2021年3月23日火曜日

日経朝刊1面「東芝、不審ドローン捕獲事業」にwhenが抜けた理由

日本経済新聞の企業ニュース記事には5W1Hの1つである「when(いつ)」が抜けがちだ。23日の朝刊1面に載った「東芝、不審ドローン捕獲事業~米新興に出資」という記事でも「不審ドローン捕獲事業」へ「参入する」時期に触れていない。

錦帯橋

全文は以下の通り。

【日経の記事】

東芝は不審ドローン(小型無人機)を、ドローンで撃退するサービスに参入する。機体を自動で追尾し捕獲する技術を持つ米スタートアップに出資した。機体から出る電波を検知する東芝の技術と組み合わせ、空港や原子力発電所などでの利用を見込む。石油施設が攻撃されるなど海外ではドローンを使った破壊工作やテロが相次いでおり国内外のセキュリティー需要の高まりに対応する。

東芝子会社の東芝インフラシステムズが、米フォーテム・テクノロジーズ社(ユタ州)に1500万ドル(約16億円)出資した。出資比率は不明だが、同社は不審ドローン対策の製品・システム専業で、捕獲用ドローンに強みを持つ。不審機体を自動追尾してネットを放出してとらえ、安全な場所に移送する。両社の技術を組み合わせ、撃退システムを提供していく

東芝は不審ドローン対策システムの世界市場が20年度の数百億円規模から、30年度までに3000億円超に膨らむとみる。政府施設やスポーツ観戦のスタジアムなどでの需要も見込む。これまでスタートアップが中心だったこの分野にインフラの保守管理も手がける東芝のような大企業が参入することで市場が拡大する可能性がある。


◎「参入した」では?

東芝は不審ドローン(小型無人機)を、ドローンで撃退するサービスに参入する」と冒頭で書いているので「まだ参入していない」と取れる。では何を以って「参入」と見なすのだろう。今回の記事では「機体を自動で追尾し捕獲する技術を持つ米スタートアップに出資した」ことが「参入」に当たると読み取るのが自然だ。となると既に「出資した」のだから、「参入する」ではなく「参入した」と書くべきだ。

両社の技術を組み合わせ、撃退システムを提供していく」とも書いているので「撃退システム」の販売開始を以って「参入」と見なせるかもしれない(やや無理はある)。この場合も「参入」時期は分からない。

日経のニュース記事で「when」が抜けるケースは、うっかり型と確信犯型に分けられる。今回は後者だろう。「参入した」と過去形では1面に持ってくるには苦しい。そこで「参入する」と冒頭で打ち出し「参入」時期には触れなかったのではないか。

そもそも「出資した」ことを以って「参入」と見なせるかも疑問だ。子会社化したのならば「参入」でいい。だが「出資比率は不明」だ。

となると、どういう関係で事業を進めていくかが重要になる。そこは「両社の技術を組み合わせ、撃退システムを提供していく」としか書いていない。例えば東芝が5%出資と多少の技術供与をした上で「米フォーテム・テクノロジーズ社」が「撃退システムを提供していく」という話ならば「東芝は不審ドローン(小型無人機)を、ドローンで撃退するサービスに参入」とは感じられない。

東芝子会社の東芝インフラシステムズが、米フォーテム・テクノロジーズ社(ユタ州)に1500万ドル(約16億円)出資した」という話を大きく見せるために無理をした印象が今回の記事には拭えない。


※今回取り上げた記事「東芝、不審ドローン捕獲事業~米新興に出資」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210323&ng=DGKKZO70230140T20C21A3MM8000


※記事の評価はD(問題あり)

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