2016年6月30日木曜日

東洋経済「健康格差」イチロー・カワチ氏の極端な言い切り

週刊東洋経済7月2日号の特集「健康格差」の中に「ハーバード大学教授が警告 命の格差を直視せよ」というインタビュー記事が載っている。この中でハーバード大学 公衆衛生大学院教授のイチロー・カワチ氏が極端な言い切りをしているのが気になった。カワチ氏を責めるつもりはない。編集サイドの責任だと思える。問題点を挙げていこう。
久留米百年公園(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係

◎「あらゆる店にドライブスルー」?

肥満の原因は、運動不足にもある。米国は車社会で、あらゆる店にドライブスルーが設けられている。マクドナルド、銀行のATM、ドラッグストアの処方箋受付もそう。車から出て歩くことが少ない」とカワチ氏は述べている。米国の事情に通じているわけではないが、「あらゆる店にドライブスルーが設けられている」とは考えにくい。「多くの店に」ぐらいにすべきだろう。

◎「高学歴の人にしか響かない」?

たとえば禁煙を促すために、喫煙のリスクを訴えるとする。喫煙がいろいろな病気を引き起こすことが論理的にわかれば、おのずとたばこをやめるだろう、という考え方だ。だがこれは『合理的な脳』にしか訴えておらず、現実には高学歴で生活にゆとりがある人にしか響かない」というくだりも同様だ。

大きく間違っているわけではない。だが「高学歴で生活にゆとりがある人にしか響かない」と言い切るのは問題だ。中卒でも高卒でも、合理的な判断に基づき禁煙する人はいるだろう。例えば、サッカー日本代表の多くは「高学歴」ではない。だからと言って「『合理的な脳』に訴えて彼らの生活を改善させようとしても無駄だ」と判断すべきだろうか。

記事の表現を「現実には高学歴で生活にゆとりがある人でないと響きにくい」とすれば問題は解消する。

ついでに、以下のくだりに関して注文を付けたい。

【東洋経済の記事】

--所得格差を縮めるうえで何が重要でしょうか。

幼児教育だ。この重要性は、1960~70年代の米国で行われた大規模実験によって証明されている。調査対象は、社会・経済的状況に恵まれない黒人の子ども。対象となった子どもたちを半分に分け、一方の幼児グループにはスパルタ教育を行い、もう一方には何もしない。そして彼らが大人になったときの健康状態がどうであるかを調べた

スパルタ教育を受けた子どもはその後、成績の悪い生徒に必要な学習支援を受ける率が半分だった。大学への進学率も倍以上になった。健康面では、喫煙率が20%程度低くなった。経済面でも、スパルタ教育を受けた人たちは一定水準の収入を保ち、持ち家率が高かった。

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◎「スパルタ教育」を受けさせる?

まず「スパルタ教育を受けさせるの?」とは思う。「スパルタ教育」とは「現在では一般に、体罰を含む厳格な教育法の代名詞として使われる語」(世界大百科事典)だ。記事で使うならば、どんな「スパルタ教育」なのかは言及してほしい。いくら効果があっても、「テストの点数が悪かったらムチ打ち100回」といったスパルタ教育に前向きになれない。

カワチ氏の言う「1960~70年代の米国で行われた大規模実験」とは「ペリー就学前計画」と呼ばれるものではないかと推測できる。これは午前中は学校で教育を受けて、午後は先生が家庭で指導という内容だったようだ。これだと「スパルタ教育」的な要素は見当たらない。


◎「健康状態」はどうなった?

そして彼らが大人になったときの健康状態がどうであるかを調べた」とカワチ氏は述べているのに、結局は「彼ら」の「健康状態」に触れていない。「健康面では、喫煙率が20%程度低くなった」と言っているだけだ。喫煙していて健康な人もいれば、非喫煙者で重病を抱えている人もいる。「喫煙率が20%低い」というだけでは、スパルタ教育を受けた人の方が健康状態が良いのか悪いのか判断できない。肝心の部分が抜けている。


このインタビュー記事には他にも問題があるが、この辺りでやめておこう。ここからは、インタビューした相手が極端な言い切りをしてきた時に、編集部ではどう対応すべきかを説明したい。対応策はいくつかある。「健康に関する有用な情報を与えても、それを生かして生活を改善できるのは高学歴の人だけだ」と相手が発言した場合で考えてみたい。

対応その1~追加で質問する

「野球やサッカーの有名選手は高卒の人も多いですよね。そういう人もやはり理解できませんかね」などと聞けば、「『高学歴の人だけ』は言い過ぎたかもしれません」などと返ってくる可能性はある。そうやって修正してあげるのも、聞き手の役割の1つだ。

対応その2~記事にする段階で相談する

記事にする段階で「『高学歴の人だけ』を『高学歴でないと難しい』と言い換えてもいいですか。低学歴でも理解できる人がいないとは言い切れないので…」などと相談すれば、拒否する人は少ないだろう。

対応その3~記事で使わない

問題があると思える部分は文字にしなければいい。「その1」「その2」の対応をしても、極端な言い切りに相手が固執した場合は、その発言を使わないという形で対応したい。


※特集全体の評価はD(問題あり)。今回の特集の担当は杉本りうこ、中川雅博、印南志帆、高見和也、中原美絵子の各記者。評価は杉本記者をB(優れている)からC(平均的)に、中川記者、印南記者、中原記者を暫定Bから暫定Cに引き下げる。高見記者は暫定でDとする。間違い指摘を無視した件については、担当者の中に副編集長以上の者が見当たらないので、責任者不明と考えて今回は評価に反映させていない。

※今回の特集に関しては「『JTがたばこ増税で潤う』? 東洋経済『健康格差』に疑問」「東洋経済『健康格差』キャベツ1玉200円に驚く藤田和恵氏」も参照してほしい。

2016年6月28日火曜日

東洋経済「健康格差」キャベツ1玉200円に驚く藤田和恵氏

週刊東洋経済7月2日号の特集「健康格差」の中に「短い平均寿命、子どもの糖尿病… 足立区は健康を取り戻せるか」という記事がある。筆者はジャーナリストの藤田和恵氏。最終段落で藤田氏は「驚いたのは、350ミリリットルの缶チューハイが80円を切っていたのに、キャベツは1玉200円もしたことだ」と書いていた。個人的には、藤田氏がキャベツの値段に驚いているのが驚きだった。
秋月の桜(福岡県朝倉市) ※写真と本文は無関係です

最終段落は以下のようになっている。

【東洋経済の記事】

ミナコさん宅を出た夕方、地域の激安スーパーの1つをのぞいてみた。驚いたのは、350ミリリットルの缶チューハイが80円を切っていたのに、キャベツは1玉200円もしたことだ。「野菜は高い」と具なし焼きそばを作っていた母親の言い分には確かに一理あった。懸命に働き、子どもを育てる若い家族がそんな二者択一を迫られる社会の仕組みがおかしいのではないか。単純明快な答えなどない。足立区の取り組みや、民間の人々の情熱は、理不尽な社会への挑戦でもある。

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キャベツと缶チューハイの値段に触れたのは、記事中の以下の話と関連している。

【東洋経済の記事】

足立は坂の少ない街だ。週末の昼下がり、花畑地区の住宅街をひたすら歩いていると、20代と思われる数組の家族が自宅車庫でバーベキューを楽しんでいるのを見つけた。

父親らは車庫の奥で缶チューハイ片手につまみにはしを伸ばしている。手前では鼻ピアスを付けたり、髪を金色に染めたりした母親たちが、鉄板で作った焼きそばを子どもたちに食べさせている。視界に入った焼きそばが肉も野菜も入っていない「具なし」だったのに驚き、取材の趣旨を告げたうえで「野菜は食べないんですか」と尋ねると、母親の1人がばつが悪そうにこう答えた。「野菜、高いんですよ」。

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◎キャベツの値段を初めて知った?

筆者の藤田氏はキャベツを買ったことがほとんどないのだろう。でなければ「キャベツ1玉200円」に驚くはずがない。ごく標準的な価格だ。キャベツの値段を知らないからと言って筆者を責めるつもりはない。しかし、記事中で驚いてみせると「読者のみなさん知ってましたか? キャベツって1玉200円もするんですよ」というニュアンスが出てしまう。そうなると「そのぐらい知ってるよ」と思わずにはいられない。


◎母親の言い分に一理ある?

「焼きそばには野菜を入れる方が望ましい」という前提があるとして(個人的にはこの前提に同意しない)、花畑地区の母親が「野菜、高いんですよ」という理由で焼きそばに野菜を入れていないことを「一理ある」と擁護できるだろうか。キャベツが1玉1万円ならば分かる。しかし、わずか200円だ。4分の1カットならば100円を切るはずだし、焼きそばに入れるだけならば十分な量がある。それほど高いとは思えない。

さらに言えば、母親たちには「鼻ピアスを付けたり、髪を金色に染めたり」する余裕があるようだ。なのに「200円のキャベツが高くて買えない」との弁明に納得できるだろうか。髪を染めるのを止めれば、キャベツが何十個と買えるのではないか。

藤田氏はバーベキューをしていた家族に関して「キャベツが80円で缶チューハイが200円ならば、缶チューハイではなくキャベツを買ったはずだ」と思っているのだろう。だから「二者択一を迫られる」と書いてしまう。しかし、「この家族にはキャベツと缶チューハイの両方を買う余裕があった」と考える方が自然だ。でなければ「ピアス」や「金髪」がうまく説明できない。

ゆえに「懸命に働き、子どもを育てる若い家族がそんな二者択一を迫られる社会の仕組みがおかしいのではないか」との主張に説得力はない。バーベキューをしていた家族には「金髪に染めたりする余裕があるのならば、それを我慢して子どもに野菜を食べさせてあげたら」とでも言ってあげればいいのではないか。少なくとも「母親の言い分には確かに一理あった」などと理解を示してあげる必要はない。


※記事の評価はD(問題あり)。藤田和恵氏への評価も暫定でDとする。特集「健康格差」に関しては「『JTがたばこ増税で潤う』? 東洋経済『健康格差』に疑問」も参照してほしい。今回の特集では、ハーバード大学 公衆衛生大学院教授のイチロー・カワチ氏へのインタビュー記事にも疑問を感じた。これについては「東洋経済『健康格差』イチロー・カワチ氏の極端な言い切り」で触れる。

2016年6月27日月曜日

事実に反する山田厚史デモクラTV代表の大手メディア批判

「ネットメディアの方が既存の大手メディアより自由だ」と強調するために、あえて事実を無視しているのか。それとも確認が不十分なだけなのか。朝日新聞の元編集委員でデモクラTV代表の山田厚史氏が、週刊エコノミスト7月5日号で事実誤認に基づくと思われる大手メディア批判を展開していた。
HAWKSベースボールパーク筑後(福岡県筑後市)
                  ※写真と本文は無関係です

ネットメディアの視点~アベノミクス見限った三菱銀 メディアは政策の自壊をなぜ書かぬ」という記事で、「三菱東京UFJ銀行が、財務省から与えられた国債市場特別参加者の資格を返上する、と言い出した」ことに関して、山田氏は以下のように書いている。

【エコノミストの記事】

難しい財政や金融のことはエライ人に任せておこう、とフツウの人は目をつぶってきた。ところがエライ人の間で内輪もめが始まったのが今回の一件だ。口を拭ってきた「危ないこと」を「危ない」と銀行が指摘したのである。

政府・日銀・金融界が支えるアベノミクス体制に強烈なボディー・ブローが放たれたのだ。しかも身内から。これは大事件だ。ネットでは「アベノミクスにダメ出し」など率直な分析が飛び交っている。既存のメディアは遠巻きにし、事実関係を書くだけ。本質に触れようとしない。銀行や日銀に張り付いている大手メディアは、誰に遠慮しているのだろうか。

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山田氏の言う通りであれば、6月16日の日経夕刊に載った「日銀ウオッチ~三菱はなぜ怒るのか」(筆者は石川潤記者)という記事でも「既存のメディアは遠巻きにし、事実関係を書くだけ」のはずだ。しかし、そうはなっていない。

記事では「三菱UFJが資格返上を決めたのは、マイナス金利の国債は買えないという立場を明確にするためだ。マイナス金利政策の議論に一石を投じる狙いがあった」と書いており、石川記者は三菱UFJの動きに「アベノミクスにダメ出し」的な要素があると示唆している。

銀行や企業が動かないなら、政府・日銀が正しい方向に導いてしまえ――。マイナス金利政策への反発が強いのは、こんな官尊民卑の発想を銀行などが敏感に感じ取っているからではないか」と結んだこの記事に、政府・日銀への「遠慮」は感じられない。

『十分に事実確認をした上で思い込みを排して大手メディアの報道内容を検証してほしい』と編集部から山田氏に伝えていただけないでしょうか」とお願いしたところ、「担当者より、筆者に申し伝えます」との返事がエコノミスト編集部から届いた。山田氏には石川記者の記事をぜひ読んでほしい。「遠巻きにし、事実関係を書くだけ」の記事かどうか、すぐに分かるはずだ。

日経を含めた大手メディアには様々な問題がある。しり込みした報道が目立つ場面も珍しくない。それに対する批判は必要だ。しかし、事実を無視した批判に意味はない。その点を山田氏にはしっかり自覚してほしい。

※週刊エコノミストの記事はD(問題あり)。山田厚史氏への評価も暫定でDとする。

「JTがたばこ増税で潤う」? 東洋経済「健康格差」に疑問

週刊東洋経済7月2日号の特集「健康格差」は45ページにも及ぶ力作だ。担当者らの問題意識の強さも伝わってはくる。ただ、色々とツッコミどころが多いのも確かだ。まずは、たばこ税の増税でJTは潤うかという問題を考えてみたい。今回の特集では国立がん研究センターのたばこ政策支援部長が「10年のたばこ増税では財務省やJTの懐が潤った」と明言している。
KITTE博多(福岡市博多区) ※写真と本文は無関係です

これに関しては東洋経済編集部に以下の問い合わせを送った。

【東洋経済への問い合わせ】

週刊東洋経済7月2日号の特集「健康格差」についてお尋ねします。64ページの「まだまだできることがある 禁煙後進国ニッポンへの処方箋」という記事で、筆者の望月友美子 国立がん研究センターたばこ政策支援部長は「10年のたばこ増税では財務省やJTの懐が潤ったうえ、喫煙率も減少して一石三鳥だった」と説明しています。

しかし、増税で「JTの懐が潤う」でしょうか。たばこ税はあくまで税金ですから、増税によって税収が増えても、それはそのまま国や地方自治体に行ってしまうのではありませんか。JTにとって会計上の売上高を増やしてくれるかもしれませんが、利益には貢献しません。増税によって喫煙者が減少すれば、JTの経営にとってはむしろ打撃です。

「10年のたばこ増税」で「JTの懐が潤った」との記述は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。

また、当該記事の「こうした政策に億円単位の予算を投じるよりも、24時間無料で禁煙相談可能な窓口の設置や、たばこメーカーの宣伝に対抗すべく広告枠を確保し、大規模なメディアキャンペーンを行う方が得策だ」という文は、並立助詞の「や」を使って何と何を並立関係にしようとしているのか非常に分かりづらくなっています。

「設置」や「メディアキャンペーン」を行う--と考えれば辻褄は合いますが、「たばこメーカーの宣伝に対抗すべく広告枠を確保し」といった説明が間に入っているため、「設置」と対になっている言葉を探すのはかなり困難です。

筆者の望月氏は文章を書くプロではないはずです。この手の分かりにくい文をそのまま載せてしまったのは、編集部の担当者に責任があると思えます。

以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。

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「増税分を上回る値上げがあったから…」と筆者の望月氏は考えているのかもしれない。しかし、それで潤ったとすれば、増税ではなく「増税分を上回る値上げで潤った」だろう。だが、値上げは販売数量の減少を促すので、やはり「潤った」とは思えない。


※問い合わせに関しては、東洋経済からの回答が届けば紹介したい。今回の特集には、これ以外にも色々と問題を感じた。それらは「東洋経済『健康格差』キャベツ1玉200円に驚く藤田和恵氏」で論じる。


追記)結局、回答はなかった。

2016年6月26日日曜日

シーズン途中でも山田は「三冠」? 日経だけではないが…

ヤクルトの山田が打率、本塁打、打点でリーグトップに立った。これを受けて、26日の日本経済新聞朝刊スポーツ2面には「山田ついに三冠 3安打で打率も首位」という記事が出ている。しかし、シーズン途中で「三冠」とするのは引っかかる。まだ冠は1つも手にしていないはずだ。
福岡県うきは市の空き家 ※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

ヤクルト・山田が4打数3安打で打率3割3分6厘とし、巨人・坂本を抜いた。目下リーグ三冠の打棒は一回からさく裂し、今季のなかでも「一番いい打球」という逆転3ランを左翼席上段へ運んだ。

パ・リーグの好投手を苦にしなかったスイングで、リーグ戦再開後の2試合で5安打と、当たり前のように打ち続けている。「いつ崩れるかわからない」と慎重だが、来た球に直感で対応しているという打撃に、当面不安要素はなさそう。

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三冠王」とは「野球で、1シーズンに首位打者・打点王・本塁打王の三つのタイトルを獲得した選手」(デジタル大辞泉)だ。記事で「目下リーグ三冠」と書かれると、「目下リーグ優勝の広島(広島は現在、セリーグ首位)」と言われるのにも似た違和感を覚えてしまう。

ちなみに日刊スポーツも「ヤクルト山田哲人内野手(23)が3安打4打点を挙げ、打率、打点、本塁打でリーグトップの3冠に立った」と書いていたので、この使い方は日経だけではない。野球関係者の中にいると違和感がなくなる表現なのかもしれない。

ただ、スポニチは問題のない書き方になっていた。日経の記者は参考にしてほしい。

【スポニチの記事】~山田 打撃3冠部門で全部1位は自身初 右打者三冠王なら史上5人目

山田(ヤ)が逆転の25号3ランを含む3安打4打点。打率を・336に上げ、坂本(巨=・326)を抜いてリーグトップに立った。本塁打、打点は既に1位を独走しているが、打撃3冠部門でシーズン途中に全て1位は自身初めてだ。

3冠王は04年松中(ダ)まで7人(11度)が記録。うち右打者では38年秋の中島(巨)、65年野村(南海)、82、85、86年落合(ロ)、84年ブーマー(阪急)の4人(6度)。セの右打者で獲得すれば初めてになる。山田は現在、打撃11部門で1位。歴代3冠王の中で73年王(巨)はこの11部門のうち盗塁、二塁打を除く最多の9部門で1位になったが山田はどうか。

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スポニチの記事には「現時点で三冠」というニュアンスを感じない。しかも「三冠」が打率、本塁打、打点の主要3部門でのタイトルを指すことをきちんと説明している。

日経の記事にはそれがない。「野球の記事を読む人ならば『三冠』だけで分かる」と記者は反論するかもしれない。しかし、熱心な野球ファンが読むはずのスポーツ紙でもきっちり書いている。そこは見習った方がいい。


※日経の記事の評価はC(平均的)。

2016年6月25日土曜日

英国EU離脱なぜ「地域差」? 日経の解説に足りないもの

EU離脱を決めた国民投票の結果を細かく分析するには時間がなかったのは分かる。ただ、25日の日本経済新聞朝刊国際2面に岐部秀光記者が書いた「国民投票、分かれる判断 地域ごとに違い鮮明 イングランド、離脱の決め手」という記事の分析は物足りなかった。記事に付けた「英国の国民投票では地域によりEU『離脱』『残留』がはっきり分かれた」という地図を見ると、確かに地域ごとにかなり特徴がある。しかし、岐部記者は「イングランド」以外の分析をまともにしていない。
法務省旧本館(赤れんが棟)  ※写真と本文は無関係です

記事では以下のように解説している。

【日経の記事】

英国が欧州連合(EU)から離脱することを決めた国民投票では、地域ごとに有権者の判断が分かれる傾向が鮮明となった。離脱の決め手となったイングランドでは、離脱支持の票が53.4%を占めた。日産自動車の工場があるサンダーランドなど、北部や中部の工業都市を中心に離脱票が予想を上回る規模で積み上がった。

州別にみるとウエスト・ミッドランズ、イースト・ミッドランズなどでおよそ6割が離脱を支持した。一方、ロンドンは圧倒的に残留支持が多く、「イングランド対ロンドン」の様相となった

イングランドの地方は保守的な層が多い。これに対し、イングランドも含む英連合王国の首都であるロンドンは、世界中から多様な人材が集まり、他のイングランドの都市の住民とは価値観が異なる。5月のロンドン市長選挙でも、欧米の主要な首都のなかで初めてイスラム教徒の市長が誕生した。難民危機やテロを受けて欧州各国で反イスラムの機運が広がるなか、市民が「多様性」を重視する姿勢を示した。

拮抗が予想されていたウェールズも離脱が52.5%を獲得した。ウェールズは野党・労働党の支持者が多いとされ、残留を呼びかけてきた同党にとっての打撃となる。

ウェールズでも都市住民はEUにとどまることを望む声が多く、ウェールズの中心都市カーディフは残留が優勢だった。

英連合王国からの独立志向が強いスコットランドでは、残留が62%に達し、32の投票区すべてが残留を支持した。北アイルランドも残留支持が55.8%に達した。

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地図で目を引くのは「32の投票区すべてが残留を支持」したスコットランドだ。地図からは「ロンドン+スコットランド+北アイルランド」対「ロンドン除くイングランド+ウェールズ」という図式に見える。しかし岐部記者の解説を読んでも、なぜそうなるのか判然としない。

北アイルランドに関しては、同じ面の別の記事で「現在、英国の北アイルランドと隣国アイルランドの国境はないも同然で、住民はお互いを自由に行き来する。英国のEU離脱で国境管理が強まれば、経済に直接の打撃が及ぶ」と書いているので、この辺りが理由かなとは思う。

世界中から多様な人材が集まり、他のイングランドの都市の住民とは価値観が異なる」から残留支持が多いという説明はロンドンには当てはまるだろうが、スコットランドは違うだろう。結局、スコットランドに関してまともな説明がない。「地域ごとに違い鮮明」との見出しを付けているのに、これでは寂しい。

ついでに1つ指摘したい。記事中の地図には「(出所)英BBC、枠内はジブラルタルなど英領」との注記が付いている。枠は2つあって、小さな逆三角形の土地はジブラルタルだろう。しかし、もう1つの枠は何を表しているのか謎だ。

調べてみるとスコットランドに属する北部諸島らしい(形から推測しただけなので断定はできない)。地図に入れるなら、分かるように表記してほしい。できないのならば、枠は外して「地図に表記していないジブラルタルと北部諸島(スコットランド)は残留派が過半」などと注記を入れた方が好ましい。枠で囲って島の形だけ見せられても困る。

※記事の評価はC(平均的)。岐部秀光記者への評価も暫定でCとする。

「英EU離脱」で日経 大林尚欧州総局長が見せた事実誤認

英国のEU離脱が決まった。当然、25日の日本経済新聞朝刊でも大々的に報じている。その中でも目立つのが「震える世界 英EU離脱(上) 『開国型』成長モデルに試練」という解説記事だ。筆者は大林尚欧州総局長。問題の多い書き手であり、重要な記事を大林欧州総局長に任せるのは誤りだとこれまでも指摘してきた。今回も事実誤認と思える記述がある。日経に問い合わせを送ったので、問題の部分と併せて見てほしい。なお、日経の対応は「無視」だと思われる。
皇居周辺の桜(東京都千代田区)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

来週、ロンドン郊外でテニスのウィンブルドン選手権が開幕する。英国人選手にとり優勝は高根の花。英経済を牛耳る金融やサービス業の大半を海外資本が占めるさまは、外国人選手によるセンターコートの席巻になぞらえられたが、グローバル化の先頭走者であったのは間違いない。

【日経への問い合わせ】

欧州総局長 大林尚様

「英EU離脱 震える世界(上)」という記事についてお尋ねします。大林様は記事の中で「来週、ロンドン郊外でテニスのウィンブルドン選手権が開幕する。英国人選手にとり優勝は高根の花」と述べています。しかし、2013年には英国人のアンディ・マレー選手がウィンブルドンで優勝していますし、今年の第2シードであるマレー選手は今回も有力な優勝候補です。かつては「英国人選手にとり優勝は高根の花」だったかもしれませんが、現状には当てはまりません。

記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

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高嶺の花」とは「遠くから見るだけで、手に入れることのできないもの、あこがれるだけで、自分にはほど遠いもののたとえ」(デジタル大辞泉)だ。「英国人選手にとり優勝は高根の花」と言える状況が過去のものとなっているのは間違いない。

これは広く知られている話だ。大林総局長がそれを知らないのは仕方がない。だが、記事を任せるのは危険だ。日経の幹部はそこに早く気付いてほしい。

ちなみに最終版(14版)では「英国人選手にとり優勝は高根の花」となっているが、13版では「英国人選手にとり優勝は今年も高根の花」と「今年も」が付いている。「この説明はまずいのではないか」との議論が編集局内であり、若干の修正を加えたのかもしれない。だが、問題の解決には至っていない。大幅に直すと大林欧州総局長のご機嫌を損ねるとでも思ったのだろうか。


※記事の評価はD(問題あり)。大林尚欧州総局長への書き手としての評価はF(根本的な欠陥あり)を維持する。大林氏に関しては「日経 大林尚編集委員への疑問」「なぜ大林尚編集委員? 日経『試練のユーロ、もがく欧州』」「単なる出張報告? 日経 大林尚編集委員『核心』への失望」「日経 大林尚編集委員へ助言 『カルテル捨てたOPEC』」「まさに紙面の無駄遣い 日経 大林尚欧州総局長の『核心』」も参照してほしい。


追記)結局、回答はなかった。