2016年11月22日火曜日

危ないことをサラッと書く日経 清水功哉編集委員への期待

「記事を手堅くまとめる能力は持っているが、それ以外に見るべきところがない書き手」と日本経済新聞の清水功哉編集委員を評してきた。しかし22日の日経夕刊マーケット・投資2面に載った「マネー底流潮流~日米財政+黒田緩和の威力」という記事を読んで、少し見方が変わった。かなり危ないことをサラッと書いていたのが驚きだった。
旧下関英国領事館(山口県下関市) ※写真と本文は無関係です

記事の全文を見た上で、清水編集委員に「お願い」をしてみる。

【日経の記事】

「金利が上に跳ねる状況では必要に応じて使う」。黒田東彦日銀総裁は18日こう語り、前日に初めて実施した指定価格での国債無制限購入(指し値オペ)を今後も機動的に手掛ける考えを示した。当然だろう。日米の財政政策と日銀の金利安定策がうまくかみ合えば、経済刺激が期待できそうだからだ。このコラボの実現に向けて日銀は長期金利上昇の抑制に努めるだろう。

「これまでにも増して構造改革はむろんとして金融政策に財政政策をうまく組み合わせることに留意する必要がある」。安倍晋三首相は8日の経済財政諮問会議でこう強調した。金融政策に限界が指摘されるなか、財政政策と金融緩和の連携が重要になるとの認識の表明である。

黒田日銀総裁も14日、呼応するかのように語った。「政府は先般の補正予算の成立を受け事業規模28兆円の大規模経済対策を着実に推進していくとしている。中央銀行が物価安定目標の実現に向けて緩和的な金融環境を整えるもとで、政府が積極的な財政支出を行う場合には、両者が相乗的な効果を発揮し、景気刺激効果がより強力になる」

だからこそ日銀が9月に導入した長期金利誘導策が重みを持つ。日銀が長期金利をゼロ%程度に安定させ、政府は国債発行で低コスト資金を調達。財政支出を実施するという協調が可能になるのだ

財政政策への関心がより強まっているのが米国だ。大統領選挙で減税やインフラ投資を重視するトランプ氏が勝利したからだ。米景気が上向けば日本の対米輸出が増える可能性があるが、それだけではない。米国の財政支出拡大の方向性が見えてきたことで同国の長期金利が上昇、円売り圧力が強まっている。日本経済にとって追い風だ。

問題は米長期金利上昇が日本の長期金利に強い上げ圧力をかけ始めた点。日米金利差が再び縮小に転じれば、為替相場が円高方向に戻りかねない。そんな事情を背景に日銀が17日に手掛けたのが指し値オペだった。日銀が9月に長期金利誘導策の開始を決めたときに導入した「武器」だ。

安倍財政と黒田緩和の連携が財政支出拡大を通じて内需を刺激し、トランプ財政と黒田緩和のコラボが円安を通じて外需を刺激する――。そんな構図になれば景気押し上げ効果が期待できる。黒田日銀の長期金利コントロールの手腕に注目が集まる。

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目に付いたのは「日銀が長期金利をゼロ%程度に安定させ、政府は国債発行で低コスト資金を調達。財政支出を実施するという協調が可能になるのだ」というくだりだ。「日銀が長期金利を強引にでもゼロ%程度に抑え込んで政府の国債発行を支援し、政府は日銀の後押しを受けて財政支出を拡大すべきだ」と清水編集委員は考えているようだ。つまり「財政規律なんて基本的にどうでもいい」というスタンスだ。

清水編集委員の主張に賛成はしないが、当たり障りのない話を書くよりずっといい。ただ、上記の記事には、「景気押し上げ」がなぜ必要なのかという視点が欠けている。

景気は悪いより良い方がいい。だが、先進国で最悪と言われる財政状況の中で、日銀の助けを借りてまで国債発行を増やして景気を押し上げるべきなのか。日本が恐慌に陥る寸前ならばまだ分かる。だが、雇用情勢はかなり良く、経済危機にも見舞われていない現状で、「財政支出拡大を通じて内需を刺激」したがる理由がよく分からない。

「景気が良くなれば税収が増えて財政問題も解決する」と清水編集委員は考えているのかもしれない。過去の経緯を見る限り厳しそうな気はするが、それが理由ならそれでもいい。「かなり無茶なことをしてでも景気を良くしなければならない理由」は記事に入れてほしかった。

清水編集委員には「財政規律なんて基本的にどうでもいい派」の論客として記事を書き続けてもらいたい。自分と考えが違うからと言って、書き手としての清水編集委員を否定するつもりはない。「危なそうに聞こえる話だけど、清水編集委員の解説を読むと『これもアリかな』ってなっちゃうんだよなぁ…」と思わせてくれる記事を世に送り出してほしい。


※記事の評価はC(平均的)。清水功哉編集委員への評価もCを据え置く。清水編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

企業にデフレ心理? 日経 清水功哉編集委員への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_28.html

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