2022年2月27日日曜日

大石格編集委員の「辞めさせ方」を問いたくなる日経「風見鶏~閣僚の上手な辞めさせ方」

日本経済新聞の大石格編集委員が相変わらず苦しい。書き手としての能力が高くない上に、やる気も感じられない。27日の朝刊総合3面に載った「風見鶏~閣僚の上手な辞めさせ方」では、長々と昔話をした後に、少しだけ今の政局に絡めて終わり。しかも、絡めた部分がまた苦しい。

筑後川

中身を見ながら具体的に指摘したい。

【日経の記事】

組閣のときによく耳にする単語のひとつに「入閣待機組」がある。閣僚ポストを得ようと、首相や派閥の領袖への売り込みに奔走する国会議員のことだ。

政治記者になった中曽根内閣のころは「待望組」と呼ぶことが多かった。こちらは「大した能力もないのに高望みしている」と若干からかう語感があった。

いずれが妥当な呼び方かはさておき、大臣病の患者が多いのは、昔もいまもあまり変わらない。


◎長い前置きは何のため?

かなり長い導入だ。この後に「入閣待機組」や「大臣病の患者」の問題をしっかり論じるならば、まだ許せる。しかし、そうはならない。続きを見ていこう。


【日経の記事】

「首相の力は衆院を解散をすればするほど増すが、内閣改造をすればするほど弱まる」。こんな永田町格言がある。ポストを得られなかった議員の恨みはそれほど深いということだ。

人事は起用すれば終わりではない。何かあれば辞めさせなければならない。これがさらに難儀である。

朝刊でスキャンダルを報道された閣僚が夕方までに辞表を出した例はあまり記憶にない。延命できないかと逃げ回り、言い訳し、泣きつき、とのドタバタ劇を嫌というほどみてきた。

解決策のひとつが内閣改造である。不祥事で辞任となれば、その議員の政治生命が終わることもある。しばらくかばい、時期をみて一斉に入れ替えることで「定期異動」と言いくるめる。役所や民間企業でもよく聞く話だ。

この手法を編み出したのは自民党の草創期に首相を務めた岸信介とされる。ワンマン首相だった吉田茂は意に沿わない閣僚がいると即座にクビを切った。能力本位は正しいとはいえ、人事のもつれなどで子分に裏切られたことが織田信長なみによくあった。岸はそれを反面教師にした。


◎なかなか本題に入らない…

入閣待機組」や「大臣病の患者」の問題は掘り下げないらしい。話は「不祥事で辞任」へと移ってきた。しかし、これも本題ではない。

ようやくこの後で本題らしき話に移っていく。


【日経の記事】

その岸でも難渋したであろう出来事が1999年にあった。行政改革を掲げる自由党と連立を組むため、当時の小渕恵三首相が20人の閣僚枠を2つ減らすことに同意したのだ。

自由党に1枠を渡したので、現職閣僚を3人も辞めさせなくてはならなくなった。不祥事でも働きが悪いのでもないのにだ。当時の野中広務官房長官は「自民党内がごたついて政局になる」と心配した。

政界が固唾をのむなか、選ばれたのは5人いた小渕派出身者のうち3人。野中氏の盟友だった西田司自治相は「俺が降りる」と言いに来たそうだ。

同派の前身の田中派には「かごに乗る人、担ぐ人、そのまたわらじを編む人」という言い回しがあった。他人のための下働きをいとうなという意味で、西田氏らのその通りの振る舞いはいまも語り草だ。

3人も辞めさせるのは大変だったが、多くてよかった面もあった。つらいのは君だけではないと納得させることができた。


◎昔話が長すぎる

今回の問題は、簡単に言えば「『閣僚枠』が減るときの適切な対処法とは?」だ。そのために、どうしても昔話をしたいのならば、上記の「小渕恵三首相」時代の件だけでいい。行数稼ぎに難渋しているのは分かるが、要らない昔話が多すぎる。7割以上を昔話に費やしている。昔話をしたい年齢でもあるし、新たな取材なしで書けるのも魅力なのだろう。

最後に、ようやく今の話へ移る。

【日経の記事】

現在の閣僚数は内閣法で定めた17人に、別枠で設けた復興相、五輪相、万博相を加えた20人である。このうち五輪相は3月いっぱいで設置期限が切れる。通常国会のさなかという異例の時期に、閣僚のひとりを去らせねばならない

ふつうに考えれば、現職の五輪相である堀内詔子氏だが、ことはそれだけでは済まない。ワクチン相もしているからだ。追加接種が政治課題のさなかに、担当がまた交代するのか。新型コロナウイルス対策を軽んじたとのそしりを、岸田文雄首相は免れまい。

堀内氏の国会答弁があやふやだったことも辞めさせにくくする。「閣僚枠が減るので仕方なく」といくら説明しても、世間は更迭と受け止めかねない

首相は昨年秋にいまの布陣を決めた時点で、閣僚の辞めさせ方をどう思い描いていたのか。ポストは配るときよりも取り上げるときの方が手腕が必要になる。


◎「別枠」はもう作れない?

いくつか疑問が湧く。まず「閣僚のひとりを去らせねばならない」のかどうかだ。「五輪相は3月いっぱいで設置期限が切れる」のならば「ワクチン相」を「五輪相」に代わる「別枠」として「設置」すれば済むのではないか。できない事情があるのならば説明すべきだ。

そもそも「堀内詔子氏」の「ワクチン相」続投を国民の多くが望んでいるのかという問題がある。望んでいない場合、辞めさせたとしても問題は小さい。「担当がまた交代するのか。新型コロナウイルス対策を軽んじた」と批判する人もいるかもしれないが、基本的には内閣支持率の上昇要因と見るべきだ。

この場合「世間」が「更迭と受け止め」るのは、むしろ好ましい。「国会答弁があやふやだった」頼りない大臣を「更迭」させたとして政権にはプラスになるはずだ。

国民の多くが「堀内詔子氏」の「ワクチン相」続投を望むのであれば「辞めさせ方」が難しくなるのは確かだ。しかし「堀内詔子氏」に対する国民の支持の度合いに大石氏は言及していない。そこが辛い。

さらに気になるのが「堀内詔子氏」の「上手な辞めさせ方」について大石氏自身の見解を明らかにしていない点だ。自分にも「上手な辞めさせ方」が分からないのならば、長すぎる昔話まで持ち出して今回のテーマを選ぶ気が知れない。

ポストは配るときよりも取り上げるときの方が手腕が必要になる」のだから、長い政治取材の経験を生かして「上手な辞めさせ方」を大石氏が伝授すればいい。それは無理なのか。だとしたら、日経としては大石氏の「上手な辞めさせ方」を考えるべき時だ。


※今回取り上げた記事「風見鶏~閣僚の上手な辞めさせ方

https://www.blogger.com/blog/post/edit/6389495891574633352/4866561329638391958


※記事の評価はD(問題あり)。大石格編集委員への評価もDを維持する。大石編集委員については以下の投稿も参照してほしい。


日経 大石格編集委員は東アジア情勢が分かってる?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_12.html

ミサイル数発で「おしまい」と日経 大石格編集委員は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_86.html

日経 大石格編集委員は「パンドラの箱」を誤解?(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_15.html

日経 大石格編集委員は「パンドラの箱」を誤解?(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_16.html

日経 大石格編集委員は「パンドラの箱」を誤解?(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_89.html

どこに「オバマの中国観」?日経 大石格編集委員「風見鶏」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/08/blog-post_22.html

「日米同盟が大事」の根拠を示せず 日経 大石格編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_41.html

大石格編集委員の限界感じる日経「対決型政治に限界」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_70.html

「リベラルとは何か」をまともに論じない日経 大石格編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/blog-post_30.html

具体策なしに「現実主義」を求める日経 大石格編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/12/blog-post_4.html

自慢話の前に日経 大石格編集委員が「風見鶏」で書くべきこと
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/04/blog-post_40.html

米国出張はほぼ物見遊山? 日経 大石格編集委員「検証・中間選挙」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/blog-post_18.html

自衛隊の人手不足に関する分析が雑な日経 大石格編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_27.html

「給付金申請しない」宣言の底意が透ける日経 大石格編集委員「風見鶏」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/05/blog-post_74.html

「イタリア改憲の真の狙い」が結局は謎な日経 大石格上級論説委員の「中外時評」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/blog-post_7.html

菅政権との対比が苦しい日経 大石格編集委員「風見鶏~中曽根戦略ふたたび?」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/blog-post_18.html

「別人格」を疑う余地ある? 日経 大石格上級論説委員「中外時評~政治家は身内にこそ厳しく」

https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/03/blog-post_17.html

日経「風見鶏~基本法花盛りの功罪」に感じる大石格編集委員の罪https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/07/blog-post_11.html

「米『お節介外交』は終わるのか」に答えを出さない日経 大石格上級論説委員https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/09/blog-post_8.html

0 件のコメント:

コメントを投稿