2021年1月8日金曜日

いつの間にか「アクティブ・ファンドの勧め」に…プレジデントオンラインの記事の危うさ

プレジデントオンラインに7日付で載った「サラリーマン投資家に大人気『インデックス投資』の見過ごされたリスク~手数料の安さだけで選んではダメ」という記事は問題が多かった。筆者である農林中金バリューインベストメンツ常務取締役兼最高投資責任者(CIO)の奥野一成氏を責めるのは酷だろう。アクティブファンドのマネージャーである奥野氏が「インデックス投資」を強引にでも問題視するのは理解できる。そうしなければ自らの存在意義がなくなってしまう。そこを分かった上で記事にツッコミを入れていきたい。

うきは市から久留米市へ流れる筑後川

【プレジデントの記事】

「忙しいビジネスパーソンは、インデックス・ファンドを買え」は本当に正しいのか?

この問いに対して結論から言いましょう。

正しい。ただしインデックスによります


◇   ◇   ◇


これは記事の冒頭だ。特に問題はない。とりあえず「結論」として頭に入れておいてほしい。少し飛ばして記事の続きを見ていく。


【プレジデントの記事】

さて、冒頭の問いに戻りましょう。インデックス・ファンドによる運用は、昨今の個人投資家の間で一つの大きな流派を形成しています。

その論拠としてよく言われるのが、

勝ち馬となるアクティブ・ファンドを事前に予測することはできない

アクティブ・ファンドは信託報酬(運用コスト)が高すぎる

というものです。

それはそれで一理あるのですが、そもそもこの「インデックス VS アクティブ」という対立軸以前に考慮すべき重要な点があることを指摘したいと思います。

インデックス・ファンドであろうと、アクティブ・ファンドであろうと、個別株投資であろうと、結局あるポートフォリオのパフォーマンスは、その構成企業の株価パフォーマンスで決まります。


◇   ◇   ◇


ここまではやはり問題なしだ。この後で「TOPIXに含まれている2,200社もの企業群の中には、企業価値増大にプライオリティを置かないような企業が相当数含まれているように思います」と奥野氏は「TOPIX」を問題視する。言いたいことはあるが、長くなるので取りあえず「TOPIX」型の「インデックス・ファンド」には問題ありとしよう。

その前提で記事の終盤を見ていく。


【プレジデントの記事】

私自身はアクティブ・ファンドのマネージャーとして米国株にも投資をしていますので、当然ながらS&P500に勝つつもりで仕事をしていますし、現にここまでのファンドの運用成績はS&P500を上回っています。

そして、S&P500という強いインデックスにも一つだけ弱点があると考えています(図6のチャートにもこの弱点が表れていますので、是非考えてみてください)。

更に、アクティブ投資に取り組むことは、皆さんにとっても学びになり、本業との美しいシナジーが得られると考えています。「会社に使われる日々から脱し一つ上のステージに行きたいビジネスパーソンは、アクティブ投資をしろ!」というのが、私の主張です。

次回の投稿では、このS&P500の弱点、そしてアクティブ投資の「隠れた効用」について述べたいと思います


◎いつの間にか「アクティブ投資をしろ!」へ

正しい。ただしインデックスによります」が「結論」だったはずだ。「TOPIX」の銘柄数が多過ぎてダメならば日経平均型の「インデックス・ファンド」を選ぶ手もある。日経平均以外の「インデックス」でもいい。選ぶべき「インデックス」を教えてくれれば話は終わりだ。しかし、そうはならない。

なぜか「会社に使われる日々から脱し一つ上のステージに行きたいビジネスパーソンは、アクティブ投資をしろ!」と「アクティブ投資」の勧めになってしまう。

そして「次回の投稿」では「アクティブ投資の『隠れた効用』について述べ」るらしい。これは何かの勧誘なのか。ちょっと怪しい臭いもしてくる。

それはともかく、奥野氏の主張の問題点を挙げておこう。記事では「勝ち馬となるアクティブ・ファンドを事前に予測することはできない」「アクティブ・ファンドは信託報酬(運用コスト)が高すぎる」という指摘に対して「それはそれで一理ある」としながらも「そもそもこの『インデックス VS アクティブ』という対立軸以前に考慮すべき重要な点があることを指摘したい」と話を逸らしている。

アクティブ投資」の勧めに話を移すならば、上記の2つの問題を避けて通れない。その弱点を奥野氏は十分すぎるほど分かっているのだろう。だから、ほんの少しだけ触れて実質的にはスルーしている。

運用コスト」が同じならば「インデックス VS アクティブ」は基本的に引き分けだ。「運用コスト」の高さを正当化するためには「勝ち馬となるアクティブ・ファンドを事前に予測」する必要があるが、その見分け方として広く知られている有用な方法はない。有用な方法があったとしても、それが広く知られれば有用性はなくなっていくという根本的な問題も抱えている。

なのになぜ「アクティブ・ファンド」を選ぶのか。合理的な選択としてあり得るとすれば「勝ち馬となるアクティブ・ファンドを事前に予測する独自のノウハウを持っている」場合だ。しかし「会社に使われる日々から脱し一つ上のステージに行きたいビジネスパーソン」の中でその「ノウハウ」を本当に持っている人物は1万人に1人もいないだろう。

しかし奥野氏は「アクティブ投資をしろ!」と迫る。その理由は「アクティブ投資に取り組むことは、皆さんにとっても学びになり、本業との美しいシナジーが得られる」といった抽象的なものだ。

この記事を信じて「アクティブ・ファンド」の購入に走る人は、ほぼ確実に金融業界にとってのカモだ。そうした人々を「アクティブ・ファンド」に誘導するのは奥野氏にとっては立派な仕事ではある。だとしても、やはり罪深い。


※今回取り上げた記事「サラリーマン投資家に大人気『インデックス投資』の見過ごされたリスク~手数料の安さだけで選んではダメ

https://president.jp/articles/-/41836


※記事の評価はE(大いに問題あり)

0 件のコメント:

コメントを投稿