2020年10月16日金曜日

「貪欲過ぎるグルメサイト」批判が的外れな日経ビジネス鷲尾龍一記者

日経ビジネス10月19日号に載った「早くも制度見直しを迫られたGo Toイート~『錬金術』が暴いた利益相反」という記事は強引な批判が気になった。筆者の鷲尾龍一記者は「貪欲過ぎるグルメサイトが、外食店と消費者に見放される日が近づいている」と結んでおり「グルメサイト」に矛先を向けている。これが的外れだと感じた。記事の後半を見て、この問題を考えたい。

彼岸花と耳納連山(久留米市)
   ※写真と本文は無関係です

【日経ビジネスの記事】

そもそもGo Toイート事業に対しては開始前から、外食の支援よりグルメサイトを利すると批判の声が上がっていた。大手グルメサイトが外食店から得る手数料には、サイト掲載に必要な基本料金と、予約客1人当たり50~200円の送客手数料がある。Go Toイート期間中は、基本掲載料無料が事業参加の条件とされたが、送客手数料の徴収は農水省が認めた。

外食店で得たポイントは、別の外食店でも使えるため、グルメサイトの回遊性を高める効果は大きい。一方、「Go Toイート経由の来店客は、外食店が従来想定してきたお客さんとは違う」(外食業界に詳しい石﨑冬貴弁護士)。石﨑弁護士が運営する外食店は、これまで地元の家族連れの利用が多かったが、10月以降は「単価が低く、ネットで予約する1人客が急増した」。予約やポイント対応で従業員の手間は増えたが、利幅は小さくなったうえ、リピーターになってくれる見込みは薄い。

外食店にとっては、グルメサイト経由で来店した客が常連に育ち、サイトを経由せずに来てくれるようになった方がコストは下がる。逆にグルメサイトは常に使い続けてほしいので、Go Toイート以前から、利用者向けのポイント還元に力を入れている。その原資は外食店からの手数料だ。両者の間には根源的に利益相反が内在している

大手グルメサイトからすれば、外食店での支払額がいくらでも、1人分の送客手数料は不変。グルメサイトに寄り添い過ぎといわれるGo Toイート事業が、錬金術の隙を見逃したのも、当然の成り行きと言える。

皮肉にも、今回の騒動で、グルメサイトが外食店の経営を必ずしも助ける存在でないことが広く知られることになった。新型コロナ禍で「お気に入りの外食店を支援したい」という消費者は増えている。貪欲過ぎるグルメサイトが、外食店と消費者に見放される日が近づいている


◎どこが「貪欲過ぎる」?

貪欲過ぎるグルメサイトが、外食店と消費者に見放される日が近づいている」と鷲尾記者は結論付けているが、なぜ「貪欲過ぎる」と言えるのか。

Go Toイート事業」では「サイト掲載に必要な基本料金」を「無料」としている。となると「予約客1人当たり50~200円の送客手数料」が高過ぎるのか。しかし、その根拠を鷲尾記者は示していない。「グルメサイト」は慈善事業ではない。「50~200円の送客手数料」をどう見直せば「貪欲過ぎる」と言われずに済むのか。そこは触れてほしい。

鷲尾記者によると「グルメサイト」は「利用者向けのポイント還元に力を入れて」いて「その原資は外食店からの手数料」らしい。だとすれば「50~200円の送客手数料」のかなりの部分は利用者に「還元」される。それでも「貪欲過ぎる」のか。「還元」された「ポイント」を使って「外食店」を利用すれば、「外食店」の利益につながる可能性もある。

百歩譲って「Go Toイート事業」が「外食の支援よりグルメサイトを利する」としよう。それでも批判されるべきは「グルメサイト」ではなく制度設計者だ。「錬金術」に関しては「席だけのネット予約をやめてコースに限定するなどの対策」を「外食店」側が最初から打つこともできた。なのになぜ「貪欲過ぎるグルメサイトが、外食店と消費者に見放される日が近づいている」という話になるのか。理解に苦しむ。

付け加えると「『錬金術』が暴いた利益相反」との分析にも疑問を感じた。「グルメサイト」は「手数料」収入を増やしたいし、「外食店」は「手数料」の負担が小さい方が助かる。当たり前の話だ。それを「利益相反」と呼ぶならば「利益相反」は自明だ。「『錬金術』が暴いた」訳ではない。

グルメサイトが外食店の経営を必ずしも助ける存在でない」のは確かだ。「手数料」に見合った集客効果がない場合「外食店の経営」はかえって苦しくなる。その場合「グルメサイト」への掲載を取り止めればいい。「手数料」を支払う価値があると判断した「外食店」だけが掲載しているのだから「グルメサイト」と「外食店」の関係を単純に「利益相反」と見るのは違う気がする。


※今回取り上げた記事「早くも制度見直しを迫られたGo Toイート~『錬金術』が暴いた利益相反

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00786/?P=1


※記事の評価はD(問題あり)。鷲尾龍一記者への評価も暫定でDとする。

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