2015年12月3日木曜日

「ラップ型投信」になぜ好意的? 日経 野口和弘記者の罪(2)

2日の日本経済新聞朝刊マネー&インベストメント面に載った「躍進ラップ型投信、実力は  タイプ3種類、成績様々」という記事の問題点をさらに論じていく。「こんなコストが高いラップ型投信を筆者の野口和弘記者はなぜ好意的に紹介しているのか」との疑問点から話は始まっている。なので、野口記者の立場から考えうる反論を想定して「それでもラップ型投信がダメな理由」を述べたい。
英彦山山頂(福岡県添田町) ※写真と本文は無関係です

◎比率を固定しないから「ラップ型」?

今回の記事では、ラップ型投信とバランス型投信を比較して「大半のバランス型が各資産の構成比率を固定しているのに対し、ラップ型は市場環境の変化に応じて比率を変動させる」と説明している。だからと言って、投資額の2%近くを手数料として毎年支払う価値があるとは思えない。運用側が構成比率を変えてくれても、コストに見合うような見返りが期待できるわけではない(比率の変更が吉と出るか凶と出るかは基本的に五分五分という意味)。一方、信託報酬が高くなることは投資家にとって明らかなマイナス要素だ。

投資初心者には「高い信託報酬を払うぐらいならば、資産構成比率なんて自分で適当に決めて、国債とETFで運用しろ」と助言したい。かなり乱暴な意見ではあるが、それでも高コストのラップ型投信を選ぶよりはるかにマシだ。投信を売る側のカモになる事態も避けられる。

記事によると、ラップ型投信の「シンプル型」は「各資産の市場平均と運用成績が近いインデックス投信などに再投資する」らしい。つまり、投資家から見ると、インデックス投信の信託報酬を差し引かれたところから、さらにラップ型投信の信託報酬を取られる。だったら、多少機動的でなくても、自分でインデックス投信を組み合わせる方が合理的だ。


◎自分で考えなくて済むから「ラップ型」?

自分であまり考えなくて済むことに魅力を感じて高い手数料を支払う人はいるかもしれない。「ラップ口座」ならば、確かに投資家はあまり考えなくて済む。しかし、「ラップ型投信」は言ってみれば普通の投信だ。債券比率の高いものがいいのか、ヘッジファンドを組み込んだものがいいのかなど、色々と投資家側で考える必要がある。

記事の中でも、楽天証券経済研究所の篠田尚子氏の「投資先の比率やコストも確認し、損しても理由が納得できるほどの知識を持ってほしい」というコメントを紹介している。要は自分で運用方針を検討する手間がかかる。ならば、高コストのラップ型投信に頼らず、自分で資産配分を決めた方が合理的だ。


最後に、「この説明はおかしい」と思えたくだりを1つ紹介しておこう。


【日経の記事】

3つ目は「大幅変動型」だ。三菱UFJ国際投信の「バランス・イノベーション(ファーストラップ・ささえ)」が当てはまる。

ラップ型投信は柔軟な運用とはいえ、短期間に投資比率を変える幅は10%前後だ。このファンドは株式相場が急落した8月下旬、株式の投資比率を7月末の32%からゼロ(株式抑制型の場合)とし、安全資産を増やした。「とにかく損をしたくない」という投資家に向いた商品と言えそうだ

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自分なら「とにかく損をしたくない」という投資家に「バランス・イノベーション(ファーストラップ・ささえ)」を薦めたりはしない。記事中の表によると、この投信は購入時手数料2.16%、信託報酬1.13~1.40%で、やはり高コストだ。これらのコストも含めて考えると、損をする確率は5割前後に達するはずだ。自分だったら、「とにかく損をしたくないのならば、とりあえず個人向け国債で運用してろ」とでも投資初心者には言う。野口記者は「とにかく損をしたくないなら、国債よりもバランス・イノベーションだよ」と自信を持って助言できるだろうか。


※記事の評価はD(問題あり)。暫定でDとしていた野口和弘記者への評価はDで確定とする。

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