2020年4月30日木曜日

ドンキの価格設定は「市場機能を生かす知恵」? 日経「コロナと資本主義(2)」

30日の日本経済新聞朝刊1面に載った「コロナと資本主義(2)マネー暴走、未曽有の乱高下~危機が問う市場の賢さ」という記事は理解に苦しんだ。「ドン・キホーテ」の価格設定を「危機においても市場機能を生かす知恵」として紹介しているが、なぜそう言えるのか謎だ。
姪浜港(福岡市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

「なるほど、その手があったか」。3月上旬、短文投稿サイト、ツイッターである写真が話題をさらった。マスク売り場の値札に「1点目まで298円、2点目以降は9999円になります」と書かれている。ディスカウント店「ドン・キホーテ」での風景だ。

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、マスクはすぐ品切れになってしまう。そこで価格設定を工夫して買い占めや転売目的の大量購入など「必要性の低い需要」を抑え、実際に利用したいひとにマスクが渡りやすくした危機においても市場機能を生かす知恵。このツイートは約19万の「いいね」を集めた。

自由な取引のなかで価格が変動し、需要と供給が適切に調整されていく――。こんなふうに市場メカニズムが機能しないと、資本主義は本来の柔軟さを発揮できない。だが、新型コロナウイルスが欧米にも広がったショックから、世界の金融市場は2月下旬以降、異常な動きを繰り返した。


◎「市場機能」が大切と説くなら…

自由な取引のなかで価格が変動し、需要と供給が適切に調整されていく――。こんなふうに市場メカニズムが機能しないと、資本主義は本来の柔軟さを発揮できない」と説くならば、そもそも「転売目的の大量購入」を否定すべきではない。

マスクの価値が1枚1万円なのに、ある場所では300円で売られていたら、大量に仕入れて市場価格で販売するのは合理的だ。いわゆる裁定取引だ。結果として市場価格を大幅に下回る商品は短時間で姿を消す。「需要と供給が適切に調整されていく」と言い換えてもいいだろう。「適切」をどう考えるかという問題は残るが…。

1点目まで298円、2点目以降は9999円」という価格設定が「市場機能を生かす知恵」かどうかは脇に置いて「転売目的の大量購入」を防ぐ効果があるのかを考えてみたい。マスクの市場価値は1000円と仮定する。

この場合「2点目以降は9999円」には一定の防止効果があるが、それは「購入は1人1枚限り」と同じだ。「買い占め」を防ぐ効果では「1人1枚限り」が上回る。

転売目的の大量購入」をきっちり防ぎたいのならば、「1点目」も1000円以上にすべきだ。「298円」で購入したマスクだと「転売」で利益を得る余地がある。

ドン・キホーテ」のやり方は「なんで1枚だけなんだ。ウチはどうしても2枚必要なんだ」という客への対応としては効果があるだろう。しかし「市場機能を生かす知恵」といった類の話ではないと思える。


※今回取り上げた記事「コロナと資本主義(2)マネー暴走、未曽有の乱高下~危機が問う市場の賢さ
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200430&ng=DGKKZO57506400R00C20A4MM8000


※記事の評価はD(問題あり)

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