2022年6月7日火曜日

今も昔も同じでは? 日経 川上穣記者「一目均衡~『非財務』が決める優勝劣敗」

7日の日本経済新聞朝刊 投資情報面に川上穣記者が書いた「一目均衡~『非財務』が決める優勝劣敗」という記事は説得力がなかった。 「非財務」の重要性を説く記事を最近よく見るが、それは当たり前の話だ。そして可視化が難しいという問題がある。今回の記事でも、そこが引っかかった。後半を見てみよう。

夕暮れ時のうきは市

【日経の記事】

市場も人材戦略を巡る企業の変化に敏感になりつつある。「経営成果である財務報告にとどまらず、新たな価値創造に向けた企業の潜在力を市場が評価する大改革が起きる」。日本投資顧問業協会の大場昭義会長はこう話す。今の時代は変化が非連続で予測が困難だ。従来のように決算期ごとの一株あたり利益(EPS)にばかり注目しているようでは、企業の将来の優勝劣敗を見通すことはできない


◎そんなに「時代」は変わった?

今の時代は変化が非連続で予測が困難だ。従来のように決算期ごとの一株あたり利益(EPS)にばかり注目しているようでは、企業の将来の優勝劣敗を見通すことはできない」と川上記者は言う。いつと比較しているのか分からないが、そんなに大きな変化は感じない。

変化が非連続で予測が困難」な面は昔からあった。一方、今でも「変化」が「連続」的で「予測」しやすい分野はある。人口動態などだ。

企業の将来の優勝劣敗を見通すこと」は今も昔も難しい。「従来のように決算期ごとの一株あたり利益(EPS)にばかり注目しているようでは」と川上記者は言うが「従来」も「EPS」ばかりが「注目」されてきたとは思えない。

経営者の発言や不祥事などの「非財務」情報も「企業の将来の優勝劣敗を見通す」上では重要だったはずだ。「時代は変わった」と言いたいがために無理が生じていないか。

続きを見ていこう。


【日経の記事】

「人的資本を考慮に入れると、企業価値は想定より増減どちらに振れるのか」。みさき投資の中神康議社長は、こんな問いを立てるようになった。自己資本利益率(ROE)など金融資本に着目してきたが、社員のやる気や働きがいが長期の企業価値を左右するとの確信を抱くようになったからだ。

好例が中神氏が社外取締役を務める丸井グループだ。10年以上かけて「手挙げ文化」を浸透させてきた。社員が職種変更や社内プロジェクトの参加を自ら決めるようになり、企業価値の向上につなげてきた。


◎どうやって計算した?

好例が中神氏が社外取締役を務める丸井グループだ」と川上記者は言うが「人的資本を考慮に入れ」た「企業価値」の計算方法がまず分からない。その計算方法があったとしても「丸井グループ」の「手挙げ文化」がどの程度「企業価値の向上」につながったのか、どうやって計算するのか。

その肝心なところに触れていない。そして漠然とした結論を導いてしまう。

記事の終盤を見ていこう。


【日経の記事】

一方で人的投資は損益計算上は費用として減益要因になる面がある。だからこそ「研究開発のように長期の価値を生む源泉として投資家が経営陣を後押しする必要がある」。中神氏はこう強調する。

重要なのは経営陣と株主の個別対話だろう。業績を語る最高財務責任者(CFO)だけではもはや十分ではない。CHROが株主と自ら対話し、人事戦略と企業の成長戦略のひも付けを語るべきだ。無形資産の中核である人的資本の価値に気づかないと、企業も投資家も生き残れない時代が来ている


◎どうやって「気づく」?

結局、具体性に欠ける話で終わっている。「無形資産の中核である人的資本の価値に気づかないと、企業も投資家も生き残れない時代が来ている」と川上記者は言うが、どうやって「人的資本の価値」を判断するのか。

CHROが株主と自ら対話」すれば分かるものなのか。だったら最初から「CHRO」の説明をホームページにでも載せてくれれば話が早い。

人的資本の価値」が大事だとしても数値化は難しい。可能だとしても信頼性には欠けるだろう。

時代」はそんなに変わっていない。「人的資本の価値」は重要だが、それを評価する有効な手法はない。そういうことではないか。

「違う」と川上記者が思うのならば有効な評価方法をぜひ教えてほしい。


※今回取り上げた記事「一目均衡~『非財務』が決める優勝劣敗」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220607&ng=DGKKZO61484190W2A600C2DTA000


※記事の評価はC(平均的)。川上穣記者への評価はCを維持する。川上記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経 川上穣記者「一目均衡~AI投資は万能か」への注文https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/03/blog-post_6.html

読む価値を感じない日経 川上穣記者の「スクランブル」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post_8.html

積み立て型NISAで業界側に立つ日経 川上穣記者
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/blog-post_26.html

相変わらず金融業界に優しすぎる日経 川上穣記者
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_13.html

セゾン投信の解約しにくさを「顧客本位」と日経は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_18.html

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