2020年10月8日木曜日

「『増資は売り』変化の芽」に疑問残る日経 須賀恭平記者の「スクランブル」

 7日の日本経済新聞朝刊マーケット総合1面に「スクランブル~『増資は売り』変化の芽 成長投資へ資金調達、評価」という記事を書いた須賀恭平記者は「株式市場で公募増資を発表した企業への株価反応が変わってきた」と見ているようだが「なるほど」とは思えなかった。

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       ※写真と本文は無関係です

当該部分を見ていこう。


【日経の記事】

「『公募増資は売り』はセオリーだが、最近はその通りではないかもしれない」。岩井コスモ証券の川崎朝映シニアアナリストは話す。6日の東京株式市場で日経平均株価は前日比121円(0.5%)高の2万3433円で取引を終えた。教育サービス事業を手掛けるEduLab(エデュラボ)は11%上昇し上場来高値、オープンハウスも一時だが上場来高値をつけた。いずれも夏以降に公募増資を発表した銘柄だ。

エデュラボは9月30日に公募増資などで最大50億円を調達すると発表。最大で約7%の希薄化が起きる。株価は翌2日に下落したが、6日終値までに10%高となった。足元で公募増資を決めたユーザベースやメドレーなど多くが発表後から株価が上昇。岩井コスモの川崎氏は「在宅勤務やオンライン診療などコロナをテーマにした銘柄は個人投資家が成長ストーリーを理解しやすい」と指摘する。

公募増資に伴う1株利益の希薄化に投資家が警戒感を強めたのはリーマン・ショック以降とされる。日立製作所や東芝などが大規模な増資を実施し、中には希薄化率が2~3割に及ぶものも珍しくなかった。財務を健全化する守りの調達という面が強く、「増資は売り」とのアレルギーを投資家に植えつけた。


◎「発表直後」で見ないと…

代表例として挙げた「エデュラボ」は「公募増資」を発表した後の最初の営業日に「下落した」らしい。だとしたら「増資は売り」が当てはまると見なすべきだ。

公表された材料は株価にすぐ織り込まれる。その時間をどう見るかは難しいが、1営業日あれば十分だろう。その後は「公募増資」以外の要因で株価が変動していると考えた方がいい。

他の銘柄に関しては「公募増資」発表直後の株価がどうだったのか触れていない。それで「株式市場で公募増資を発表した企業への株価反応が変わってきた」と言われても困る。

増資は売り」が「増資を発表した企業の株価は10日以内に2割以上下がる」とか「1年以上にわたって発表前の株価を超えない」といったことを言っているのならば、記事中で明示してほしい。

付け加えると「2008年のリーマン・ショック以降、1株利益の希薄化懸念などから『公募増資は売り』が定説」という説明も引っかかる。理論的に言えば「増資」は株価には中立だ。「公募増資に伴う1株利益の希薄化に投資家が警戒感を強めたのはリーマン・ショック以降とされる」のならば「定説」と言うより「経験則」だ。


※今回取り上げた記事「スクランブル~『増資は売り』変化の芽 成長投資へ資金調達、評価

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201007&ng=DGKKZO64681720W0A001C2EN1000


※記事の評価はD(問題あり)。須賀恭平記者への評価はDを据え置く。須賀記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

疑問だらけの日経「本田圭佑選手、VBファンド設立」http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_19.html

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