2020年6月9日火曜日

東洋経済で「五輪中止への秒読みが始まった」と言い切った後藤逸郎氏を評価

記事で何かの見通しを語る時はリスクを負って大胆に挑んでほしい。逃げを打ったどっち付かずの分析に触れると残念な気持ちになる。その点で週刊東洋経済6月13日号の特集「コロナ経済入門」の中の「東京五輪の2021年開催は困難 中止への秒読みが始まった」という記事は評価できる。自分が見ている範囲では、ここまで明確に「2021年開催は困難」と打ち出した記事は初めてだ。
大分県日田市の三隈川(筑後川)
      ※写真と本文は無関係です

筆者でジャーナリストの後藤逸郎氏は記事の終盤で以下のように記している。

【東洋経済の記事】

新型コロナは死亡率や後遺症の軽重も定かでなく、楽観できる情報は何もない。北半球の国々は感染者が減少してきたが、冬を迎えるブラジルなど、南半球は感染の中心地になりそうだ。北半球で感染流行第2波が懸念される今冬は、世界陸連が各国のオリンピック選考を再開する12月と重なる。

新型コロナ患者が減少した台湾や韓国、ドイツは野球やサッカーなどプロスポーツを再開した。ただ、選手のPCR検査や無観客か人数制限での試合を行い、何より各国は入国制限を解いていない。世界約200カ国から選手や観客が集まる東京大会を台湾や韓国、ドイツと同じ条件で開くことはできない。

唯一、大会開催を可能とするワクチンは、年内開発が実現しても、選手や観客、開催地の日本人すべてに行き渡らせることは絶望的だ。IOCは10月を開催判断の期限にした。東京2020大会中止へ向けて秒読みが始まった



◎分析に説得力あり

世界約200カ国から選手や観客が集まる東京大会を台湾や韓国、ドイツと同じ条件で開くことはできない」「唯一、大会開催を可能とするワクチンは、年内開発が実現しても、選手や観客、開催地の日本人すべてに行き渡らせることは絶望的」--。だから「東京2020大会中止へ向けて秒読みが始まった」と見る分析には説得力を感じる。

もちろん見通しが外れる可能性もある。そうなれば振り返って恥ずかしい思いをするかもしれない。それを承知の上で「中止へ向けて秒読みが始まった」と言い切った後藤氏の姿勢は称賛に値する。

ただ、気になる点もあった。記事の半分近くが「スペイン風邪」の歴史に当てられていたのは感心しない。「東京五輪の2021年開催は困難 中止への秒読みが始まった」という見出しに釣られて読んだのに、なかなか本題に入らないので不安になった。記事の過半は「東京五輪の2021年開催」が可能かどうかの分析に充ててほしかった。

もう1つ気になったのが以下のくだりだ。

【東洋経済の記事】

感染症はいともたやすく選手生命を奪う。10年10月、インドで英連邦競技大会(コモンウェルスゲームズ)が開かれた。当時、アジアでデング熱が流行し、WHOが警告していた。蚊が媒介するウイルスにより高熱を出し、死に至ることもある病で、治療薬はない。

インドは当時、20年ぶりの感染者増に見舞われ、大会に参加したカナダの女子平泳ぎ選手、アンナメイ・ピアースが感染した。回復後も調子が戻らず、引退した。09年に200メートル平泳ぎで世界記録を更新した好選手の前途を、感染症が閉ざした



◎因果関係を断定できる?

アンナメイ・ピアース」選手が「回復後も調子が戻ら」なかったのは「デング熱」が原因と断定して良いのだろうか。「デング熱」への感染がなければ「調子」が戻っていたかどうか判断はかなり難しそうだ。なのに「好選手の前途を、感染症が閉ざした」と言い切っている。因果関係を単純に考え過ぎている気がする。


※今回取り上げた記事「東京五輪の2021年開催は困難 中止への秒読みが始まった
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/23800


※記事の評価はC(平均的)。後藤逸郎氏への評価もCとする。

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