2022年2月5日土曜日

感染ピークアウト「追加接種の進展で明暗」が強引すぎる日経の記事

日本経済新聞の竹内弘文記者、武田健太郎記者、宗像藍子記者には「新型コロナウイルスワクチンの追加接種に大きな効果があると本気で信じているのか」と聞いてみたい。5日の朝刊総合1面に3人が書いた「感染、過半の国で減少~欧米で峠越す/アジアは増加 新型コロナ、追加接種の進展で明暗」という記事の説明があまりに強引だったからだ。

夕暮れ時の筑後川

一部を見ていこう。

【日経の記事】

新型コロナウイルスの感染者数が世界で峠を越えつつある。新規感染者は2カ月ぶりに過半の国・地域で前の週より減った。欧米で変異型「オミクロン型」の感染が急減したためだが、日本を含むアジアや中東はなお増加する。明暗をわけた一因とみられるのがワクチンの追加接種の進展だ

米ジョンズ・ホプキンス大のデータを日本経済新聞が分析した。新規感染者が1週間前より増えた国・地域は、1月31日時点で94となり、減った国・地域(111)を下回った。デルタ型の感染拡大が一服した2021年8月も「増加国」が「減少国」を下回ったが、オミクロン型の流行で21年12月に逆転していた。

英国は足元で1日の感染者数が10万人程度と1月上旬のピーク時の半分以下だ。人口の大半を占めるイングランド地方では1月27日から屋内のマスク着用義務を撤廃した。イベント参加時のワクチン証明提示義務もなくなり、3月には感染者の隔離措置すらなくす。

米国でも1月上旬をピークに新規感染者は減少傾向。東海岸各州で新規感染が急速に減り、国全体の数を押し下げた。フランスやスペインもすでに減少に転じた。

対照的に日本は新規感染者が10万人を超えてなお増える。イラクは1月上旬まで数百人だったが、足元は8千人前後まで急増した。ロシアも新規感染者数が2日に14万人を突破し、1カ月間で約8倍に膨らんだ。

オミクロン型の初確認から感染ピークアウトまでの期間とワクチンの追加接種率を分析したところ、追加接種率が56%と最高水準の英国はわずか38日間でピークアウトした。45%のフィンランドは37日間、48%のフランスは51日間でそれぞれピークアウトした。

一方、日本の追加接種率は5%と先進国で最低水準。オミクロン型の初確認から66日間たつがピークアウトしていない。7%のロシアも約60日が経過してもまだピークに達しない。イラクもワクチン接種を終えた人の比率が15%にとどまる。


◎今度はピークアウトを早める効果?

当初、ワクチンが開発されて多くの人が接種すれば集団免疫を獲得してコロナ禍は終わると言われていた。しかし、そうはならなかった。その後、「重症化予防」に重点を置いてワクチンの効果を説明するケースが増えたが「オミクロン型」は元々、重症化率が低い。そして追加接種を進めた国でも感染急拡大が起きた。

普通に考えれば「ワクチンに大した効果はなかった」と結論付けられそうだが、日経はワクチン推しを続けてきたせいか諦め切れないようだ。今回の記事では「ピークアウト」を早める効果があると打ち出している。

英国は足元で1日の感染者数が10万人程度と1月上旬のピーク時の半分以下だ」と書いているので「ピーク時」は20万人以上だったはずだ。「日本は新規感染者が10万人を超え」た程度。「英国」の人口は日本の半分なので、日本に置き換えれば「ピーク時」に40万人レベルまで増えたことになる。

追加接種率が56%と最高水準の英国はわずか38日間でピークアウトした」と言うが「追加接種」に「感染者数」を抑える効果があるのならば、英国でこれほどの感染拡大をなぜ許したのか。「追加接種」に「感染者数」を抑える効果はないか極めて限定的と見るのが自然だ。

記事に付けた表では「追加接種率が高い国はピークアウトも早い」と言い切っているが、それほど明確な相関関係は感じられない。その辺りは筆者らも感じているのだろう。記事は以下のように続く。


【日経の記事】

イスラエルやシンガポールのように追加接種率が5割超でもピークアウトまで時間がかかる国もあり、追加接種率だけですべてを説明できない。ただ、イスラエルの直近の死亡率は0.15%と低く、シンガポールも感染者の99%超が無症状あるいは軽症という。


◎言い訳はしているが…

追加接種率だけですべてを説明できない」と言い訳しているが「追加接種率」で一部が「説明」できているとも思えない。なのに「イスラエルの直近の死亡率は0.15%と低く、シンガポールも感染者の99%超が無症状あるいは軽症という」とさらに苦しい言い訳が続く。

グラフを見ると、日本の「直近の死亡率」は0.12%と「イスラエル」を下回る。それでも「イスラエル」の低い「死亡率」は「追加接種」のおかげと見るのか。

1月30日付の日経の記事では「東京大学の仲田泰祐准教授ら」が「東京都の重症者の定義で試算したところ、2021年12月半ばからの感染拡大の『第6波』を巡り、現在の重症化率は0.03%となった」と伝えていた。「シンガポールも感染者の99%超が無症状あるいは軽症」と今回の記事で書いているが、それは日本も同じだ。

日本の追加接種率は5%と先進国で最低水準」なのだから「重症化率」の低さを「追加接種」で説明するのも苦しい。「オミクロン型」に関しては「死亡率」や「重症化率」が元々非常に低いため、「追加接種率」がどうであろうと「死亡率」や「重症化率」は低くなると見るのが自然だ。

高齢者などリスクの高い人を除けば「追加接種」に関してはリスクを上回る利益が見込めないと言える。3人の記者も何となく分かっているはずだ。日経全体のワクチン推しの流れに逆らえないのかもしれないが、本当に日本でも「追加接種」を推進すべきなのか。よく考えて記事を書いてほしい。


※今回取り上げた記事「感染、過半の国で減少~欧米で峠越す/アジアは増加 新型コロナ、追加接種の進展で明暗

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220205&ng=DGKKZO79897680V00C22A2EA1000


※記事の評価はD(問題あり)。竹内弘文記者への評価は暫定C(平均的)から暫定Dへ引き下げる。武田健太郎記者への評価はCからDへ引き下げる。宗像藍子記者への評価は暫定でDとする。


※竹内記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日本はずっと「感染封じ込め」…と見えるのにそうは書かない日経の記事https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/04/blog-post_27.html

日本は「気がつけば格付け先進国」? 日経 竹内弘文記者に問うhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2017/12/blog-post_24.html

本当に「世界で急減」? 日経1面「出生数が世界で急減」の問題点https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/04/1_10.html


※武田記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「ENEOS難局 シェルに重なる」と感じられない日経 武田健太郎記者の記事https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/07/eneos.html

デサントは「巨大市場に挑まない」? 日経ビジネスの騙し
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/08/blog-post_11.html

「人生100年」に無理がある日経ビジネス「幸せ100歳達成法」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/02/100100.html

年金支給開始85歳でも「幸せ」? 日経ビジネス「幸せ100歳達成法」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/02/85-100.html

今世紀中は高齢者が急増? 日経ビジネス「幸せ100歳達成法」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/02/100_7.html

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