2020年1月10日金曜日

最低賃金引き上げ率「5%」の根拠を示さないデービッド・アトキンソン氏

デービッド・アトキンソン氏の最低賃金引き上げ論をこれまで何度も批判してきた。その最大の理由は引き上げ幅と期間が具体的でないことだ。10日の日本経済新聞朝刊オピニオン面に載った「エコノミスト360°視点~生産性向上の痛みから逃げるな」という記事では「20年こそ最低賃金を5%引き上げ、東京と地方の最低賃金のギャップも縮小させるべきだ」と訴えており、多少は具体的になってきた。しかし主張に説得力があるとは言い難い。
のこのしまアイランドパーク(福岡市)
     ※写真と本文は無関係です

当該部分を見ていこう。

【日経の記事】

生産性の問題を考察すればするほど、進むべき道が見えてくる。経済学の大原則たる規模の経済をシンプルに考えるべきだ。企業が大きくなればなるほど、全体として生産性が上がる。女性の活躍も進む。最先端技術が普及する。輸出が増える。賃金が上がる。有給休暇も取れる。

人口が減る日本で企業の規模を拡大するには、合併・統合を進めることになる。取るべき対策は、合併・統合で企業のオーナーが得をする税制の確立である。さらに、合併・統合に消極的な経営者の背中を押すために、20年こそ最低賃金を5%引き上げ、東京と地方の最低賃金のギャップも縮小させるべきだ

人口減少社会にあっては、人口増加時代にできた中小企業に対する考え方と政策は変えざるを得ない。358万社(19年中小企業白書)もある中小企業の全てが日本の宝であり、日本経済を支えているという、人々が好む神話はもう要らない。

今年こそ、生産性に大きく貢献する中堅企業、成長する中小企業やイノベーションを起こす中小企業に絞って徹底的に応援しよう。生産性向上に努めない企業の応援は直ちにやめるべきだ。町工場の人情話のようなエピソードをもてあそぶのでなく、エビデンス(実証)に基づいた議論が展開されることを祈りたい


◎「5%」が最適と言える「エビデンス」は?

20年こそ最低賃金を5%引き上げ、東京と地方の最低賃金のギャップも縮小させるべきだ」とアトキンソン氏は言うが、なぜ「5%」なのかは教えてくれない。「エビデンス(実証)に基づいた議論が展開されることを祈りたい」と思うのならば、「5%」が引き上げ幅として最適だと言える「エビデンス」を示してほしい。

東京と地方の最低賃金のギャップも縮小させるべきだ」との考えに基づくと、一律「5%」の引き上げは好ましくないはずだ。そこをどうすべきかも書いていない。

人口が減る日本で企業の規模を拡大する」ことが必要と言うならば、「合併・統合で企業のオーナーが得をする税制の確立」で十分ではないか。強いムチが必要な場合は、規模拡大に消極的な企業に重税を課せば済む。「最低賃金」の引き上げという間接的な手法にこだわる理由もよく分からない。

やはり今回も「アトキンソン氏の最低賃金引き上げ論に耳を傾ける必要はない」と考えるべきだろう。


※今回取り上げた記事「エコノミスト360°視点~生産性向上の痛みから逃げるな
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200110&ng=DGKKZO54217010Z00C20A1TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。デービッド・アトキンソン氏への評価もDを据え置く。アトキンソン氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

D・アトキンソン氏の「最低賃金引き上げ論」に欠けている要素
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/d.html

改めて感じたアトキンソン氏「最低賃金引き上げ論」の苦しさ
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_10.html

日経でも雑な「最低賃金引上げ論」を披露するアトキンソン氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_11.html

相変わらず説明に無理があるデービッド・アトキンソン氏の記事
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/blog-post_7.html

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