2015年12月3日木曜日

「ラップ型投信」になぜ好意的? 日経 野口和弘記者の罪(1)

2日の日本経済新聞朝刊マネー&インベストメント面に「躍進ラップ型投信、実力は  タイプ3種類、成績様々」という投資初心者が読んではいけない記事が出ていた。筆者の野口和弘記者はラップ型投信を好意的に紹介し、選び方も指南してくれている。しかし、ラップ型投信は明らかにダメな投資商品だ。野口記者は無知なのか、それとも業界の回し者なのか。記事を見ながら考えていこう。

【日経の記事】
英彦山(福岡県添田町) ※写真と本文は無関係です

資産運用を金融機関に一任するラップ口座を投資信託の形にした「ラップ型投信」が急拡大している。少額投資非課税制度(NISA)などを機に1本で株式や債券などにリスクを分散して投資したい個人の入門商品となっている。同じラップ型投信でもファンドの運用方法や値動き、コストは異なる。運用をすべて任せられる納得の1本を見つけるには、中身もしっかり比較した方がよさそうだ。

「投資を始めたいが、何を買えば良いか分からない」「投資に手間暇をかけたくない」。そんな投資初心者たちのニーズをつかんだのがラップ型投信だ。

ドイチェ・アセット・マネジメント資産運用研究所によると、ラップ型投信の合計残高は10月末で9286億円と1年で3.5倍に膨らんだ(グラフA)。ドイチェ・アセットの藤原延介氏は「ラップ口座の簡易版」と呼ぶ。

ラップ口座とは証券会社や信託銀行などの営業員と「年○%なら損しても仕方ない」という範囲を相談すれば、金融機関が投資先や資産配分を決め、預かった資金を安定運用するサービスだ。ただラップ口座は最低で300万~500万円からしか投資できない。そこで1万円程度からでも投資できる商品として、ラップ型投信が誕生した。

両者はコストや選択できる運用の幅も違う。ラップ口座は購入時の手数料が原則かからず、運用手法も多様だ。簡易版であるラップ型投信は、購入時に1~2%の手数料を払う場合が多い。シリーズごとに安定型、普通型、成長型などあらかじめ定められた3つ程度のタイプから選ぶ。

「長期運用ならラップ型投信の方が安くなりやすい」(藤原氏)という。ラップ型投信は残高に応じた管理手数料(信託報酬)がラップ口座より0.5~1%安いものが多いからだ。

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これだけ読むと、投資初心者にはラップ型投信が向いているのかなと思ってしまいそうだ。「1万円から投資できるし、長期運用ならラップ口座より手数料も安いし…」などと考える読者がいても不思議ではない。しかし、ラップ型投信は結局、コスト高めの投信に過ぎない。記事中の「代表的なラップ投信シリーズ」という表を見ると、7本の投信の信託報酬は1.04~2.05%で、お世辞にも安くない。おまけに5本は購入時にも手数料がかかる。

例えば一番上に出ている「コア投資戦略ファンド」は購入時手数料が2.16%で信託報酬が1.49~1.98%。100万円を投じれば、最初の年に手数料で約4万円を失う計算だ。ETF(上場投資信託)ならば信託報酬が0.1%前後の商品も珍しくない。ETFでなくても、最近は信託報酬の低い非上場のインデックス投信もある。

野口記者がラップ型投信を前向きに紹介するのならば、ETFなどに比べてはるかにコストの高いラップ型投信をなぜ選択肢に入れるのか論じるべきだ。記事ではラップ型投信を始めから選択肢に入れて、その中からどうやって自分に合った商品を選べばいいのか解説している。しかし、投資の知識がそこそこある記者ならば、これはダメな商品だと分かるはずだ。

記事で紹介している「みずほラップファンド」は国内債券の比率が40%もある。この投信の信託報酬は2.05%。長期金利が0.3%程度と極めて低水準なのに、国内債券の4割部分にも2%超の信託報酬がかかると考えると、とても投資対象として選択肢に入れる気にはなれない。

では、ラップ型投信の高コストを正当化できる根拠はないのだろうか。それを(2)で検討したい。

※(2)へ続く。

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