2021年1月25日月曜日

「女性限定の反撃」は「罪」? 小田嶋隆氏が日経ビジネスで展開した無理筋

コラムニストの小田嶋隆氏はやはり衰えが目立つ。「吉村洋文大阪府知事」を嫌っているのは知っているし、批判するのも自由だが、内容に無理がある。話題となった同知事の「ガラスの天井」発言に関して1月25日号の日経ビジネスで小田嶋氏は以下のように書いている。

西鉄大牟田線と筑後川

【日経ビジネスの記事】

さて、報道を受けて、早速幾人かの著名人がツッコミを入れた。こんなことも知らないのか、と。まあ、当然だ。ところが、このツッコミに対して吉村知事は1月10日《蓮舫議員や太田議員が、「吉村が『ガラスの天井』を間違って使ってる!」と一生懸命だが、僕が役所内の「ガラスの天井」を打ち破る為に何をしてるのかも知らないんだろうな。その意味で使ってない。記者会見では、いつ割れてもおかしくない状態を「ガラス」に喩えただけ。会見の中身を見たら明らか。》というツイートで反撃に転じたのである。

この弁明はいかにも苦しい。よって、第3の罪として「非を認めない罪」を挙げたい。これが一番大きいかもしれない。この程度のミスは、「ごめんごめん知りませんでした。テヘペロ」とでも言っておけば一件落着、かえって好感度が上がるくらいなものだ。

もうひとつ指摘したいのは、知事が蓮舫議員と太田房江議員といういずれも女性からのツッコミにのみ反撃している点だ。知事は「一生懸命」と書いているが、両議員とも、一回ずつしか突っ込んでいない。この女性限定の苛烈な反撃は、まさにガラスの壁そのものだ。いや、ガラスではないな。もっと目に見えやすいし、それに強いにおいがある。「イソジンの壁」と呼ぼう。これが最後の罪だ。うがいをして、口をきれいにするのがよいと思いますよ。


◎本当に「ミス」なのか?

吉村知事の言葉の使い方を小田嶋氏は記事の中で「誤用」と断定している。そうだろうか。「『ガラスの天井』は、女性の社会進出を語る文脈の中で『見えない壁』として立ちはだかる障害をガラスになぞらえた慣用表現」という理解に異論はない。だが、そのことは「ガラスの天井」を他の意味での例えに使えなくするものではない。「その意味で使ってない。記者会見では、いつ割れてもおかしくない状態を『ガラス』に喩えただけ」との吉村知事の弁明は成立する。

ガラスの天井」は「女性の社会進出を語る文脈の中」でしか使えないのか。他の意味で使うのは「誤用」と誰が決めたのか。どこかの辞書にそう書いてあるのか。「ガラスの天井」を「女性の社会進出を語る文脈の中」で使うことに慣れている人にとって吉村知事の発言に違和感があるのは分かる。しかし、それが「誤用」かどうかは別問題だ。

別の言葉で考えてみよう。「ガラスのハート」と言えば「傷つきやすい心」の意味で使うのが一般的だろう。だが、他の意味で使うのが「誤用」とは言えない。「あいつは何考えてるかすぐ分かるよ。心の中が外から丸見えなんだ。あれはガラスのハートだな」と言われたらどうだろう。違和感はあるかもしれない。だが日本語としての明らかな誤りはない。

次に「女性からのツッコミにのみ反撃している点」について考えてみたい。個人的には何ら問題がないと思える。吉村氏がこの件で1万人から批判を受けたとしよう。その中で特に反論したい2人を選んで「反撃」するケースを考えてみたい。この場合、男女1人ずつにすべきなのか。特に問題ある主張をしていると感じた2人を選んだらともに女性だった場合はどうするのか。1人を外して別の男性を選ばなければならないのか。

誰に「反撃」しようと吉村知事の自由だ。批判してきた1万人のうち9990人が女性だったとしても「反撃」対象を2人選ぶ時には男女1人ずつにしなければならないのか。「反撃」対象が1人の場合はどうするのか。その場合は男性にしろという話なのか。

報道を受けて、早速幾人かの著名人がツッコミを入れた」と小田嶋氏は書いているが、ざっとネットニュースなどを見てみても「蓮舫議員と太田房江議員」以外の名前は見つけられなかった。「幾人」とは何人なのか。他に誰がいるのか。「幾人」が例えば5人で全員女性だったらどうすべきなのか。

それに「蓮舫議員と太田房江議員」の共通属性は「女性」だけではない。2人はともに「議員」であり「著名人」であり「中高年」でもある。「女性限定の苛烈な反撃は、まさにガラスの壁そのものだ」と小田嶋氏は言うが、ならば「議員限定の苛烈な反撃」も「ガラスの壁」なのか。

この4つの属性に関して「ガラスの壁」をなくすには「反撃」対象を1人は「男性、議員、著名人、中高年」にして、もう1人を「女性、非議員、一般人、若者」といった具合にしなければならない。属性は他にもたくさんある。「反撃」対象の選定にはそんなに面倒な条件があるのか。少し考えれば小田嶋氏も分かるはずだが…。


※今回取り上げた記事「小田嶋隆の『pie in the sky』~ 絵に描いた餅べーション~ガラスの天井に懺悔せよ

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00106/00100/


※記事の評価はD(問題あり)。小田嶋隆氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

どうした小田嶋隆氏? 日経ビジネス「盛るのは土くらいに」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/09/blog-post_25.html

山口敬之氏の問題「テレビ各局がほぼ黙殺」は言い過ぎ
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/06/blog-post_10.html

小田嶋隆氏の「大手商業メディア」批判に感じる矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_12.html

杉田議員LGBT問題で「生産性」を誤解した小田嶋隆氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/lgbt.html

「ちょうどいいブスのススメ」は本ならOKに説得力欠く小田嶋隆氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/ok.html

リツイート訴訟「逃げ」が残念な日経ビジネス「小田嶋隆のpie in the sky」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/pie-in-sky.html

「退出」すべきは小田嶋隆氏の方では…と感じた日経ビジネスの記事https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_16.html

「政治家にとってトリアージは禁句」と日経ビジネスで訴える小田嶋隆氏に異議ありhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2020/12/blog-post_10.html

「利他的」な人だけワクチンを接種? 小田嶋隆氏の衰えが気になる日経ビジネスのコラムhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2020/12/blog-post_15.html

根拠示さず小林よしのり氏を否定する小田嶋隆氏の「律義な対応」を検証https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/12/blog-post_28.html

小田嶋隆氏が日経ビジネスで展開した「コロナ楽観論批判」への「反論」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/12/blog-post_29.html

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