2020年1月15日水曜日

色々と気になる週刊エコノミスト「東大女子 女子学生比率2割の壁」

週刊エコノミスト1月21日号の「東大女子 女子学生比率『2割』の壁~イノベーション阻害の要因にも」という記事には色々と疑問を感じた。記事を見ながら具体的に指摘したい。
のこのしまアイランドパーク(福岡市)
        ※写真と本文は無関係です

【エコノミストの記事】

首都圏出身の男子学生が多くを占める東京大学。「偏ったクラスターの人間ばかりが集まると、発想が閉じてしまう」。研究室から数多くの起業家を輩出している東大大学院情報学環の暦本純一教授は、人材の偏りがイノベーション(技術革新)の阻害につながることを危惧する。

東大の発表資料によると、2019年度入試の合格者は37%が東京都内、59%が関東圏の高校出身者だった。東大の「関東地方大学化」は年々顕著になっている。入学者数の女子学生が占める割合は17年度に一時的に20%を上回ったものの、その後再び低迷し、19年度は18%にとどまった。

世界の主要大学や他の旧帝大と比べても東大の「異常さ」は突出している。

この事実を東大はどう受け止めているのか。ジェンダー論が専門で、東大の女子学生を増やす取り組みに関わってきた瀬地山角教授は、「都心アッパーミドル家庭の男子だけが集まることで、格差が固定化される恐れがある」と指摘する。東大は官僚や法律家、経営者の養成機関であり、最大の研究者養成機関でもある。「政策立案に関わる人材、広く社会を見渡す必要がある人材を送り出している大学で、性別にこれだけの偏りがあるのは、日本の将来を考えても問題だ」と危惧する。


◎東大を過大評価しているような…

まず「都心アッパーミドル家庭の男子だけが集まる」という「瀬地山角教授」の認識が引っかかる。「37%が東京都内」なので「都心アッパーミドル家庭」の出身者が占める比率を仮に20%としよう。このうちの2割が「女子」だとすると「都心アッパーミドル家庭の男子」はわずか16%。なのに「都心アッパーミドル家庭の男子だけが集まる」と言われてもとは思う。

都心アッパーミドル家庭の男子だけが集まることで、格差が固定化される恐れがある」との見方にも賛成できない。「東大に行けば裕福になる、そうでなければ裕福になれない」との前提を感じるが、本当にそうなのか。成績優秀な関西の学生が東大を目指さず京大に進む傾向が強まったとしても、そこから「格差が固定化」といった話につながりそうな気はしない。

偏ったクラスターの人間ばかりが集まると、発想が閉じてしまう」という「東大大学院情報学環の暦本純一教授」のコメントにも疑問を感じる。例えば北海道出身者と東京出身者はそんなに「クラスター」が違うものなのか。東京出身者10人の集団よりも、異なる都道府県出身者10人の方が「発想が閉じ」ないものなのか。個人的な経験で言えば、日本人の中にそれほど大きな差は感じない。

男女に関しては、2割弱も女性がいるのならば「偏ったクラスターの人間ばかりが集まる」状況とも言い難い。

記事の続きを見ていこう。

【エコノミストの記事】

東大はさまざまなバックグラウンドのある学生を集めるため、16年度入試から初の推薦入学制度を導入。推薦できるのは高校1校当たり男女各1人までとするなど、性別の偏りを回避する策を盛り込んだ。17年度からは、自宅からの通学が困難な女子学生を対象に、民間住居を100室程度用意し、月額3万円の家賃補助を支給している。それでも女子学生は増えない。

地方の優秀な女子学生が地元国立大学の医学部に進む傾向が高まっているとされる。瀬地山教授は「若者たちの地元志向が高まり、東大離れが進んでいるとしたら致し方ない。ただ、女子にその傾向が顕著なのは、女子がいまだに教育投資の対象とみられていない現実があるからではないか」と言う。



◎どういう理屈?

若者たちの地元志向が高まり、東大離れが進んでいるとしたら致し方ない。ただ、女子にその傾向が顕著なのは、女子がいまだに教育投資の対象とみられていない現実があるからではないか」という「瀬地山教授」のコメントも気になる。

女子」学生が自らの意思で「地元志向」を強めているのならば、それは「女子」の自由な選択の結果だ。なのになぜ「女子がいまだに教育投資の対象とみられていない現実がある」と見るのか謎だ。

周囲の意向によって「地方の優秀な女子学生が地元国立大学の医学部に進む傾向が高まっている」のならば、なおさら「女子がいまだに教育投資の対象とみられていない」と考える必要はない。「教育投資の対象とみられていない」のに、「女子学生」が「地元国立大学の医学部」へ進学できるだろうか。

さらに続きを見ていく。

【エコノミストの記事】

一方、「女子は東大そのものに魅力を感じていないという面もあるのでは」というのは、『ルポ東大女子』などの著書のある教育ジャーナリストのおおたとしまささんだ。「男子は競争社会のトップに立ちたいという意識が根強いが、女子はそんなブランドは必要とせず、シビアに何が学べるか、どんな学生生活を送れるかといった視点で大学を選んでいる」と指摘。「もっとわくわく感を作り、例えばお茶の水女子大と連携協定を結ぶ、といった斬新なことをする必要がある」と話す。


◎これまた謎な提案が…

もっとわくわく感を作り、例えばお茶の水女子大と連携協定を結ぶ、といった斬新なことをする必要がある」という「おおたとしまささん」のコメントも理解に苦しむ。「お茶の水女子大と連携協定を結ぶ」と東大に「わくわく感」が生まれるのか。

百歩譲って「わくわく感」が生まれたとして、それが「女子」学生の増加につながるのか。「地元国立大学の医学部」を目指す「女子」が「お茶の水女子大と連携協定を結ぶ」ぐらいのことで「わくわく感」を抱いて志望校を変えるものだろうか。

話は逸れるが「人材の偏りがイノベーション(技術革新)の阻害につながる」ので好ましくないと考えるのならば、「お茶の水女子大」はすぐに共学化すべきだ。男子学生0%だと「イノベーション(技術革新)の阻害」は東大の比ではない。

個人的には「人材の偏りがイノベーション(技術革新)の阻害につながる」かどうかは微妙だとは思うが…。


※今回取り上げた記事「東大女子 女子学生比率『2割』の壁~イノベーション阻害の要因にも
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200121/se1/00m/020/058000c


※記事の評価はC(平均的)

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