2016年11月7日月曜日

日経ビジネスの特集「糖質制限パニック」に漂う胡散臭さ

日経ビジネス11月7日号の特集「糖質制限パニック 企業も地方も大わらわ」はツッコミどころの多い内容だった。まずはPART1「“糖質列島”、右往左往」を見ていく。特集の担当者(水野孝彦、日野なおみ、西雄大の3記者)は「糖質制限」に対する思い入れが強すぎるのか、大げさな説明が目に付いた。
鎮西身延山 本佛寺からの眺め(福岡県うきは市)
              ※写真と本文は無関係です

【日経ビジネスの記事】

人間は糖質を多く摂取すると血糖値が上昇する。が、糖質を控え目にすればその上昇を一定範囲に収められる。なぜこれが重要かと言えば、「それにより、今や人類最大の敵の1つとなった糖尿病をはじめ、がんや心臓病、脳卒中、果ては老化まで、あらゆる生活習慣病のもとを断ち切れる可能性がある」(糖質制限に詳しい京都・高雄病院の江部康二理事長)からだ。

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上記のくだりで疑問に感じた点を挙げてみる。

(1)老化は「生活習慣病」?

記事の書き方からは「老化」も「生活習慣病」の1つと解釈できる。だが、「老化は病気? しかも生活習慣病?」との疑問は湧く。


(2)がんは一括りに「生活習慣病」?

糖尿病はともかく「がん」や「認知症」に「生活習慣病」のイメージはあまりない。言葉の定義次第では「生活習慣病」に入るかもしれない。だが、例えばウイルス感染が原因で肝臓がんになった人を「生活習慣病」の患者と考えてよいのだろうか。


(3)老化のもとを「断ち切れる」?

最も気になったのが、糖質制限について「老化」も含む「あらゆる生活習慣病のもとを断ち切れる可能性がある」と言い切っている点だ。「京都・高雄病院の江部康二理事長」のような医療の専門家にツッコミを入れるのは気が引けるが、「老化」に関して「もとを断ち切れる可能性がある」のであれば、不老不死のうち「不老」への道が見えてくる。

医学の知識が不十分なままあえて言い切ってしまうと、「糖質制限をいくら極めても人の老化は止められない」はずだ。病院の理事長を務めるような人が、本当にこんな夢のような話を語ったのだろうか。仮に語ったとして、担当記者らは何も疑問を抱かなかったのか。

ついでにPART4の「高をくくれば『いつか来た道』 問われる変化対応力」を題材に、並立助詞の使い方を指導したい。

【日経ビジネスの記事】

ローソンと言えば、今年9月、ファミリーマートとサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングスの経営統合により、店舗数、国内売上高ともに業界3位に転落したばかり。

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「ファミリーマートとサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングス」と表記してあれば「ユニーグループ・ホールディングスがファミリーマートとサークルKサンクスを傘下に置いている」と解釈するのが普通だ。しかし、筆者は「『ファミリーマート』と『サークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングス』」と言いたいはずだ。改善例を2つ示す。

【改善例~その1】

ローソンと言えば、今年9月、ファミリーマートと、サークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングスの経営統合により、店舗数、国内売上高ともに業界3位に転落したばかり。

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「ファミリーマート」の後に読点を打てば、問題はほぼ解決する。ただ、読点が続いて読みにくい感じもある。その場合は「ファミリーマート」と「サークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングス」を並立助詞の「と」でつなぐ以外の方法を模索してみてほしい。

【改善例~その2】

ローソンと言えば、ファミリーマートがサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングスと今年9月に経営統合したことで、店舗数、国内売上高ともに業界3位に転落したばかり。

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この辺りは日経グループの苦手分野でもある。社内できちんと指導をしてくれる可能性は低いので、各自で技術を身に付けるしかない。


※今回の特集の評価はD(問題あり)。日野なおみ記者への評価はDを維持する。暫定でDとしていた西雄大記者はDで確定させる。水野孝彦記者は暫定でDと格付けする。

2016年11月6日日曜日

東洋経済 常盤有未記者「フレッシュネス」解説の未熟さ

11月5日付で東洋経済オンラインに載った「牛角がフレッシュネスバーガーを買った理由 3度目の"身売り"は成功するのか」では、筆者である常盤有未記者の書き手としての未熟さを再確認できた。「外食大手チェーンのコロワイド」に買収される「フレッシュネス」について、常盤記者は以下のように書いている。
角島大橋周辺の海岸(山口県下関市) ※写真と本文は無関係です

【東洋経済オンラインの記事】

店舗数は2007年3月の192店がピークだった。ここ10年ほど既存店売上高の減少が続いていたことに加え、不採算店の整理を進めたことが響き、収益面で苦戦。2015年度の業績は、直営店とFC店をあわせたチェーン全体の売上高が78億円、会計上の売上高は51億円、最終利益は赤字だった。現在の店舗数は9月末時点で159店にとどまり、そのうち3分の2がFC店だ。

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「不採算店の整理を進めたことが響き、収益面で苦戦」することはあり得る。閉店に伴う一時的な費用が発生するからだ。だが、「不採算店の整理」は中期的に見れば業績改善要因だ。常盤記者の書き方だと「不採算店の整理」をしない方がいいような印象を受ける。

さらに言えば「既存店売上高の減少が続いていたことに加え」にも冗長さを感じる。改善例を示してみよう。

【改善例】

ここ10年ほど既存店売上高が減り続けていた上に、不採算店の整理に伴う費用負担も重く、収益面で苦戦。

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付け加えると「2015年度の業績は、直営店とFC店をあわせたチェーン全体の売上高が78億円、会計上の売上高は51億円、最終利益は赤字だった」と書いても「収益面で苦戦」している様子があまり伝わらない。「最終利益は赤字」ぐらいだ。そこも赤字の額は示していない。

「苦戦」を伝えるためには「売り上げがどの程度減っているのか」「利益面での落ち込みはどの程度なのか」を見せた方がいい。また「最終利益は赤字」はお薦めしない。「最終損益は赤字」の方が好ましい。

さらに記事の中身を見ていく。

【東洋経済オンラインの記事】

フレッシュネスは「ハンバーガーカフェ」というコンセプトを掲げており、他社に比べて食事や飲み物の品ぞろえが豊富だ。商品開発でも、「ベーコンオムレツバーガー」や「スパムバーガー」といった独自商品を多く投入している。ただ、課題はこうした独自商品を生かせない「サービス水準の低さにある」(マクドナルドOBで従業員教育に詳しい松下雅憲氏)。

1店舗あたりの年間平均売上高は推計で約5000万円に過ぎない。マクドナルドの1.2億円、モスの7600万円、牛丼チェーンで8000万円ということを考えても、大幅に低い。あるハンバーガーチェーンのOBは「FCオーナーの中には、自店舗で働かずに、他業種でアルバイトをしているという、うわさもある」と明かす。

フレッシュネスもここに来てやっと施策を打ち始めている。2年ほど前から店舗改装を進めたことや新商品投入により、売上高は反転、2015年2月~2016年7月まで18ヵ月間、既存店売上高は前年超えを記録した。今年4月のメニュー改定で一部のメニューを休止し、さらなるオペレーションの改善にも取り組んでいる。「もう1段収益力をあげなければ、大幅に店舗を増やすのは難しい」とフレッシュネスの船曵睦雄・常務取締役は話す。

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上記の部分の疑問点を列挙してみる。

疑問その1~なぜ「サービス水準」が低い?

記事からは「1店舗あたりの年間平均売上高」が低いことが「サービス水準の低さ」につながっていると解釈するしかない。だが、店舗での従業員教育にそれほど多額の資金が要るとは思えない。記事の言う通りならば、モスよりもマクドナルドの方が「サービス水準」ははるかに高いはずだ。しかし、そういうイメージは個人的にはない。


疑問その2~「1店舗当たりの売上高」で比べて意味ある?

マクドナルド、モス、フレッシュネス、牛丼チェーンの店舗の大きさがほぼ同じならば、1店舗当たりの売上高で比べるのも分かるが、かなり差があるのではないか。なぜ単位面積当たりの売上高で比較しないのか。仮にマクドナルドの1店舗当たりの面積がフレッシュネスの2.5倍ならば、実力的には差がなくなる。


疑問その3~「フレッシュネスは厳しい状況」?

記事の冒頭で「運営元のフレッシュネスは厳しい状況に置かれている」と常盤記者は書いていた。しかし「2年ほど前から店舗改装を進めたことや新商品投入により、売上高は反転、2015年2月~2016年7月まで18ヵ月間、既存店売上高は前年超えを記録した」のであれば、それほど「厳しい状況」とも思えない。15年度は最終赤字だったかもしれないが、16年度は黒字化も見込めるのではないか。

次に、業態に関する説明の問題点を指摘したい。

【東洋経済オンラインの記事】

当初は居酒屋を中心にM&Aを進めていたが、若者のアルコール離れなど業界の縮小を見越して、レストラン事業強化に乗り出している。2005年には「ステーキ宮」「カルビ大将」などを運営するアトムを、2012年にはレインズを、2014年には回転ずし「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトを買収した。今回のフレッシュネス買収でファストフード業界への足掛かりを作ったことになる。

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「今回のフレッシュネス買収でファストフード業界への足掛かりを作ったことになる」と書くと、コロワイドはこれまで「ファストフード業界への足掛かり」を持たなかったように見える。だが、「回転ずし」も一般的には「ファストフード」なので、「カッパ・クリエイトを買収した」時点で「足掛かり」はできている。

最後に記事の結論部分に注文を付けたい。

【東洋経済オンラインの記事】

フレッシュネスについても相乗効果は微妙だ。「コロワイドは買収した会社を、ただ”くっつけているだけ”という印象が強く、M&A戦略にストーリーが感じられない。業態の違いやフレッシュネスの規模を考えると原材料の共同調達によるシナジーも期待しにくい」(外食産業のM&Aに詳しいジェイ・キャピタル・パートナーズの田中博文社長)。

一方でフレッシュネスの期待は膨らむ。「やっと健全な体制になってきた。今後の成長を考えたときに大手外食チェーンであるコロワイドグループ入りはチャンス。食材調達力、不動産やFC運営のノウハウを活用し、今後は400店程度まで増やしたい」と船曵常務は語る。

フレッシュネスにとっては、この10年間で3回目の"身売り"となる。今回は外食大手企業の傘下で、期待どおりの効果は生み出せるのか。

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結論が「今回は外食大手企業の傘下で、期待でどおりの効果は生み出せるのか」ではダメだ。何も言っていないに等しい。今回の記事には「3度目の"身売り"は成功するのか」との見出しが付いている。そして「常盤有未」と署名入りで執筆している。ならば「3度目の"身売り"は成功するのか」との問題提起に対する筆者としての答えは必須だ。

「成功するか失敗するか断定しろ」とは言わない。だが、どちらの可能性が高そうかぐらいは述べてほしい。記事を通じて何を訴えたいのかを明確にしないまま書いていると、こういう結びになってしまう。常盤記者が経済記事の優れた書き手を目指すのならば、ぜひ改善してほしい。


※記事の評価はD(問題あり)。常盤有未記者への評価はDを維持する。同記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「孤高のココイチ」書いた東洋経済 常盤有未記者に助言(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/01/blog-post_98.html

「孤高のココイチ」書いた東洋経済 常盤有未記者に助言(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/01/blog-post_27.html

ミズノへの分析の甘さ目立つ東洋経済 常盤有未記者
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/04/blog-post_11.html

今度はゼンショー? 東洋経済 常盤有未記者の問題点(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_43.html

今度はゼンショー? 東洋経済 常盤有未記者の問題点(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_21.html

2016年11月5日土曜日

韓国 「怒り 急先鋒は若者・主婦」?日経 峯岸博記者に問う

見出しに釣られて読んでみた5日の日本経済新聞朝刊総合1面の「真相深層~韓国大統領、『友人』スキャンダルで窮地  怒り、急先鋒は若者・主婦 受験・格差…噴き出す不満」という記事は期待外れだった。なぜ「怒り、急先鋒は若者・主婦」なのかと思いながら読み進めても、記事中に答えは見つからない。怒りの「急先鋒は若者・主婦」かどうかも怪しい。
火事(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です

筆者の峯岸博ソウル支局長は記事の最初の方で以下のように書いている。

【日経の記事】

韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は4日、国民向け談話を発表し、国政介入などの疑惑に捜査のメスが入った長年の友人、崔順実(チェ・スンシル)容疑者との関係を改めて謝罪した。だが国民の厳しい視線は和らぎそうにはない。怒りは若者や主婦に広がる。2人への疑惑が過酷な競争社会に疲れる人々の虎の尾を踏んでしまった。

「私は憤怒している」。ソウル近郊で4人の子どもを育てる30代の主婦が矛先を向けるのは崔容疑者の娘の不正入学疑惑だ。乗馬の元韓国代表選手だった娘は2014年の仁川アジア大会で馬術の団体金メダルを獲得した。本来、選考対象でない金メダル獲得によって乗馬特待生として名門の梨花女子大体育科学部に入学できたとの疑惑だ。

同大の特待生の競技種目に馬術が加わったのはこの年からだった。大学が崔氏の意向を受け、学則を改正するなど便宜を図った疑いがある。アジア大会の代表選手の選抜過程が不透明だったり、20年の東京五輪をめざす選手団育成を目的としたサムスン電子の巨額支援を娘が独占したりした疑惑も報じられている。

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「怒りは若者や主婦に広がる」とは書いているが、ここから「急先鋒は若者・主婦」と解釈するのは無理がある。その後に「憤怒している」という「30代の主婦」が出てくるものの、この人だけで「急先鋒は主婦」と捉えるのも苦しい。

若者に関しては、記事の最後の方に「韓国の世論調査機関によると朴氏の支持率は5%と歴代政権の最低を記録。19歳~30代に限ると1%に沈む」との記述があるので、「急先鋒」だとは言えそうだ。だが、なぜ若者の怒りが特に強いのかは教えてくれない。

峯岸ソウル支局長の分析をさらに見てみよう。

【日経の記事】

韓国社会は「有名学習塾のある地区の地価が上昇する」ほどの学歴主義だ。背景には上位10%への所得集中度がアジアで最高という「両極化(格差)」社会がある。一握りの有名企業などに入るため、幼少期から過酷な受験戦争にさらされる。

うまく入社できても超ピラミッド型の出世レースが待ち受ける。そこで幅を利かすのが学歴と学閥。コネに頼れない一般市民はその肩書を手に入れようと子供の教育に血眼になる。人生は生まれた家庭によって決まってしまうという「金のさじ、銀のさじ、土のさじ」「ヘル朝鮮」(地獄のように生きづらい韓国社会)といったスラングが若者の間で流行する。

不正入学が疑われる娘の母親は大統領の友人、父親も元秘書だ。韓国では「最も市民が敏感なのは権力者による子供の不正入学と徴兵逃れ」といわれる。前述の主婦は「金持ちも貧乏人も分け隔てなく公正なものが受験のはず。その『最後の砦(とりで)』が大統領の友人によって壊された」と不正入学疑惑の深刻さを訴える。

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この分析だと「怒り、急先鋒は若者・主婦」になりそうな感じはない。幅広い年代の国民が「一握りの有名企業などに入るため、幼少期から過酷な受験戦争にさらされる」経験をしているはずだ。「過酷な競争社会に疲れる人々」は「若者や主婦」に限らないのではないか。

「怒り、急先鋒は若者・主婦」と峯岸ソウル支局長は考えていないのに、整理部の担当者が拡大解釈して見出しを付けた可能性はある。ただ、見出しは峯岸ソウル支局長も国際アジア部デスクも確認しているはずだ。整理部の案を受け入れたのならば「怒り、急先鋒は若者・主婦」という見出しに釣られて記事に目を通した読者を納得させる内容にする必要がある。

ついでに言うと、「人生は生まれた家庭によって決まってしまうという『金のさじ、銀のさじ、土のさじ』『ヘル朝鮮』(地獄のように生きづらい韓国社会)といったスラングが若者の間で流行する」という説明は引っかかった。

特権とは無縁の貧しい家庭に生まれても「過酷な受験戦争」と「超ピラミッド型の出世レース」を勝ち抜く道はあるのではないか。教育面では裕福な家庭が有利だとしても「人生は生まれた家庭によって決まってしまう」とは考えにくい。出世レースで「幅を利かすのが学歴と学閥」であれば、貧しい家庭に生まれても、トップクラスの学歴を手にして這い上がっていく可能性は十分にある。

実際の韓国社会がどうなっているかは分からないが、記事の流れでいけば「人生は学歴によって決まってしまう」と言われた方が納得できる。

さらについでに言うと、注釈なしに「スラング」を使うのは感心しない。「俗語」で十分だ。どうしても横文字を使いたいならば「スラング(俗語)」などと訳語を入れる手もある。日経の読者には高齢者が多い。その点にも十分に配慮してほしい。


※記事の評価はC(平均的)。峯岸博ソウル支局長への評価も暫定でCとする。

2016年11月4日金曜日

上昇局面で「鉱山休止」? 日経「亜鉛、5年4カ月ぶり高値」

亜鉛相場は年初から上昇基調が続いている。3日の日本経済新聞朝刊マーケット総合2面に載った「亜鉛国際価格、5年4カ月ぶり高値」という記事によると、2日に「5年4カ月ぶりの高値を付けた」ようだ。その要因として「今週に入ってスイス系資源大手グレンコアがオーストラリアの亜鉛鉱山の一部休止を表明した」ことを挙げている。これが解せない。上昇基調が続いているのに、なぜ「一部休止」に至ったのか。
角島の海水浴場(山口県下関市) ※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

亜鉛の国際価格が急伸している。指標となるロンドン金属取引所(LME)の3カ月先物は日本時間2日の時間外取引で1トン2440ドル前後で推移。10月21日の直近安値に比べ7%高く、2011年7月以来5年4カ月ぶりの高値を付けた。市場で亜鉛の供給不安が意識された。

今週に入ってスイス系資源大手グレンコアがオーストラリアの亜鉛鉱山の一部休止を表明した。亜鉛は15年以降、国際価格の急落を受けて豪州や南米の鉱山が相次いで閉鎖や休止に追い込まれた。

市場関係者によると16年の亜鉛供給量は約1360万トン。「需要量は1400万トン強で30万トン前後不足する」との見方もある。

中国内の石炭や鉄鉱石価格の上昇も強材料となった。中国は世界の亜鉛生産の半分に当たる約700万トンの亜鉛を輸入している。石炭などの値上がりが中国の景気回復を連想させた。

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2015年には確かに相場が下げている。「15年以降、国際価格の急落を受けて豪州や南米の鉱山が相次いで閉鎖や休止に追い込まれた」のは分かる。だが、「グレンコアがオーストラリアの亜鉛鉱山の一部休止を表明した」のは「今週に入って」だ。「国際価格の急落」が「休止」の理由とは考えにくい。

老朽化などが理由ならば、相場が高い状況での「休止」もあり得る。だが、記事の書き方だと「国際価格の急落を受けて豪州や南米の鉱山が相次いで閉鎖や休止に追い込まれた」流れの1つとしてグレンコアによる「亜鉛鉱山の一部休止」があったと解釈するしかない。「一部休止」は事実なのだろうが、休止の理由をきちんと説明できているとは思えない。

10月28日の朝刊マーケット総合2面に載った「スズ、2年ぶりの高値 国際価格 産地、雨期控え供給不安」という記事も問題があった。どちらも商品部の非鉄担当記者が書いている可能性が高い。「自分はレベルの低い記事を垂れ流している」と本人は気付いているだろうか。商品部のデスクによる指導は期待しにくい。市場関連記事をきちんと書ける記者になるためには、自ら問題点を自覚して改善に取り組むしかないと肝に銘じてほしい。


※記事の評価はD(問題あり)。

2016年11月3日木曜日

日経 宮本岳則記者「スクランブル」での不可解な解説

3日の日本経済新聞朝刊マーケット総合1面に載った「スクランブル~『先回り投資家』の憂鬱
為替と株価の乖離に弱み」で不可解な記述に出くわした。最近の日本市場でアクティブファンドが市場平均に勝てない理由を宮本岳則記者が分析しているのだが、「日銀のETF買い」が入ると「(株価は)業績低迷銘柄ほど上がりやすくなる」との説明は納得できなかった。
独立自尊碑(大分県中津市) ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

アクティブ投信の存在意義は市場平均に勝つこと。だが運用成績を見ると苦悩が分かる。日銀がETF購入の増額を決めた7月の金融政策決定会合前日を起点に基準価格の騰落率を見ると、東証株価指数(TOPIX)を下回る投信が目立つ。日銀がETFで市場を丸ごと買うため、投信が保有しにくい業績低迷銘柄や流動性が低い小型株ほど上がりやすくなるためだ。

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まず「日銀がETFで市場を丸ごと買うため、投信が保有しにくい業績低迷銘柄や流動性が低い小型株ほど上がりやすくなるためだ」という文では「ため」を繰り返している。拙い印象を与えるので避けた方がいい。

本題に入ろう。まずは宮本記者の説明を受け入れて、日銀のETF買いで「投信が保有しにくい業績低迷銘柄や流動性が低い小型株ほど上がりやすくなる」としよう。ならば「市場平均に勝つこと」は簡単だ。流動性の高い「業績低迷銘柄」に資金を集中させればいい。そうすれば、売却時の値崩れをあまり心配せずに、市場平均を簡単に上回れる。流動性は譲れないとしても、高いリターンが確実に期待できるのであれば、「業績低迷銘柄」は買えるばずだ。なのに、なぜアクティブファンドのファンドマネジャーはそうしないのか。

記事によるとアクティブファンドは「『日銀買い』に勝つため、変化の目をいち早く見つけようと躍起」らしく、「日米金利差拡大→円安方向の安心感から、外需銘柄には買いが入っていた」という。アクティブファンドの多くが「業績回復ストーリーに期待」して「決算発表の確認前にリスクをとって動いた」とすれば、あまりに愚かだ。あえて「日銀買い」に勝ちにくい道を歩んでいるのだから。

だが、実は宮本記者の説明の方に問題があるのではないか。「日銀がETFで市場を丸ごと買う」と「業績低迷銘柄ほど上がりやすくなる」かどうかを考えてみたい。

基本的には「業績好調銘柄」の株価は上がりやすく、「業績低迷銘柄」は下げやすい。ここに「日銀のETF買い」が加わるとどうなるか。好調銘柄は上げ幅が大きくなり、低迷銘柄は下げ幅が縮小して、場合によっては上がる--といった影響が出てきそうだ。だが、「業績低迷銘柄ほど上がりやすくなる」わけではない。

好調銘柄の方が日銀のETF買い以外の買いがより多く期待できるのだから、低迷銘柄よりも「上がりやすくなる」はずだ。だからアクティブファンドは「『日銀買い』に勝つため」に、業績改善が見込める銘柄への投資を進めたのではないのか。


※記事の評価はD(問題あり)。暫定でDとしていた宮本岳則記者への評価はDで確定させる。

2016年11月2日水曜日

週刊エコノミストの特集「家は中古が一番」に異議あり

週刊エコノミスト11月8日号の特集「家は中古が一番」では「賃貸か購入か。長年の論争は決着した。マイナス金利時代は、中古住宅の購入が正しい」と冒頭で言い切っている。主張が明確なのは悪くない。ただ、筆者ら(酒井雅浩、大堀達也、丸山仁見の3記者)の解説に説得力は感じなかった。記事の一部を見てみよう。
熊本学園大学付属高校(熊本市) ※写真と本文は無関係です

【エコノミストの記事】

「今すぐ家を買う必要はない」のか。その答えは将来のインフレリスクをどう考えるかにかかる。

日銀の異次元緩和で物価は大きく上がらなかった。しかし、将来も上がらないというわけではない。

日銀が長期金利を目標としたことに対し、ベン・バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)前議長はブログで評価しつつ、金利変動が急激化するリスクも指摘した。インフレ志向の日銀が対応をひとつ誤れば、金利急騰は起こりうる。

つまり、超低金利で住宅ローンを組むことは、将来のインフレリスクへの備えとなる。インフレ時は、ローン返済額は実質目減りするからだ。また、一定の資産形成ができる。

しかし、賃貸の場合、更新時に家賃を引き上げられる可能性がある。自らの資産形成にもならない。

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「金利急騰」の話にもツッコミを入れたい部分はあるが、ややこしくなるので省く。中古住宅を買っておけば「将来のインフレリスクへの備えとなる」という筆者らの主張に異論はない。例えば、2017年からは年率10%を超えるインフレがしばらく続くのならば、今のうちに中古住宅を買うのは正しいと思える。

問題は、インフレリスクがどの程度かだ。デフレになったり、非常に緩やかなインフレが続いたりするようならば、インフレリスクに対応するために中古住宅を買うのは不正解だ。「賃貸か購入か。長年の論争は決着した。マイナス金利時代は、中古住宅の購入が正しい」と言い切るならば、「インフレリスクの方がデフレリスクより高い」と言える材料が要る。記事ではそれを示していない。「(物価は)将来も上がらないというわけではない」と述べているだけだ。

特集には、「中古住宅を買っても、むしろ値下がりリスクの方が大きいのでは?」と感じさせる記事が目立つ。その1つが酒井記者の書いた「徴税強化で新築マンションバブル崩壊」という記事だ。

「バブル崩壊は高級物件だけでなく、新築市況全体を押し下げる圧力になる。せっかく新築マンションを購入したとしても、その後資産価値がどの程度落ちるのか、不透明だ」と記事では訴えている。「崩壊するのは、あくまで『新築マンションバブル』であって、中古マンションは大丈夫」とでも思っているのだろうか。

新築マンションの販売価格が急落する状況で、中古マンション相場が崩れずに踏み止まれる可能性は極めて低い。特集の中の「主要都市圏の市況」という記事では、「名古屋圏」について「新築の価格上昇が止まれば、中古の値上がりも収まる可能性が高い」と記している。だとしたら、新築マンションバブルが崩壊したら、中古マンション価格はどうなるのか。

もう1つ、「番外編~500万戸の大空き家時代 空き家は『最後の売り時』」(筆者は住宅ジャーナリストの榊淳司氏)という記事でも「中古住宅投資の危険性」を示す記述がある。

【エコノミストの記事】

今、日本は局地的に不動産がブームになっている。東京都心や湾岸、城南4区(品川、目黒、大田、世田谷)、神奈川の一部や京都の御所周辺は不自然なまでに価格が上がったバブル状態。福岡などでも需要増に基づく価格上昇が起こっている。

原因の1つは、史上最低ともいえる低金利。行き場を失ったマネーが不動産に流れているのだ。しかし、低金利政策も今やどんづまり。この先、日本で住宅ローンがマイナスになることには現実味がない。そしてこのブームもすでにピークアウトしたという見方が多くなってきた。今後は緩やかに価格が下がっていくはずだ。

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「(不動産の)ブームもすでにピークアウトしたという見方が多くなってきた」時期に、「緩やかに価格が下がっていくはず」の住宅を買うのは本当に正解なのか。「中古」であれば問題ないのか。「中古住宅の購入が正しい」と断定するには、あまりに根拠が乏しい。


※特集全体の評価はC(平均的)。暫定でCとしていた大堀達也記者への評価はCで確定させる。丸山仁見、酒井雅浩の両記者は暫定でCとする。

2016年11月1日火曜日

投資初心者は読むな!東洋経済「50歳から増やすおカネ」

週刊東洋経済11月5日号の特集「50歳から増やすおカネ」は42ページにも及ぶ力作ではあるが、役に立つ感じは乏しかった。特に「PartⅡ 今さら聞けない!50歳からの投資術」が苦しい。
熊本市中心部から見た熊本城 ※写真と本文は無関係です

「10年後の不安解消へ 中長期投資に向いた銘柄は」といった記事は「30歳からの投資術」であっても、ほぼそのまま使える中身だ。ここに4ページを費やし、「金融庁も警鐘を鳴らす 危険な金融商品の実態」「初心者も信用取引に誘導される ネット証券の落とし穴」という2本の記事でさらに計4ページを割いている。いずれも「50歳から」との関連は乏しい。

そして、最も問題を感じたのが「50代の初心者に最適! 株式投資・投信運用 6つの鉄則」という記事だ。「50代の初心者」には「この記事は読むな」と声を大にして言いたい。具体的に問題点を列挙していこう。

【東洋経済の記事】

投信の長期運用の方法としては自分で国内株式型や海外株式型、海外債券型などに分散してポートフォリオを作るやり方がある。より手軽な手法として、運用信託会社側が投資対象となる地域・資産を分散させて運用するバランス型ファンド型に投資する手もある。

神戸氏が初心者向けに挙げる5本のバランス型ファンドを上表に示した。分配が年4回より少なく、純資産総額が50億円以上、シャープレシオ(リスク当たりの超過リターンを示す)が分類平均より高いファンドをスクリーニング。その中から投資先資産の比率や運用方針など、それぞれ特徴が違う投信を挙げている。

アクティブ型ファンドは2つ、世界8資産ファンドとスマート・ファイブを選んだ。前者は債権比率が20%と比較的低く、株式は国内を中心に先進国と新興国にも投資、国内外のREIT(不動産投資信託)にも投資している。後者は国内中心に債権比率が高く、海外の株やREIT、金にも投資。状況に合わせて投資資産のバランスを柔軟に見直す可変型の投信だ。

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「初心者向けのバランス型ファンド」という表を見ると、「世界8資産ファンド」は信託報酬1.30%、販売手数料3.24%(上限)だ。「スマート・ファイブ」は信託報酬1.55%、販売手数料2.16%(上限)となっている。これだけで論外だ。この2本を「初心者向け」と言い切れるFPアソシエイツ&コンサルティングの神戸孝チーフ・エグゼクティブディレクターは悪い意味で凄い。

投資1年目に4%前後を手数料だけで失ってしまう投信をよく初心者に薦められるものだ。基本的には「誰にとってもダメな投信」だと思えるが「この投信のファンドマネジャーには市場平均に対する超過リターンを得る特別な力がある」などと確信できるならば話は別だ。ただ、それができるならば「初心者」ではない。

バランス型ファンドを「初心者向け」とするのにも賛成できない。海外株、国内外のREIT、金などに最初から投資して、初心者がついていけるだろうか。バランス型ファンドを「初心者向け」として薦める側の論理としては「初心者はよく分からないだろうから、業者に丸投げしてしまえ」との意識があるのではないか。

だが、初心者だから何も分からなくてもいいとは思えない。まずは理解できる範囲で投資すべきだ。「日本株なら何となくイメージが湧く。日経平均の動きはニュースなどでもよく見るし…」といったレベルならば日経平均型のETFなどが選択肢になる。

「それでは分散が不十分」との反論があるかもしれないが、初心者が為替リスクを取ってまで海外REITなどに投資する必要があるのか。ETFならば、個別株に比べれば圧倒的に分散はできている。まず理解できるところから始めて、知識を得てからさらなる分散に乗り出すべきだ。

ついでに、東洋経済が掲げる「6つの鉄則」の1つである「配当を狙うべし」にも触れておこう。

【東洋経済の記事】

長期投資においては株価上昇だけでなく、配当によるインカムゲインも大きな収益となる。株には値下がりリスクもあるとはいえ、歴史的な低金利の環境下では、東証1部の平均(予想ベース)で約1.8%の配当利回りは無視できない。財務状況が良好で業績が安定的に成長しており、かつ配当利回りが高い銘柄は、長期保有に向いているといえるだろう。

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投資初心者に「配当利回りを基準に投資する銘柄を決めるのはどうかな?」と聞かれたら「意味がない」と答えるだろう。配当利回りを預金などの金利と比べる記事のような解説にも意味はない。預金ならば元本とは別に金利が付くが、配当は株主の持ち分を削って出しているものだ。配当すればするほど株式時価総額を目減りさせる力が働く。

増配発表が経営陣の自信の表れと解釈されて株価が上がるアナウンスメント効果もあるので話は少しややこしくなる。だが、理論的には株価100円の銘柄で10円の配当を出せば、株価は90円になる(配当以外の要因での株価変動がない場合)。配当が1円ならば株価は99円だ。配当利回りは大違いだが、株主の損得に影響があるだろうか。

預金の場合、100円の元本に年10円の利息ならば1年後には110円になる。一方、利息が1円ならば101円にとどまる。これを配当利回りと比較しても意味はない。

「PartⅡ 今さら聞けない!50歳からの投資術」では、「株式投資からREIT、FXまで 5分でわかる金融商品講座」という記事にも問題を感じた。金に関する記述を見ていこう。

【東洋経済の記事】

金はあくまで物質なので、当然金利や配当などは生み出さない。参加者の総損益がゼロになるという点ではFXと同じ。購入金額よりも高く売却しなければ利益は出せず、割安かどうかを判断する指標もない。

とはいえ、世界各国で資産価値を認められており、安全性が高い運用先といえる。実際、社会情勢が不安定なときやインフレの際に金価格は上昇しやすい。米ドルとの価格相関もあり、ドル安になると金の価格が上昇する傾向にある。

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この記事のFXに関する説明では「FXは市場参加者の収支がゼロになるため、投資ではなく投機に分類されることもある」と書いている。金は「参加者の総損益がゼロになるという点ではFXと同じ」(総損益がゼロになるのは金先物の場合だと思われるが、ここでは問題にしない)ならば、金も「投機に分類されることもある」はずだ。それで「安全性が高い運用先」と言われても説得力はない。

「安全性が高い=投資元本を失う可能性が低い」という意味ならば、金の安全性は明らかに低い。「世界各国で資産価値を認められている=安全性が高い」と考えるのならば、原油も株式も不動産も「世界各国で資産価値を認められて」いる気がする。これらは「安全性が高い運用先」と言えるだろうか。


※特集全体の評価はD(問題あり)。特集の担当者については、暫定でA(非常に優れている)としていた島大輔、渡辺拓未の両記者への評価を暫定B(優れている)に引き下げる。暫定C(平均的)だった二階堂遼馬記者は暫定D、暫定Bだった堀川美行副編集長は暫定Cとする。