。記事には「7世紀に始まる中国への(キリスト教の)伝道の歴史で、危険が伴わなかったことなどない。13世紀にはイスラム教の元王朝、1949年には共産党政権が生まれた」との記述があります。

問題としたいのは「イスラム教の元王朝」という説明です。一般的に「元王朝」はチベット仏教との関係が深いとされています。ニコニコ大百科では「元王朝」について「フビライがチベット仏教の僧パスパを重く用いて以来、代々の皇帝はチベット仏教や中国仏教(禅宗)のため、莫大な国費を使っていた」と記しています。

パスパ」は「チベット仏教(ラマ教)サキャ派の祖師。初めて中国、元(げん)の帝師となった」(日本大百科全書)人物です。「元王朝」は「イスラム教」など他の宗教に寛容だったようですが、「イスラム教の元王朝」と言えるほど「イスラム教」が力を持っていたとは思えません。

13世紀にはイスラム教の元王朝が生まれた」との説明は誤りではありませんか。一般的に知られている歴史的事実と乖離しています。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界最強のビジネスメディア」であろうとする新聞社の一員として責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇


追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「Deep Insight~中国接近、教皇への期待
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191128&ng=DGKKZO52675730X21C19A1TCT000


※記事の評価はD(問題あり)。秋田浩之氏への評価はE(大いに問題あり)を維持する。秋田氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経 秋田浩之編集委員 「違憲ではない」の苦しい説明
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post_20.html

「トランプ氏に物申せるのは安倍氏だけ」? 日経 秋田浩之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/02/blog-post_77.html

「国粋の枢軸」に問題多し 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/deep-insight.html

「政治家の資質」の分析が雑すぎる日経 秋田浩之氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_11.html

話の繋がりに難あり 日経 秋田浩之氏「北朝鮮 封じ込めの盲点」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/blog-post_5.html

ネタに困って書いた? 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/deep-insight.html

中印関係の説明に難あり 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/11/deep-insight.html

「万里の長城」は中国拡大主義の象徴? 日経 秋田浩之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/02/blog-post_54.html

「誰も切望せぬ北朝鮮消滅」に根拠が乏しい日経 秋田浩之氏
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_23.html

日経 秋田浩之氏「中ロの枢軸に急所あり」に問題あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_30.html

偵察衛星あっても米軍は「目隠し同然」と誤解した日経 秋田浩之氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/blog-post_0.html

問題山積の日経 秋田浩之氏「Deep Insight~米豪分断に動く中国」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/deep-insight.html

「対症療法」の意味を理解してない? 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/deep-insight.html

2019年11月27日水曜日

「親子上場」だと「資本効率が下がる」? 日経 佐藤亜美記者の誤解

日本経済新聞の佐藤亜美記者は「親子上場」への誤解があるようだ。27日の朝刊マーケット総合1面に載った「スクランブル~親子上場解消に期待感 日立再編、資本効率向上に関心」という記事を読むと、それがよく分かる。
能古渡船場(福岡市)※写真と本文は無関係

最初の段落から誤解が見える。

【日経の記事】

日本株市場の特有の課題である「親子上場」への関心が高まっている。日立製作所や三菱ケミカルホールディングスなど大手企業が、中核子会社の売却や完全子会社化に動いたためだ。企業の多くは2019年度の下半期以降に業績の「V字回復」を目指しているが、世界景気には不透明感が募る。おのずと資本効率を高める取り組みが注目を集めやすい。


◎「日本株市場の特有の課題」?

親子上場」は「日本株市場の特有の課題」なのか。一橋大学特任教授の藤田勉氏によると「日本ほど活発でないが、親子上場は大陸欧州や南米を中心に海外でも広く存在する」(週刊エコノミスト2019年11月5日号)。

ビール世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)のアジア子会社は30日、香港取引所に株式上場した」と日経も9月30日付で報じている。こうした点を考慮すると「日本株市場の特有の課題」と言い切るのは無理がある。

今回の記事で最も引っかかったのが以下のくだりだ。

【日経の記事】

少数株主の意見が軽んじられるとみられがちで、親会社の株主にとっては利益が外部に流出して資本効率が下がる親子上場は、投資家の評価が低い。


◎必ず「資本効率が下がる」?

親会社の株主にとっては利益が外部に流出して資本効率が下がる親子上場」と佐藤記者は言い切っている。本当に「資本効率が下がる」だろうか。

毎年10億円の利益を生むA社の全株式を1000億円でB社が買い取ったとしよう。投資額に対する年間リターンは1%。これで「資本効率」を測ると仮定する(他の測り方ももちろんある)。

買収後に「親子上場」に踏み切って半分の株式を市場に出した場合どうなるか(単純化のため税金などは考慮しない。株式の価値も不変とする)。B社に帰属する利益は半分の5億円になるので年間リターンが0.5%になり「資本効率が下がる」と佐藤記者は見ているのではないか。

しかしA社の上場によってB社には500億円の資金が入ってくる。これを高いリターンが見込める分野に投資すれば「資本効率」は逆に良くなる。例えば500億円で新たにC社を設立して、年間10億円の利益を生み出すようになったらどうか。

1000億円の投資額に対して年間15億円の利益が得られるのでリターンは年1.5%だ。「親子上場」によって「親会社の株主にとって」も歓迎すべき結果となった。

もちろんC社の事業が失敗に終わる可能性もある。なので「資本効率が下がる」こともある。とは言え、「親子上場」だから「利益が外部に流出して資本効率が下がる」と単純に判断するのは間違っている。

付け加えると、「親子上場」が抱える問題点は親会社の「資本効率」を高める方向に働くのではないか。「親子上場」の場合、上場子会社の「少数株主の意見が軽んじられる」リスクは確かに高い。裏返せば、支配株主である親会社に有利に働きやすいとも言える。

先述した例で考えてみよう。親会社のB社がA社との取引条件などを自社有利に変更してA社の利益をゼロにする。そうなると、A社の10億円の利益は実質的にB社に移し替えられる。さらに自由に使える500億円の資金が手に入る。「親子上場」を悪用すれば、親会社の「資本効率」を高めて「親会社の株主に」有利に持っていける。

それでも「親子上場」を「親会社の株主にとっては利益が外部に流出して資本効率が下がる」と断定すべきだろうか。


※今回取り上げた記事「スクランブル~親子上場解消に期待感 日立再編、資本効率向上に関心
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191127&ng=DGKKZO52630250W9A121C1EN1000


※記事の評価はD(問題あり)。佐藤亜美記者への評価も暫定でDとする。「親子上場」に関しては以下の投稿も参照してほしい。

親子上場ってそんなに問題? 日経「株式公開 緩むルール」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/03/blog-post_19.html

KNTの「親子上場」を批判するFACTAに異議あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/kntfacta.html

「親子上場」否定論に説得力欠く日経「大機小機」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_77.html

ヤフーとアスクルの件で「親子上場の問題点浮き彫り」という日経に異議
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/blog-post_24.html

ヤフー・アスクルの件を「親子上場」の問題と捉える日経の無理筋
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post.html

「弊害」多いのに「親子上場の禁止」は求めない日経社説の謎
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_5.html

日経記者に読んでほしい藤田勉・一橋大学特任教授の「親子上場肯定論」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_29.html

2019年11月26日火曜日

東洋経済 長瀧菜摘記者とダイヤモンド大矢博之記者 しっかり書けているのは…

週刊東洋経済の長瀧菜摘記者と週刊ダイヤモンドの大矢博之記者。記事の書き手としての技術が上なのはどちらかと聞かれたら、大矢記者だと答える。ヤフー・LINEの経営統合に関する記事をそれぞれの11月30日号に書いたのが、この2人だ。
のこのしまアイランドパークのコスモス
        ※写真と本文は無関係です

まずは長瀧記者が書いた「深層リポート01~ヤフー・LINEが統合 国内ガリバー飛躍の条件」という記事の一部を見ていく。

【東洋経済の記事】

11月18日、ヤフーを傘下に持つZホールディングス(HD)とLINEは経営統合を発表。来年10月をメドにLINEはZHDの傘下に入る。現在のZHDとLINEの親会社であるソフトバンク、韓国NAVERとともに、さまざまな分野での協業を進める。



◎誤解を招く書き方

ヤフーを傘下に持つZホールディングス(HD)とLINE」と書くと「Zホールディングス(HD)とLINE」の「傘下」に「ヤフー」がいるとも取れる。もちろん「LINE」は「ヤフーを傘下」に持っていない。

さらに問題なのが「現在のZHDとLINEの親会社であるソフトバンク、韓国NAVER」というくだりだ。「ZHD」の「親会社」が「ソフトバンク」で「INE」の「親会社」が「韓国NAVER」なのだが、そのことを知らずに読んだ場合、解読にかなり迷うはずだ。

自分ならば「現在の『ZHDとLINE』の親会社であるソフトバンク」&「韓国NAVER」と理解してしまう気がする。「LINEの親会社であるソフトバンク」と明確に書いているので、「LINEの親会社」が「韓国NAVER」である可能性は考慮しないだろう。

では週刊ダイヤモンドの大矢記者はどう書いているのか。「Close Up~『対等の精神』強調もサービス整理は必至 ヤフー、LINE経営統合」という記事では以下のようになっている。

【ダイヤモンドの記事】

ソフトバンクグループでZHD傘下のヤフーと、メッセージアプリ大手のLINEが経営統合することで基本合意した。ZHDの親会社のソフトバンクと、LINEの親会社である韓国ネイバーが50%ずつ出資して合弁会社を設立。傘下にZHDを置き、ヤフーとLINEを子会社にする。2020年10月の統合完了を目指す。



◎こちらは問題なし

何の問題もない。「ソフトバンクグループでZHD傘下のヤフーと、メッセージアプリ大手のLINE」のくだりで「ヤフーと、」と読点を打っている辺りに「誤解を与えない書き方をしなくては」という配慮も見える。長瀧記者との差は明らかだ(記事をチェックした人間の差かもしれないが…)。

長瀧記者にはぜひライバル誌の記事と自分の書いた記事を読み比べてほしい。そして「どちらが読みやすいか。どちらが誤解を招きにくいか」を考えてみることだ。「文章を扱うプロ」と呼べるレベルの書き手を目指すのならば、そこは避けて通れない。


※今回取り上げた記事

深層リポート01~ヤフー・LINEが統合 国内ガリバー飛躍の条件
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/22216

Close Up~『対等の精神』強調もサービス整理は必至 ヤフー、LINE経営統合
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/28125



※東洋経済の記事の評価はD(問題あり)。ダイヤモンドの記事の評価はC(平均的)。長瀧菜摘記者への評価は暫定Cから暫定Dへ引き下げる。大矢博之記者への評価はCを据え置く。

2019年11月25日月曜日

日経 大林尚上級論説委員の「核心~桜を見る会と規制改革」に見える問題

日本経済新聞の大林尚上級論説委員は問題の多い書き手だ。25日の朝刊オピニオン面に載った「核心~桜を見る会と規制改革の妙」という記事でも、その評価は変わらない。訴えたいことがないのに出番が回ってきたので、あれこれ書いて紙面を埋めただけにしか見えない。
鎮西身延山本佛寺(福岡県うきは市)
       ※写真と本文は無関係です

まず「桜を見る会と規制改革」を上手く結び付けられていない。そして、昔話などを交えつつ「それはそうでしょうね」的な結論へと導いていく。

長くなるが、記事を見ながら問題点を指摘していきたい。

【日経の記事】

4週間前がずっと昔のようだ。安倍晋三首相の信任厚い経済産業省の幹部と80年代アイドル菊池桃子さん結婚の報に、これで10月の2閣僚辞任による政権への風当たりが弱まると期待をふくらませたのは、ぬか喜びだったか


◎そんな効果ある?

経済産業省の幹部と80年代アイドル菊池桃子さん」の「結婚」で「政権への風当たりが弱まる」効果が「期待」できるのか。「閣僚」の結婚ならまだ分かるが…。

期待をふくらませた」のが誰か明示していないのも引っかかる。大林上級論説委員が「期待をふくらませた」とも取れる書き方だ。

記事の続きを見ていく。

【日経の記事】

世論は熱しやすく冷めやすい。間髪を置かず表面化した桜を見る会をめぐる騒動に、ニコポン宰相の異名をとった桂太郎を抜いて在任期間首位に立った首相の心中いかばかりか。山口県から参加した政治家の多くが、見る会の様子をつづったブログやツイッターの写真を消したが、その必要があったとも思えない。

春爛漫(らんまん)の空の下、芸能人やアスリートも駆けつける首相主催の会に招かれれば、誰だって写真をアップしたくなる。いまさら隠すこともあるまい。主催者側からみれば、見る会は支持者へのサービスに打ってつけの舞台であった。

10月、首相の諮問機関である規制改革推進会議が発足した。裏方を担当する内閣府は会議の形式と運営に3つの変更をくわえた。(1)旧会議は3年の設置期限があったが常設にした(2)3年だった委員の任期を2年に縮めた(3)15人以内だった委員の定員を20人以内に増やした――である。これらを盛り込んだ政令の閣議決定を経て、同31日に首相官邸で顔合わせがあった。

それがお開きになり、首相と官房長官は委員と握手してまわった。委員のなかには初めて官邸に足を踏み入れた人がいた。内閣改造のときに首相と閣僚らが記念撮影をする階段やホワイエを背に、スマホで自撮りするつわものもいたと聞く。さすがにアップは自重しただろうが。

見る会の地元ゲストの立場にどこか似てはいないだろうか。政権にしてみれば、委員への任命はシンパを増やすチャンスになりうる。定員増と任期短縮がその機会に接する人を増やすというのは、うがった見方かもしれないが。

官邸の意向がどうであれ、委員への就任を断った人がいた。「取締役としての本業と老親の介護が多忙につき」が理由だが、規制の厚い岩盤を穿(うが)つ改革に期間を区切ってきちんと結果を出せるのか、一抹の不安があったという。会議が19人で船出したのはこのハプニングゆえだ。

規制改革の源流をたどると細川護熙氏にゆき着く。熊本県知事だったときにバス停を10メートル動かすのに運輸省のハンコがいることに驚き、改革に発奮するようになった。93年に首相の座に就くと、平岩外四経団連会長に構造改革の方針をまとめるよう諮問する。



◎話のつながりが…

上記のくだりは話のつながりがあまりない。

桜を見る会」と「規制改革推進会議」は「シンパを増やすチャンスになりうる」という点で似ていると2つを関連付けてはいる。そこまではいい。そこからどう展開するかだ。

しかし「委員への就任を断った人がいた」という話に移ってしまう。この件は記事の中で完全に浮いている。無駄な段落と言ってもいい。

そして「規制改革の源流をたどると細川護熙氏にゆき着く」と昔話が始まる。もう「桜を見る会」と絡める気はないようだ。

昔話の続きを一気に見ていこう。

【日経の記事】

こうして公表された平岩リポートをもとに、総理府が行政改革委員会をつくったのが94年。その翌年、椎名武雄日本IBM会長を座長に規制緩和小委員会が発足した。

改革に脂が乗った時期は、宮内義彦オリックス会長(現シニア・チェアマン)が椎名氏の後を襲った96年からの10年あまりだ。その後半は構造改革を旗印にかかげた小泉政権と重なった幸運もあった。

金融や通信など経済規制のみならず、医療や教育を含めた社会規制にも矛を向け、規制の根拠や改革を担当官庁に突きつめる。時に官の荒唐無稽をあぶり出するやり方を定着させた。

保育所に調理場の併設義務があるのは「子供がちゃんとした大人になるため」という迷答を厚生労働官僚から引き出したことがある。「岩盤規制」は宮内氏の造語だった。議長のバトンはその後、草刈隆郎日本郵船会長、岡素之住友商事相談役、大田弘子政策研究大学院大教授――に継がれてきた(肩書は当時)。

この間、ほぼ共通していたのは、少なからぬ委員の人選に議長の意を映すしくみがあった点だ。裏方を担う内閣府の事務局に目端が利く民間人材を送り込む議長もいた。

改革の成否は時の政権の本気度にも左右されるため、それぞれに濃淡ある。なにしろ会議が攻め込むべき本丸は、野党よりも与党の族議員である。首相や担当相が族の意向をおもんぱかれば、会議の勢いはそがれる。

幾多の苦難があった。11分野・計1797項目におよぶ改革を実行しようとした椎名氏は、規制に守られた業界と族議員の抵抗に体調を崩すことがあった。宮内氏は議長降ろしのための怪文書をまかれたり、本人のあずかり知らぬところで「辞めるハラを固めたようです」などと担当相が首相に耳打ちしたりされた。

族議員などのこうした横やりは、会議委員に結束を固める副次効果をもたらしたが。


◎行数稼ぎはできているが…

自分の知っている昔話で行数を稼いで何とか終わりに近付いてきた。しかし訴えたいことはまだ見えてこない。「桜を見る会と規制改革の妙」を上手く読者に見せられるだろうか。記事の終盤を見ていこう。

能古島(福岡市)から見た博多湾
      ※写真と本文は無関係です
【日経の記事】

新しい会議の議長、小林喜光三菱ケミカルホールディングス会長は経済同友会代表幹事を退いて間もない改革派の経済人だ。官邸会議の常連でもある。ただし、ほかの政府審議会と色合いがいくぶん違う点には注意がいるだろう。

多様な意見を反映させるために、多くの審議会の人選は事務局官僚がバランスのとれた差配をするのが通例だ。一方、規制改革はすべての委員が同じ一点を見据えて岩盤を砕かなければ、はかばかしい成果はあげられない。

加計(かけ)学園の問題でつまずいた国家戦略特区にみられるように、改革をつぶしにかかる勢力は顕在だ。これに対する陣形は、ビジネスの現場を知り尽くす経済人が先陣、法と経済学を駆使する学識者と改革派官僚が参謀、議長は大将といったところだ。

桜を見る会と違って求められるのは改革の成果だけだ。四半世紀近く規制改革を取材してきて、心からそう思う



◎それはそうでしょうが…

桜を見る会」と絡めなくてはいけないのに、ほとんどできていないという意識はあるのだろう。最後に取って付けたように「桜を見る会と違って」と入れている。

これで「桜を見る会と規制改革の妙」という見出しを付けて恥ずかしくないのだろうか。自分が筆者だったら、穴があったら入りたい気分になる。

四半世紀近く規制改革を取材」してきたのに「求められるのは改革の成果だけだ」という結論を導いているのも辛い。

まず当たり前すぎる。そこを許すとしても「桜を見る会」を持ち出さなくても導ける結論だ。「桜を見る会」と絡めるならば、絡めたからこそ導ける結論が欲しい。

読者は長いコラムを読んで最後に「桜を見る会と違って求められるのは改革の成果だけだ。四半世紀近く規制改革を取材してきて、心からそう思う」という結論に触れる。個人的には「訴えたいことがないんだな」としか思えない。

ついでに言うと「規制改革」で「議長は大将」というのも解せない。「大将」の役割を果たすべきなのは「首相」ではないのか。


※今回取り上げた記事「核心~桜を見る会と規制改革の妙
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191125&ng=DGKKZO52504670S9A121C1TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。大林尚上級論説委員への評価はF(根本的な欠陥あり)を維持する。大林氏については以下の投稿も参照してほしい。

日経 大林尚編集委員への疑問(1) 「核心」について
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_72.html

日経 大林尚編集委員への疑問(2) 「核心」について
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_53.html

日経 大林尚編集委員への疑問(3) 「景気指標」について
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post.html

なぜ大林尚編集委員? 日経「試練のユーロ、もがく欧州」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_8.html

単なる出張報告? 日経 大林尚編集委員「核心」への失望
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_13.html

日経 大林尚編集委員へ助言 「カルテル捨てたOPEC」(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_16.html

日経 大林尚編集委員へ助言 「カルテル捨てたOPEC」(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_17.html

日経 大林尚編集委員へ助言 「カルテル捨てたOPEC」(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_33.html

まさに紙面の無駄遣い 日経 大林尚欧州総局長の「核心」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/04/blog-post_18.html

「英EU離脱」で日経 大林尚欧州総局長が見せた事実誤認
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_25.html

「英米」に関する日経 大林尚欧州総局長の不可解な説明
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/blog-post_60.html

過去は変更可能? 日経 大林尚上級論説委員の奇妙な解説
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_14.html

年金に関する誤解が見える日経 大林尚上級論説委員「核心」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/11/blog-post_6.html

今回も問題あり 日経 大林尚論説委員「核心~高リターンは高リスク」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_28.html

日経 大林尚論説委員の説明下手が目立つ「核心~大戦100年、欧州の復元力は」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/100.html

株安でも「根拠なき楽観」? 日経 大林尚上級論説委員「核心」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_20.html

2019年11月23日土曜日

取材不足では? 日経ビジネス「上場子会社再編で東芝テック対象外のなぜ」

日経ビジネス11月25日号に載った「時事深層 COMPANY~東芝、上場子会社再編で東芝テック対象外のなぜ」という記事には期待してしまった。このニュースを聞いた時に自分も同じく「なぜ」と思ったからだ。しかし、この記事が期待に応えてくれたとは言い難い。
のこのしまアイランドパーク(福岡市)のコスモス
            ※写真と本文は無関係です

東芝は11月13日、上場子会社3社を総額2000億円で完全子会社化すると発表した」ものの「東芝テックは対象外」。確かに「不可解」だ。佐伯真也記者と竹居智久記者はこの謎にどう迫ったのだろうか。記事の一部を見ていこう。

【日経ビジネスの記事】

「資本政策についてはコメントできないが、取り込まなくてもテックの重要性は変わらない」。TOB発表翌日に開いたIR(投資家向け広報)説明会。東芝でCDO(最高デジタル責任者)を務める島田太郎執行役常務は東芝テックについて歯切れが悪かった。

◇   ◇   ◇

東芝」の「IR説明会」ではまともな説明がなかった。それは分かった。

さらに当該部分を見ていこう。

【日経ビジネスの記事】

東芝の車谷会長は東芝テックについて「持続的な企業価値の向上施策について日々話し合いをしているが、現時点で持ち分の変動は考えていない」と話す。同社株は年初から7割ほど上昇しており、単純に「高値づかみ」を避けたかったのかもしれない。


◎謎が残るにしても…

なぜ」に関するヒントらしきものは、上記のくだりだけだ。結局、記事を最後まで読んでも「『高値づかみ』を避けたかったのかもしれない」という推測しか出てこない。

きちんと答えを出せとは言わない。謎が残ったままでも仕方がない。だが、やはり頑張って謎に迫ってほしい。

今回の記事で残念なのが、東芝関係者に独自取材しようとした形跡がうかがえないことだ。「車谷会長」のコメントも記者会見でのものだと思われる。

結局は何も教えてくれないとしても、聞き出そうとする努力は欲しい。やったけれどダメだったのならば、それを記事に盛り込んでほしい。

記事には「『経営戦略との整合性が感じられない』。複数のアナリストは、東芝が発表した資本政策に疑問の声を上げる」とのくだりもある。東芝の関係者に当たって成果がなければ「複数のアナリスト」に「東芝テックだけ例外なのはなぜだと思いますか」と聞いてみる手もある。

そこでダメならば、佐伯記者と竹居記者であれこれ知恵を絞ってみてもいい。「全部やった。それでも『高値づかみを避けたかったのかも』しか出てこなかった」と言うのだろうか。だとしたら記事にするのは諦めた方がいい。


※今回取り上げた記事「時事深層 COMPANY~東芝、上場子会社再編で東芝テック対象外のなぜ
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00417/


※記事の評価はD(問題あり)。竹居智久記者への評価は暫定でDとする。佐伯真也記者への評価はDを据え置く。佐伯記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経ビジネス「見えてきたクルマの未来」で見えなかったこと
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_10.html

33%出資の三菱製紙は「連結対象外」? 日経ビジネスに問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/33.html

「33%出資は連結対象外」に関する日経ビジネスの回答
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/33_21.html

日経ビジネスに問う「知的障害者は家庭では必要とされない?」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/02/blog-post_17.html

「知的障害者は家庭では必要とされない?」に日経ビジネスが回答
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/02/blog-post_21.html

「みんなのタクシー」は本当に「順調」? 日経ビジネス佐伯真也記者に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/blog-post_17.html