2021年1月3日日曜日

「日経平均3万円の条件」に具体性欠く日経 梶原誠氏「コメンテーターが読む2021」

3日の日本経済新聞朝刊特集面に載った「コメンテーターが読む2021~日経平均3万円の条件 成長するか死ぬかの選択」という記事は問題が多かった。筆者の梶原誠氏に関しては「言いたいことが枯渇した書き手」と評してきた。今回の記事も無理に話を捻り出している感は否めない。そもそもテーマである「日経平均3万円の条件」が漠然としている。

福岡市内を流れる室見川

最初の段落を見ていこう。

【日経の記事】

2021年の株式市場では、日経平均株価で3万円の大台が意識されるだろう。実現すれば1990年以来の高水準だが、達成には条件がある。企業が生き残りを目指す「守り」から、成長をねらう「攻め」に転じることだ


◎具体的な基準は?

企業が生き残りを目指す『守り』から、成長をねらう『攻め』に転じること」を「日経平均3万円の条件」としているが「転じ」たかどうかを判断する基準を示していない。これでは「条件」として意味がない。

念のために「攻め」と「守り」に触れたくだりを見ていこう。


【日経の記事】

今や投資家は、経営者の現金の使い方の巧拙を見極め、その企業の株を買うのかどうか判断しようとしている。

日本企業の資金の使い方は、投資家の不満を招いてきた。米主要企業はこの20年、研究開発費を4倍以上に増やしている。売上高の伸びである3倍を大きく上回るペースだ。これに対し、日本企業の研究開発費の伸びは売上高並みの2倍弱にとどまった。


◎「研究開発費」で見る?

『攻め』に転じ」たかどうかは「研究開発費」で見るのだろうか。だとしたら、どの程度の「伸び」が2021年度に必要なのか。そこは欲しい。

さらに引っかかるのは「この20年」で見ると「日本企業の研究開発費の伸び」は低かったのに、株価は概ね上昇基調だったことだ。結果として再び「日経平均3万円」をうかがう展開になっている。「投資家の不満を招い」ても回復を実現したのだから、このままでも「日経平均3万円」の達成はあり得るのではないか。違うと梶原氏が考えるのなら、その理由も示してほしかった。

記事はさらに漠然とした話で終わる。


【日経の記事】

米国もインドも韓国も、昨年は株式相場が過去最高値を更新した。日経平均が3万円を回復したところで、89年末につけた最高値(3万8915円)の8割にも届かない。企業が改革しないと世界との差はもっと広がる。競争のルールが激変するコロナ後は、失地を回復する最後のチャンスかもしれない

コロナが企業に迫った「生きるか死ぬか」の局面は終わりが見えてきた。だからといって、日本企業にほっとしている余裕はない。今年迫られるのは「成長するか死ぬか」の厳しい選択だ


◎「生きるか死ぬか」に「終わり」は見えてる?

生きるか死ぬか」から、今年は「成長するか死ぬか」に移っていくと梶原氏は言う。だったら「『生きるか死ぬか』の局面は終わりが見えて」いない。「「成長する(ことで生き続ける)か死ぬか」という状況は「生きるか死ぬか」に含まれるはずだ。

競争のルールが激変するコロナ後は、失地を回復する最後のチャンスかもしれない」と考える理由も謎だ。そもそも「コロナ後」の期間が分からない。22世紀や23世紀も「コロナ後」に入るのか。だとすれば、そんな長期で見て「最後のチャンスかもしれない」と訴えて意味があるのか。

期限が決まっているのならば「最後のチャンス」を考える意味はある。サッカーで言えばロスタイムにフリーキックの機会を得た時に「最後のチャンスかもしれない」と思うのはもっともだ。

だが、終わりの見えないゲームであれば「最後のチャンス」かどうかを論じてもほぼ無意味だ。日本が30世紀になっても40世紀になっても続いていくと想定すると「2020年代が日本にとって失地を回復する最後のチャンス」である可能性はほぼゼロだ。この先、何百年と続く歴史の中でノーチャンスのままと想定すべき理由はない。

分かったような顔をして何か重要な分析をしているように見せなければならないという事情が梶原氏にあるのは分かる。その中で具体性に欠ける話で行数を稼いで何とか記事にまとめたのだろう。だから、こんな内容になってしまった。そのことで梶原氏を責めるのは酷だ。

そろそろ後進に道を譲ってほしい。梶原氏本人が決断できないのならば、周りが背中を押してあげるべきだ。梶原氏自身も書き続けることが辛いと本心では感じているのではないか。


※今回取り上げた記事

コメンテーターが読む2021~日経平均3万円の条件 成長するか死ぬかの選択


※記事の評価はD(問題あり)。梶原誠氏への評価はE(大いに問題あり)を据え置く。梶原氏については以下の投稿も参照してほしい。

日経 梶原誠編集委員に感じる限界
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_14.html

読む方も辛い 日経 梶原誠編集委員の「一目均衡」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post.html

日経 梶原誠編集委員の「一目均衡」に見えるご都合主義
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_17.html

ネタに困って自己複製に走る日経 梶原誠編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_18.html

似た中身で3回?日経 梶原誠編集委員に残る流用疑惑
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_19.html

勝者なのに「善戦」? 日経 梶原誠編集委員「内向く世界」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_26.html

国防費は「歳入」の一部? 日経 梶原誠編集委員の誤り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_23.html

「時価総額のGDP比」巡る日経 梶原誠氏の勘違い
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/gdp.html

日経 梶原誠氏「グローバル・ファーストへ」の問題点
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/blog-post_64.html

「米国は中国を弱小国と見ていた」と日経 梶原誠氏は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_67.html

日経 梶原誠氏「ロス米商務長官の今と昔」に感じる無意味
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/04/blog-post.html

ツッコミどころ多い日経 梶原誠氏の「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/deep-insight.html

低い韓国債利回りを日経 梶原誠氏は「謎」と言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_8.html

「地域独占」の銀行がある? 日経 梶原誠氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_18.html

日経 梶原誠氏「日本はジャンク債ゼロ」と訴える意味ある?
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_25.html

「バブル崩壊後の最高値27年ぶり更新」と誤った日経 梶原誠氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/27.html

地銀は「無理な投資」でまだ失敗してない? 日経 梶原誠氏の誤解
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/blog-post_56.html

「日産・ルノーの少数株主が納得」? 日経 梶原誠氏の奇妙な解説
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_13.html

「霞が関とのしがらみ」は東京限定? 日経 梶原誠氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/deep-insight.html

「儒教資本主義のワナ」が強引すぎる日経 梶原誠氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/deep-insight_19.html

梶原誠氏による最終回も問題あり 日経1面連載「コロナ危機との戦い」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/03/1.html

色々と気になる日経 梶原誠氏「Deep Insight~起業家・北里柴三郎に学ぶ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/04/deep-insight.html

「投資の常識」が分かってない? 日経 梶原誠氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/04/deep-insight_16.html

「気象予測の力」で「投資家として大暴れできる」と日経 梶原誠氏は言うが…https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/07/blog-post_16.html

「世界がスルーした東京市場のマヒ」に無理がある日経 梶原誠氏「Deep Insight」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/deep-insight.html

「世界との差を埋める最後のチャンス」に根拠欠く日経 梶原誠氏「Deep Insight」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/11/deep-insight.html

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