2020年4月18日土曜日

「外貨建ての保険商品」を前向きに紹介する日経 渡辺淳記者の罪

日本経済新聞の渡辺淳記者は金融業界の回し者と見ておいた方が良いだろう。18日の朝刊マネー&インベストメント面に載った「円・ドル…為替が動くワケ~政策が左右、外貨運用はリスクも」という記事で「外貨建ての保険商品」を前向きに紹介しているからだ。
筑後川と菜の花(福岡県久留米市)
     ※写真と本文は無関係です

そのくだりを見てみよう。

【日経の記事】

人生100年時代を見据えた資産運用を考える時、利回りが見込める外貨投資は貴重な運用先となる。たとえば、外貨建ての保険商品。金利が低い日本円で運用するより、比較的高い外貨で運用すれば途中で解約しても多くの返戻金が見込める。数年前には豪ドル建ての保険が人気だった。

資源の輸出先として依存度の高い中国が減速すると、豪ドルは昨夏に対円で約10年ぶりとなる安値をつけた。返戻金を円換算した受け取り額が目減りするため、家計にとっては痛手となる。


◎「貴重な運用先」?

利回りが見込める外貨投資は貴重な運用先となる」としても、その後に「たとえば、外貨建ての保険商品。金利が低い日本円で運用するより、比較的高い外貨で運用すれば途中で解約しても多くの返戻金が見込める」と解説するのは感心しない。

外貨建ての保険商品」と言えば、無駄に手数料が高い金融商品の代表格ではないか。「外貨建て保険 投資に不適な“高”手数料 運用するなら外債で十分」という週刊エコノミストの記事(2019年10月21日付)で横川由理記者は以下のように書いている。

外貨建て保険は、保険料の払い込みから保険金の支払いまで、すべて外貨建てで行われる。元本保証なのは外貨ベースであって、円での保証はない。保険金や解約返戻金を円で受け取る場合、円高になっていると元本割れするリスクがある。円から外貨、外貨から円に両替する際に為替手数料もかかる。それにもかかわらず、銀行で資産運用の相談を行うと真っ先に勧めてくるのは、銀行が得る販売手数料が群を抜いて高いからだ。販売手数料は円建て保険では保険料の2~3%、投資信託は基準価額の0~3%程度なのに対し、外貨建て保険は保険料の6~8%にものぼる

手数料が高くても「外貨建ての保険商品」には、それを上回る魅力があると考えているのならば、渡辺記者はそこを説明すべきだ。そんな魅力があるとは思えないが…。

次に「金利」に関する説明に注文を付けたい。

【日経の記事】

為替を「投機」対象にするヘッジファンドや個人投資家の存在も大きい。一般に短期的な利益を追求しているので、ヘッジファンドや「ミセス・ワタナベ」と呼ばれるような個人投資家は金利差に注目する。日本の個人投資家の間では、金利の低い円よりも豪ドルやトルコリラといった高金利通貨が人気だ



◎「高金利通貨」はいいことばかり?

まず「豪ドル」は「高金利通貨」なのかとの疑問が浮かぶ。オーストラリアの政策金利は過去最低の0.25%。「豪ドル」には確かに「高金利通貨」というイメージがあったが、現状では当てはまらない気がする。

それより問題なのは「金利」に関する説明だ。記事に付けた「為替相場の基本的な変動要因」という表では「金利差 高金利通貨は通貨高に」となっている。

間違ってはいないが、これだと投資初心者には誤解を与えてしまう。「高金利通貨」の方が低金利通貨より金利収入は多くなる上に「通貨高に」なるのであれば選択は容易だ。資金は全て「高金利通貨」で運用すべきとなる。金利が低い上に通貨安となる「低金利通貨」を持つべき理由はない。

実際には「高金利通貨」で「高金利」のメリットを享受しようとすると中長期的には通貨安で相殺されやすい。つまり「高金利通貨は通貨『安』に」となる。

悩ましいのは、だからと言って「高金利通貨は通貨高に」という説明が誤りとは言えないことだ。利上げは短期的には「通貨高」を招きやすい。なので渡辺記者も「高金利通貨は通貨高に」と書いたのだろう。

この辺りは分かりにくい面がある。だが、為替市場を見ていく上では重要な要素なので、丁寧に説明してほしかった。


※今回取り上げた記事「円・ドル…為替が動くワケ~政策が左右、外貨運用はリスクも
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200418&ng=DGKKZO58155300W0A410C2PPD000


※記事の評価はD(問題あり)。渡辺淳記者への評価はDで据え置く。渡辺記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

肝心なことが抜けた日経「保険販売、手数料が高騰」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2016/09/blog-post_76.html

ぐるなび会長の寄付で「変わる相続」語れる? 日経「ポスト平成の未来学」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/blog-post.html

ATMの管理に「月700万円」もかかる? 日経「曲がり角のATM(上)」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/atm700-atm.html

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