2020年10月18日日曜日

菅政権との対比が苦しい日経 大石格編集委員「風見鶏~中曽根戦略ふたたび?」

18日の日本経済新聞朝刊総合面に載った「風見鶏~中曽根戦略ふたたび?」という記事は苦しかった。筆者の大石格編集委員は「中曽根康弘元首相の葬儀にお邪魔してきた」ので、これに絡めて記事を仕上げられないかと考えたのだろう。そこで「いまの政治情勢と似ていなくもない」と対比を試みている。しかし、あまり似ていない。

彼岸花(久留米市)※写真と本文は無関係

まずは「昔話」の部分を見ていこう。


【日経の記事】

新型コロナウイルスの流行で、半年延期された中曽根康弘元首相の葬儀にお邪魔してきた。永田町生活を中曽根内閣の首相番記者で始めたので、感慨深いものがあった。

会場に向かう道すがらも「いまの政治家と比べて、存在感があった」といった話し声を耳にした。

その中曽根内閣の足跡を振り返ると、発足当時の評判は散々だった。角福戦争のさなか、1979年の四十日抗争では福田赳夫氏に味方したのに、翌80年のハプニング解散では田中角栄氏の側についた。

「風見鶏」と皮肉られた寝返り劇によって、首相になれたのだが、女房役の官房長官を田中派から起用したのには、身内の中曽根派の面々まであっけにとられた。「田中曽根内閣」「直角内閣」といった見出しが紙面に躍った。

首相退任後に「批判ばかりされて、悔しくなかったですか」と尋ねたことがある。「なってしまえばこっちのもの」との答えが返ってきた。

なってしまった中曽根氏は自立へと動き出した。ひとつは、政治家としての悲願であった憲法改正を封印し、もっと身近な改革に取り組んだことだ。国鉄の民営化はスト続きにうんざりしていた国民に歓迎され、内閣支持率は徐々に持ち直した。これを「行革グライダー」と称した。

ふたつめが、世代交代である。田中派の領袖だった二階堂進氏よりも格下の金丸信氏や竹下登氏を登用した。実力を蓄えた金丸、竹下両氏はクーデター的に田中派を乗っ取り、中曽根内閣の支柱となった。

中曽根氏はほかの派閥にも手を突っ込んだ安倍晋太郎氏や宮沢喜一氏をポストに就け、領袖だった福田氏や鈴木善幸氏の権勢をそいだ。竹下、安倍、宮沢3氏をメディアはニューリーダーと呼んだ。


◎中曽根氏が「世代交代」を進めた?

まず「世代交代」を進めたのが「中曽根氏」のような書き方が引っかかった。「安倍晋太郎氏や宮沢喜一氏をポストに就け、領袖だった福田氏や鈴木善幸氏の権勢をそいだ」と書いているが、「安倍晋太郎氏や宮沢喜一氏」は既に派閥の後継者と目されていたはずだ。「中曽根氏はほかの派閥にも手を突っ込んだ」と言うと、派閥の意向に反して大臣を選んでいた印象を受ける。しかし当時は派閥の力が強く、その意向を無視した人事は難しかったのではないか。

記事の続きを見ていこう。


【日経の記事】

以上は昔話だが、いまの政治情勢と似ていなくもない。菅義偉首相には無派閥議員を束ねた「隠れ菅派」的な応援団がいるが、最大派閥に支えられていた安倍晋三前首相ほどの党内基盤はない。

まずは携帯電話料金の引き下げといった家計に直結する施策に取り組み、世論を味方に引き寄せる。発想が中曽根流である。

ふたつめはどうか。安倍内閣が長く続いたことで、自民党の権力構造はこのところ大変わりせずにきた。領袖になっていちばん長いのは麻生太郎副総理・財務相で、2006年から務めている。

「省庁の縦割り打破」を掲げた菅首相は、要の行革担当に麻生派の河野太郎氏を据えた。麻生派の前身である河野グループを率いた河野洋平元衆院議長の長男である。

同派には他派や無派閥からの合流組がかなりいる。早急な世代交代は派内の秩序を乱し、麻生氏の権勢を揺るがしかねない。そこまで読み切っての厚遇なのだろうか

他派でも波風が立っている。毎週木曜にある竹下派の総会では、竹下亘会長や茂木敏充会長代行(外相)らが最前列に陣取る。加藤勝信氏は真ん中右端あたりが定位置だった。官房長官の在任中は出席しないだろうが、「もし来たらどこに座らせるのか」と話題になっているそうだ。

最大派閥の細田派は後継候補が定まっていない。自民党政調会長になった下村博文氏、閣僚に再任された西村康稔氏や萩生田光一氏ら多士済々だ。菅首相の立ち振る舞いが内紛を誘発するかもしれない

こんな政局模様を中曽根氏は空の上からどう見ているだろうか。そんなことを考えながら手を合わせた。


◎菅政権は「世代交代」に積極的?

以上は昔話だが、いまの政治情勢と似ていなくもない」という書き方からは「昔話に終始してはダメ。今の政治状況と絡めなければ…」との意思を感じる。これはいいことだ。「昔話」が多過ぎるのは「風見鶏」の問題点で、今とほとんど絡めない記事も珍しくない。今回も「昔話」は長いが、しっかり今と関連させていれば文句はない。ただ、そうはなっていない。「ふたつめ」の「世代交代」が辛い。

麻生派の河野太郎氏」に関して「厚遇」としているが、外相、防衛相に続いての「行革担当」はそんなに「厚遇」なのか。しかも「麻生太郎副総理・財務相」は留任。「早急な世代交代は派内の秩序を乱し、麻生氏の権勢を揺るがしかねない」と言うものの、そもそも「早急な世代交代」に見えない。

竹下派」も同じだ。「官房長官の在任中は出席しないだろうが、『もし来たらどこに座らせるのか』と話題になっているそうだ」という小さな話が出てくるだけで「世代交代」が目立って進んでいる感じはない。

細田派」に関してはさらに苦しい。「菅首相の立ち振る舞いが内紛を誘発するかもしれない」と可能性に触れているだけだ。

強引に似ていることにして「こんな政局模様を中曽根氏は空の上からどう見ているだろうか。そんなことを考えながら手を合わせた」と記事を締めている。結局、何も言っていないに等しい。

やはり大石編集委員が書く記事は苦しい。毎度のことだが結論は変わらない。


※今回取り上げた記事「風見鶏~中曽根戦略ふたたび?

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201018&ng=DGKKZO65015150V11C20A0EA3000


※記事の評価はD(問題あり)。大石格編集委員への評価もDを維持する。大石編集委員については以下の投稿も参照してほしい。

日経 大石格編集委員は東アジア情勢が分かってる?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_12.html

ミサイル数発で「おしまい」と日経 大石格編集委員は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_86.html

日経 大石格編集委員は「パンドラの箱」を誤解?(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_15.html

日経 大石格編集委員は「パンドラの箱」を誤解?(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_16.html

日経 大石格編集委員は「パンドラの箱」を誤解?(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_89.html

どこに「オバマの中国観」?日経 大石格編集委員「風見鶏」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/08/blog-post_22.html

「日米同盟が大事」の根拠を示せず 日経 大石格編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_41.html

大石格編集委員の限界感じる日経「対決型政治に限界」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_70.html

「リベラルとは何か」をまともに論じない日経 大石格編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/blog-post_30.html

具体策なしに「現実主義」を求める日経 大石格編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/12/blog-post_4.html

自慢話の前に日経 大石格編集委員が「風見鶏」で書くべきこと
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/04/blog-post_40.html

米国出張はほぼ物見遊山? 日経 大石格編集委員「検証・中間選挙」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/blog-post_18.html

自衛隊の人手不足に関する分析が雑な日経 大石格編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_27.html

「給付金申請しない」宣言の底意が透ける日経 大石格編集委員「風見鶏」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/05/blog-post_74.html

「イタリア改憲の真の狙い」が結局は謎な日経 大石格上級論説委員の「中外時評」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/blog-post_7.html

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