2020年6月19日金曜日

興味深かった日経「パリ協定達成には…大規模移動制限10年継続必要」

新型コロナウイルス感染拡大は温暖化ガス排出量にどう影響を及ぼすのか、ずっと気になっていた。19日の日本経済新聞朝刊経済面に載った「パリ協定達成には… 大規模移動制限10年継続必要 温暖化ガス、今年8%減へ」という記事は、その疑問に答えてくれる興味深い内容だった。前半部分を見てみよう。
巨勢川(福岡県久留米市)
     ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

新型コロナウイルスの感染拡大で2020年の温暖化ガス排出量は前年比8%減程度と過去最大の減少幅になるとの見方が強まっている。大規模な活動制限が世界に広がったためだ。ただ国際的な気候変動対策「パリ協定」の目標を達成するには今年並みの削減を10年間続ける必要がある。パリ協定の高いハードルが改めて浮き彫りになった形だ。

コロナの感染拡大で世界中で国境をまたぐ移動が制限された。外出の禁止や自粛要請で公共交通機関や自家用車の利用も減った。小売店や娯楽施設が休業し、工場の停止など生産活動も停滞した。今年の温暖化ガス排出量が減るのは確実だ。

英国の研究者らが英科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ」に掲載した論文によると、行動制限が年内いっぱい続けば二酸化炭素(CO2)の排出量は約7%減少する。国際エネルギー機関(IEA)が4月末に発表した報告も、2020年のエネルギー関連のCO2排出量は前年比8%減になるとした。

量にすると26億トンで、リーマン・ショック後の09年の6倍で過去最大の減少幅。だがパリ協定から見れば「異常」な数値ではない。国連環境計画(UNEP)が昨年11月に発表した報告書によると、パリ協定の「産業革命前からの気温上昇を1.5度にとどめる」目標達成には、排出量を30年まで毎年7.6%削減する必要がある。英国の研究者やIEAが予想する今年の削減量の水準を10年間続けなければならない。


◎見出しは違うような…

上記のくだりからは見出しが少し違うと感じる。「国際的な気候変動対策『パリ協定』の目標を達成するには今年並みの削減を10年間続ける必要がある」と筆者ら(小川和広記者と杉原淳一記者)は説明している。今年と同レベルの「大規模移動制限」を来年も続けても「温暖化ガス排出量」は基本的に減らない。さらに「制限」を強める必要がある。

見出しからは、今年並みの「大規模移動制限」を「10年継続」すれば「『パリ協定』の目標を達成」できるような印象を受ける。実際はもっと厳しいはずだ。

パリ協定の『産業革命前からの気温上昇を1.5度にとどめる』目標達成には、排出量を30年まで毎年7.6%削減する必要がある」という前提が正しいとすれば、達成は絶望的だ。今年の水準からさらに「7.6%削減する」のが至難なのは誰でも分かる。

記事でも「ときに都市封鎖すら伴う不自由な生活を続けることは持続可能といえない。英国に拠点を置く気候変動分析サイト『カーボン・ブリーフ』は『このような排出量の急激な削減を10年間続けるのは非常に困難』と指摘する」と書いている。

だったら「目標達成」を諦めて「気温上昇」が続くことを前提に対策を練るしかないのではないか。

しかし記事の結論はそうはなっていない。そこも見ておこう。

【日経の記事】

カーボン・ブリーフは「(従来のやり方のままでは)排出量の減少は一時的なもので終わり、実質ゼロへの移行は遅い歩みに戻る」と警鐘を鳴らす。新たな低炭素型社会を作れるかは、コロナを機に進んだ前向きな変化を生かせるかにかかる


◎中途半端に希望を抱かせても…

コロナを機に取り入れた変化で継続できるものはある。代表的なのはテレワークを使う在宅勤務だ」などと書いて、最後に「新たな低炭素型社会を作れるかは、コロナを機に進んだ前向きな変化を生かせるかにかかる」と中途半端に希望を抱かせるような締め方をしている。ここは納得できなかった。

このような排出量の急激な削減を10年間続けるのは非常に困難」だという見方を受け入れるならば「気温上昇」を受け入れていくしかない。「非常に困難」だがやり抜くべきだとの考えならば、どこまで突き詰めていくのか示すべきだ。

今回の記事から自然に結論を導くならば、前者しかあり得ないと思えるが…


※今回取り上げた記事「パリ協定達成には… 大規模移動制限10年継続必要 温暖化ガス、今年8%減へ
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200619&ng=DGKKZO60525730Y0A610C2EE8000


※記事の評価はB(優れている)。小川和広記者と杉原淳一記者への評価はD(問題あり)からC(平均的)へ引き上げる。 

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