2022年3月13日日曜日

台湾ではなく日本が「極東のウクライナ」と日経ビジネス山川龍雄編集委員は言うが…

日経ビジネス3月14日号に山川龍雄編集委員が書いた「ニュースを突く~日本は極東のウクライナ」という記事は説得力がなかった。中身を見ながら、あれこれツッコミを入れてみたい。

耳納連山に沈む夕陽

【日経ビジネスの記事】

人口約4000万人の主権を持った国家、ウクライナが侵攻を受けた。暴挙に出たのは、国連の拒否権を持つ安全保障常任理事国、ロシアだ。厳しい制裁を受けると、プーチン大統領は核兵器の使用までほのめかした。


◎「国連の拒否権を持つ安全保障常任理事国」?

まず言葉の使い方。「国連の拒否権を持つ安全保障常任理事国」が引っかかった。「国連の拒否権」が舌足らずだし「安全保障常任理事国」とはあまり言わない。「安保理常任理事国」だろう。これを踏まえて直すと「国連の安全保障理事会での拒否権を持つ常任理事国」といったところか。

続きを見ていく。


【日経ビジネスの記事】

我々は第2次世界大戦以来、見なかったような光景を目の当たりにしている。軍事大国の独裁者が理性を失えば、地球規模の危機に発展しかねないことを改めて思い知った。軍事侵攻と経済制裁のチキンレースの行方は誰にも分からない。


◎「第2次世界大戦以来、見なかったような光景」?

ここでは「我々は第2次世界大戦以来、見なかったような光景を目の当たりにしている」という説明が引っかかった。悲惨な戦争は「第2次世界大戦」の後も繰り返し起きている。シリア内戦は記憶に新しい。山川編集委員は何を指して「我々は第2次世界大戦以来、見なかったような光景」と言っているのか。

今回の記事で最も気になったのが以下のくだりだ。


【日経ビジネスの記事】

地球儀を半周動かせば、欧州で起きている惨事が、対岸の火事でないことが分かる。ロシア、中国、北朝鮮と対峙する日本は地政学上、「極東のウクライナ」とも呼べる存在だ

安倍政権時代、日露は27回の首脳会談を重ね、北方領土交渉に臨んだ。今思えば、当時の日本の見通しが、甘かったことが分かる。北方領土は今、ロシアによる軍事拠点化が進む。

北朝鮮は先ごろ、ウクライナ情勢の隙を突くかのように弾道ミサイルを発射した。今年に入って8回目だ。近年、実験を繰り返す兵器は、「極超音速」など、いずれも日本の防衛システムでは迎撃困難なものが目立つ。

ウクライナはもともと世界第3の核保有国だった。冷戦後、核を放棄することで、ロシアなどと和平の覚書を交わした。今回の情勢を見て、北朝鮮は「核保有こそ身を守る最強の手段」と意を強くしたはずだ。

そして中国。ウクライナ侵攻が続く中でも、台湾や尖閣諸島周辺で軍事的威嚇を止める気配はない。台湾有事となれば、沖縄などに米軍基地を置く日本は無関係ではいられない


◎「極東のウクライナ」は台湾では?

今回の「ウクライナ侵攻」に絡めて気になるのは、やはり「台湾」だ。しかし「極東のウクライナ」は「台湾」ではなく「日本」だと山川編集委員は言う。「極東」で最も「侵攻」の対象になりそうなのが「日本」なら分かる。だが、どう考えても「台湾」だろう。「日本」は韓国よりも下かもしれない。

なぜ「台湾」でなく「日本」が「極東のウクライナ」なのか説明が欲しかった。「ウクライナ侵攻」に絡めて気の利いたことを書こうとして捻り出したのが「日本は極東のウクライナ」という筋立てだろうか。だが、無理がたたって説得力を失う結果になっている。


※今回取り上げた記事「ニュースを突く~日本は極東のウクライナ

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00108/00169/


※記事の評価はD(問題あり)。山川龍雄編集委員への評価もDを維持する。山川編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経ビジネス「資産運用」は山川龍雄編集委員で大丈夫?
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/04/blog-post_20.html

尖閣問題の解説も苦しい日経ビジネス山川龍雄編集委員

http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/09/blog-post_16.html

「早めに新興国押さえたFIFA」が苦しい日経ビジネス山川龍雄編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/fifa.html

「タクシー券」の例えが上手くない日経ビジネス山川龍雄編集委員https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/blog-post_15.html

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