2020年12月12日土曜日

「アクティブ型投信」は有力な選択肢? 日経 大場智子記者に考えてほしいこと

12日の日本経済新聞朝刊マネーのまなび面に載った「トップストーリー~投信、利回り改善の選択肢 リスク踏まえ積極運用型も」という記事を投資初心者は参考にしないでほしい。筆者の大場智子記者は「アクティブ(積極運用)型投信」を前向きに紹介しているが、ほとんどの投資家にとってまともな選択肢にはなり得ない。

耳納連山に沈む夕陽

記事を見ながら、その理由を述べてみたい。

【日経の記事】

指数(インデックス)の動きに連動するように組み入れ銘柄を選んで運用するのがインデックス型投信。目安とする指数に採用されている銘柄を中心に投資するので、運用担当者が独自に企業調査などをする手間が基本的に省けることが多い。このため、投資家が払う信託報酬などのコストも一般的に低くなりやすい。

ただ老後に向けて資産を少しでも増やしたいなら、指数を上回る成績が期待できる投信が選択肢だ。例えば毎月5万円を20年間積み立てて運用する場合、利回りが年3%なら元本1200万円が約1600万円に増えるが、年5%だと2000万円を超える。一案がファンドマネジャーが独自の運用方針に基づいて銘柄を選ぶアクティブ(積極運用)型投信だ。

「インデックス型を運用の中核に据え、一部の資金をアクティブ型に振り向けてはどうか」とファイナンシャルリサーチ代表の深野康彦氏は提案する。運用資金の中心は低コストで世界全体に幅広く分散投資し、資金の一部で個別株などに投資する手法を「コア・サテライト戦略」という。年金を運用する機関投資家などが採用することが多く、「資産全体の利回りを引き上げる効果が期待できる」(深野氏)。

とはいえアクティブ型の運用成績は玉石混交。国内のアクティブ型の信託報酬は年1~2%程度が多い。1%を下回ることが多いインデックス型より高いが、運用成績はインデックス型を下回る投信が少なくない。もちろんリターンが指数を大きく上回るアクティブ型もあるが、リスクは一般的に大きくなりやすい。


◎高い信託報酬を支払う意味ある?

コア・サテライト戦略」を否定するつもりはない。と言うより「アクティブ運用」も否定しない。しかし「アクティブ型投信」はダメだ。「国内のアクティブ型の信託報酬は年1~2%程度が多い。1%を下回ることが多いインデックス型より高いが、運用成績はインデックス型を下回る投信が少なくない」と大場記者も書いている。コストが高いことが「アクティブ型」を否定する唯一の理由だ。「インデックス型」とコストに差がないのならば「アクティブ型」も選択肢になり得る。

運用成績は玉石混交」なのだから「」を選べばいいと考えがちだ。しかし事前に「」を見極める方法はほとんどない。「信託報酬」が高いのだから「アクティブ型」の期待リターンが「インデックス型」をそれ以上に上回る必要がある。しかし「アクティブ型」の期待リターンは「信託報酬」がかさむ分、むしろ低くなると考えるべきだ。

大場記者は記事の中で「長期で運用実績を確認すること」の重要さを説いている。過去の「運用実績」に基づいて投資対象を決めると高いリターンが得られるというデータでもあるのだろうか。そうした戦略に有効性はないというのが定説だ。なのになぜ「運用実績を確認すること」を勧めるのか。

金融業界の人間が「アクティブ型投信」を組み込むべきだと訴えるのは分かる。「インデックス型」は儲けが少ないからだ。しかし記者が丸め込まれてはダメだ。今回の記事を読む限りでは、大場記者は業界関係者に上手く誘導されている気がする。


※今回取り上げた記事「トップストーリー~投信、利回り改善の選択肢 リスク踏まえ積極運用型も

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201212&ng=DGKKZO67239390R11C20A2PPK000


※記事の評価はD(問題あり)。大場智子記者への評価も暫定でDとする。

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