2015年12月26日土曜日

日経「金相場、下げ止まり」で筒井恒記者に感じた不安(1)

26日の日本経済新聞朝刊マーケット総合2面のアタマ記事「ポジション~金相場、下げ止まり  米利上げで『安全資産』買い戻し インドなど現物需要も」は、筆者である筒井恒記者の市場に関する理解度に不安が残る内容だった。本来ならば、商品部の担当デスクがきちんと修正すべきだが、デスクも分かっていないのだろう。そこに日経の抱える問題の根深さがある。

福岡市博物館(福岡市早良区) ※写真と本文は無関係です
まず、最も問題があるくだりから見ていく。

【日経の記事】

ニューヨーク市場では米国の利上げ決定前日の15日、金の売り建玉が14万枚を超えていた。過去最大の規模にまで膨らんだことで、買い戻しが入りやすい状態になっている。金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は「買い戻しが散発して金相場は徐々に切り上がっていく」とみる。ニューヨーク相場は利上げ公表でいったん売られて安値をつけた17日から25ドル上げている。

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ニューヨーク市場では米国の利上げ決定前日の15日、金の売り建玉が14万枚を超えていた」と書いてあったら、普通は「NY金市場全体で売り建玉が14万枚超」と理解するだろう。まずは、この前提で考えてみる。NY金市場全体の売り建玉が14万枚ならば、買い建玉も必ず14万枚になる。「過去最大の規模にまで膨らんだことで、買い戻しが入りやすい状態になっている」との説明はおかしくないが、裏返しで買い方の手じまい売りも出やすくなる。「いや、売りは出にくくて買いのみが入りやすい理由がある」と筒井記者が考えているのならば、その理由を説明すべきだ。

そもそもNY金の売り建玉が12月15日に14万枚程度だったのかどうか怪しい。調べてみると、当時の総取組高(=売り建玉の合計)は約39万枚。大口投機家は買い建玉が約15万枚で売り建玉が約14万枚のようなので、記事で言う「14万枚超」は大口投機家に限った売り建玉の可能性が高い。しかし、記事中にそうした説明はない。

また、大口投機家の売り建玉が14万枚超だとしても、それを上回る買い建玉がある。これも「15万枚の買い建玉を手じまう過程で出てくる売りは気にしなくていいのか」との疑問が残る。記事からは、売り建玉だけが一方的に膨らんでいるような印象を受ける。

日経には以下の内容で問い合わせを送っておいた。日経のメディアとしての体質を考慮すると回答が届く可能性は極めて低い。

【日経への問い合わせ】

「金相場、下げ止まり」という記事についてお尋ねします。記事では「米国の利上げ決定前日の15日、金の売り建玉が14万枚を超えていた。過去最大の規模にまで膨らんだことで、買い戻しが入りやすい状態になっている」と書かれています。しかし、当時のNY金市場の売り建玉は39万枚に達していたようです。大口投機家の売り建玉は「14万枚超」ではありますが、記事の書き方だと「NY金市場全体の売り建玉が14万枚超」と判断するしかありません。記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠を教えてください。

付け加えると、「14万枚超」が市場全体の売り建玉だった場合は同数の買い建玉が必ず存在するので、「買い戻しが入りやすい状態」になることの裏返しとして手じまい売りも出やすくなります。一方「14万超」が大口投機家の売り建玉であれば、同時期に大口投機家の買い建玉も15万枚を超えていました。この場合も「買い建玉を手じまう動きにはなぜ注目しないのか」との疑問が残ります。「過去と比べて買い越し幅が小さい」といった事情があれば、その点にも触れるべきでしょう。

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※この記事に関しては(2)でさらに指摘を続ける。

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