2021年1月29日金曜日

日経 後藤達也・高見浩輔記者が書いた「先進国の債務、戦後最大」への注文

29日の日本経済新聞朝刊総合1面に載った「先進国の債務、戦後最大~IMF今年予測 世界の財政赤字、GDP比8.5%」という記事はいくつか引っかかる点があった。まず「戦後最大」に注文を付けたい。後藤達也記者と高見浩輔記者は以下のように説明している。

福岡市内を流れる室見川

【日経の記事】

財政支出の拡大を受けて政府債務残高は膨張が続く。19年に104.8%だった先進国の残高のGDP比は20年に122.7%に拡大した。

21年はさらに124.9%まで膨らみ、第2次世界大戦直後の1946年の124.1%を上回る。GDP見通しを上方修正したが、歳出も増えるため比率が歴史的な高水準に達する。米国は132.5%でユーロ圏は99.0%となる。世界全体では99.5%とほぼGDP並みの債務になる


◎過去最大の可能性も…

記事に付けたグラフには1900年以降の推移が出ていて「1946年」を頂点とする山の形が見える。「21年はさらに124.9%まで膨らみ、第2次世界大戦直後の1946年の124.1%を上回る」のであれば、遡れる範囲での「史上最大」となる可能性もあるのではないか。「戦後最大」は間違いではないが、「史上最大」だとすればそちらを前面に出すべきだ。

1900年より前に「史上最大」があるのかもしれない。その場合は、いつ以来の高水準なのかを読者に見せるべきだ。

さらに言えば、「先進国」に焦点を当てるのも不可解だ。「1946年」を上回るからかもしれないが、まずは「世界全体」で考えるべきだ。新型コロナウイルスの感染拡大は「先進国」に限った問題ではない。

世界全体では99.5%とほぼGDP並みの債務になる」とは書いているが、これが「戦後最大」なのかといった点には触れていない。そこは欲しい。

順序が逆になるが、最初の段落の説明にも気になる部分があった。


【日経の記事】

先進国の政府債務の膨張が続いている。国際通貨基金(IMF)によると2021年の国内総生産(GDP)比は124.9%の見通しで、20年比2.2ポイント上昇し戦後最大となる。世界の財政赤字がGDP比で8.5%と高水準となることが響く。新型コロナウイルス禍で家計や企業を支える財政拡大により、中央銀行の国債購入に依存する構図が一段と強まる。


◎「先進国」の話なのに…

先進国の政府債務」が「戦後最大となる」理由として「世界の財政赤字がGDP比で8.5%と高水準となることが響く」と書いている。「先進国の政府債務」に影響するのは「先進国の財政赤字」ではないのか。先進国以外の「財政赤字」は直接的には「先進国の政府債務」を増やさないと思える。


※今回取り上げた記事「先進国の債務、戦後最大~IMF今年予測 世界の財政赤字、GDP比8.5%

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210129&ng=DGKKZO68631750Z20C21A1EA1000


※記事の評価はD(問題あり)。後藤達也記者と高見浩輔記者への評価もDを据え置く。


※後藤記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「先進国の金利急低下」をきちんと描けていない日経 後藤達也記者
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_87.html

日経 河浪武史・後藤達也記者の「FRB資産 最高570兆円」に注文
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/03/frb-570.html

IT大手にマネーが「一極集中」と日経 藤田和明編集委員・後藤達也記者は言うが…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/11/it_26.html


※高見記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

説明不足が目立つ日経 高見浩輔記者の「真相深層」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2016/10/blog-post_15.html

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