2020年1月23日木曜日

「コンビニ 飽和にあらず」に説得力欠く日経 中村直文編集委員

23日の日本経済新聞朝刊総合1面に載った「真相深層~コンビニ 飽和にあらず 昨年末、店舗数が初の減少 省人化が成長の必須条件に」という記事は「飽和にあらず」に関して説得力が欠けていた。
水鏡天満宮(福岡市)※写真と本文は無関係です

中村直文編集委員が書いた記事の前半を見ていこう。

【日経の記事】

コンビニエンスストアの店舗数が2019年末の時点で初めて減少した。人手不足に伴う出店抑制が原因だが、市場が飽和したわけではない。逆に伸びる市場に対しコンビニ各社が対応を誤ったことが大きい。

日本フランチャイズチェーン協会によると、19年末のコンビニ大手7社の店舗数は5万5620店で18年末に比べ123店減少した。3強を見るとセブン―イレブン・ジャパンが288店の純増、ローソンはほぼ横ばい、ファミリーマートが127店の純減だ。

注目したいのは、店舗数こそ減ったものの、市場は底堅いという点だ。年間売上高は全店ベースで11兆1608億円と前年比1.7%増。既存店も微増で初めて10兆円を超えた。昨年は消費税率引き上げに伴い、キャッシュレス決済で大半の店で割引できる仕組みも導入された。追い風が吹いての増収ともいえるが、コンビニが飽和したとみるのは早計だ

コンビニを取り巻く環境は悪くない。キャッシュレス決済はさらに普及するだろう。硬貨での支払いが多いコンビニはむしろキャッシュレスでより使いやすくなり、今後もコンビニでの買い物を後押しするのは間違いない。平均世帯人数が減り、単身世帯が夫婦と子供の世帯を上回る時代。女性の社会進出もさらに進むとみられる



◎それでまだまだ成長市場?

見出しでは「コンビニ 飽和にあらず」と思い切りがいいが、記事を読むと「コンビニが飽和したとみるのは早計だ」とややトーンダウンしている。「飽和にあらず」の根拠は「キャッシュレスでより使いやすくなり、今後もコンビニでの買い物を後押しする」ことが柱で、「平均世帯人数」の減少や「女性の社会進出」も追い風だと見ているようだ。

それで「コンビニ 飽和にあらず」と言われてもとは思う。コンビニ1店当たりの売上高は頭打ち傾向が定着している。そして今回「店舗数が2019年末の時点で初めて減少した」。既存店を大きく伸ばせないとの前提に立てば「まだまだ全体の店舗数を増やしていけるのか」がポイントだ。この点に関して中村編集委員は答えを出していない。

飽和」に関しては以下の記述もある。

【日経の記事】

市場の飽和というのは、子供の数が減り、ランドセルの販売個数が減っているような状態を指す。セブンイレブンでは売り上げが前年同月を上回る既存店が多い。コンビニで売り上げを伸ばせるかどうかは企業努力の差が大きいといえる。


◎減ってないと「飽和」じゃない?

市場の飽和というのは、子供の数が減り、ランドセルの販売個数が減っているような状態を指す」という説明は誤りではないが、問題はある。「ランドセルの販売個数」が仮に横ばいでも、それ以上に伸びる余地がないならば「市場の飽和」だ。

それに、人口が減って全体の店舗数が減少に転じたのだから、「コンビニ」も店舗数ベースでは「ランドセル」のような動きになっていると言える。

セブンイレブンでは売り上げが前年同月を上回る既存店が多い」などと個別企業の話を持ち出しても「市場の飽和」が起きているかどうかは分からない。「飽和」した市場でも他社のシェアを奪えば個別企業の成長は可能だ。だからと言って「飽和にあらず」とは言えない。

コンビニで売り上げを伸ばせるかどうかは企業努力の差が大きい」のは当然だ。それはほとんどの読者が分かっているはずだ。問題は「飽和にあらず」と言えるかどうかだ。

今回の記事では「飽和にあらず」とは思えなかった。ほぼ「飽和」状態で、それゆえに「店舗数が初の減少」となったと理解する方が自然ではないか。


※今回取り上げた記事「真相深層~コンビニ 飽和にあらず 昨年末、店舗数が初の減少 省人化が成長の必須条件に
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200123&ng=DGKKZO54692140S0A120C2EA1000


※記事の評価はD(問題あり)中村直文編集委員への評価はDを維持する。中村編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

無理を重ねすぎ? 日経 中村直文編集委員「経営の視点」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2015/11/blog-post_93.html

「七顧の礼」と言える? 日経 中村直文編集委員に感じる不安
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/blog-post_30.html

スタートトゥデイの分析が雑な日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_26.html

「吉野家カフェ」の分析が甘い日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_27.html

日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」が苦しすぎる
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_3.html

「真央ちゃん企業」の括りが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_33.html

キリンの「破壊」が見えない日経 中村直文編集委員「経営の視点」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_31.html

分析力の低さ感じる日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post_18.html

「逃げ」が残念な日経 中村直文編集委員「コンビニ、脱24時間の幸運」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/24.html

「ヒットのクスリ」単純ミスへの対応を日経 中村直文編集委員に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_27.html

日経 中村直文編集委員は「絶対破れない靴下」があると信じた?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_18.html

「絶対破れない靴下」と誤解した日経 中村直文編集委員を使うなら…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_21.html

「KPI」は説明不要?日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」の問題点
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/kpi.html

日経 中村直文編集委員「50代のアイコン」の説明が違うような…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/50.html

「セブンの鈴木名誉顧問」への肩入れが残念な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/blog-post_15.html

「江別の蔦屋書店」ヨイショが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_2.html

渋野選手は全英女子まで「無名」? 日経 中村直文編集委員に異議あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_23.html

早くも「東京大氾濫」を持ち出す日経「春秋」の東京目線
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_29.html

日経 中村直文編集委員「業界なんていらない」ならば新聞業界は?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/blog-post_5.html

「高島屋は地方店を閉める」と誤解した日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_23.html

野球の例えが上手くない日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/blog-post_15.html

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