2020年10月27日火曜日

根拠なしに「多様性」の大切さを説いても…日経 村山恵一氏「Deep Insight」

27日の日本経済新聞朝刊オピニオン面に村山恵一氏(肩書は本社コメンテーター)が書いた「Deep Insight~グーグルは『民主的』なのか」という記事は、まともな根拠なしに「多様性」や「開放性」が重要だと訴えているのが引っかかった。

九州佐賀国際空港※写真と本文は無関係です

問題のくだりを見ていこう。


【日経の記事】

いまや世界の半数以上がネットを使い、人々の行動や思考にテクノロジーが深く影響する。現代のテック企業がもつ力は、かつてパソコン用基本ソフトを牛耳った米マイクロソフトの比ではない。

だから斬新なものをつくる創造力だけでは足りない。テクノロジーが社会にもたらす副作用やリスクに気づく想像力がいる。さまざまな価値観を解するオープンな企業文化が大切になる

グーグルはどうだろうか。

まず多様性。世界の技術系従業員の76%を男性が占める。米国では白人とアジア系の技術者が圧倒的で、黒人は2.4%、ラテン系は4.8%にとどまる。グーグルの利用者は世界中にいる。「それに見合った人員構成にしたい」と同社は訴えるが、道半ばだ。


多様性」を求める根拠は?

テック企業」には「テクノロジーが社会にもたらす副作用やリスクに気づく想像力がいる」としよう。だが、そのために「多様性」が重要かどうかは何とも言えない。「多様性」によって「副作用やリスクに気づく想像力」が高まるという統計的な根拠が欲しい。

そもそもなぜ「技術系従業員」で見るのか。経営方針を決めるのは経営陣なので「多様性」の確保が重要だとしても経営陣限定で十分な気もする。

従業員」が問題を指摘してくる場合もあるとは思う。だとしたら、なぜ「技術系従業員」に限るのか。「副作用やリスクに気づく想像力」を有している非「技術系」の「従業員」もいるはずだ。

続きを見ていく。


【日経の記事】

次に開放性。グーグル親会社のアルファベットは創業者であるラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン両氏が特殊な株で議決権の51%を握る(2019年末時点)。「部外者がグーグルを乗っ取ったり、影響を与えたりするのが困難な構造」は04年の上場時に築かれた。

この体制が大胆な意思決定と驚異的な成長を可能にしたのは確かだ。しかしサービスが公共性を帯びるほど社会に浸透してもなお、ごく少数の意見で重要事項が決まる経営がずっと最適なのかはわからない。2人が公の場で考えを語る機会が減ったのも気になる。

グーグルの従業員だけが豊かになり、自分たちは取り残された。そう怒る地域住民が同社の通勤バスを「格差の象徴」と取り囲んだこともある。セクハラで同社の幹部らが大量解雇された一件では、明るい企業イメージとの落差に驚いた人がたくさんいただろう。


◎「わからない」なら…

この体制が大胆な意思決定と驚異的な成長を可能にしたのは確か」だと村山氏は言い切る。そして「ごく少数の意見で重要事項が決まる経営がずっと最適なのかはわからない」と見ている。ここから「開放性」を高めるべきとの結論は見出せない。何の根拠も示していないし、村山氏自身も「ごく少数の意見で重要事項が決まる経営がずっと最適なの」かもしれないと考えているのだから。

さらに見ていく。最も引っかかったのが以下のくだりだ。


【日経の記事】

社会とのズレを感じさせるのはグーグルだけではない。データやアルゴリズムを駆使して効率や規模を追う技術者気質の単一文化がしみつき、自社のテクノロジーが引き起こす問題をなかなか察知できないテック企業が多い――。業界内から聞こえてくる声だ。

例えば、SNS(交流サイト)でヘイトスピーチや誹謗(ひぼう)中傷が広がる問題。男性中心のサービス開発ではなく、女性の意見が重視される組織なら、事態が深刻になる前に手を打てたのではないか。そういう見方がある


◎誰の「見方」?

女性の意見が重視される組織なら、事態が深刻になる前に手を打てたのではないか。そういう見方がある」という説明が引っかかる。まず「テック企業」は「女性の意見が重視される組織」ではないのか。記事に付けたグラフによると、フェイスブックの技術職の24%は「女性」だ。彼女らの「意見」を軽視して「サービス開発」を進めてきたと言える根拠を村山氏は示していない。

女性の意見が重視される組織なら、事態が深刻になる前に手を打てたのではないか」という見立てにもまともな根拠はない。「そういう見方がある」とは書いているが、誰の「見方」かすら分からない。仮に著名な学者が「女性の意見が重視される組織なら、事態が深刻になる前に手を打てた」と言っているとしても、それだけでは苦しい。大切なのはエビデンスだ。

多様性」を高めることが組織にとって望ましいとは限らない。それは少し考えれば分かる。例えば男女混合のサッカーワールドカップを開催するとしよう。選手の男女比は各国が自由に決められる。

この場合「多様性」を重視して男女半々の選手構成で大会に臨む国と、実力重視で選び選手全員が男性の国では、どちらが勝利の可能性を高めているだろうか。


※今回取り上げた記事「Deep Insight~グーグルは『民主的』なのか」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201027&ng=DGKKZO65471560W0A021C2TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。村山恵一氏への評価もDを維持する。村山氏については以下の投稿も参照してほしい。


「日本の部長、データを学べ」に説得力欠く日経 村山恵一氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/blog-post_16.html

日経 村山恵一氏の限界見える「Deep Insight~注目 シェア人類の突破力」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/deep-insight_6.html

「ネットと民主主義 深まる相克」に説得力欠く日経 村山恵一氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/05/blog-post_30.html

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