2015年12月25日金曜日

何かズレてる週刊ダイヤモンド「篠田真貴子×青野慶久」対談

週刊ダイヤモンド12月26日号の特集「2016総予測」の中に「対談 働き方を変えよう! 篠田真貴子(東京糸井重里事務所CFO)×青野慶久(サイボウズ社長)」という記事がある。これが、何かと世の中全般とのズレを感じさせる内容で、随所にツッコミを入れたくなった。 篠田、青野の両氏を責めるつもりはない。それよりは、対談を仕切った清水量介記者がもう少し何とかできなかったのかとは思う。

では、順にツッコミを入れていこう。
JR久留米駅(福岡県久留米市)
      ※写真と本文は無関係です
                 

◎「会社は与えてくれる存在ではない」?

【ダイヤモンドの記事】

篠田 でも、高度成長期と違って、伸びる会社、つぶれる会社がはっきりしています。つぶれなくたって、寿命と働く期間が長いわけですから、その間に会社の主力事業がまったく違うものに何度も変わることは珍しくなくなるでしょう。

何も、子育てとか、介護を経験しなくても、仕事や働き方って、どんどん変わっていくんですよ。

それなのに、今は鍛えられていない。学校って何かを与えられる所なんだけど、会社は自分で選んでいて、与えてくれる存在ではないはず。ほんとは、社会人2~3年目に「今の状況は自分で選んでいる」という感覚をつかまないといけないと思うんですが、大企業ではなかなかそれが実感しにくい。

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学校って何かを与えられる所なんだけど、会社は自分で選んでいて、与えてくれる存在ではないはず」という発言が引っかかる。「学校は与えてくれるが、会社は与えてくれない」「会社は自分で選ぶが、学校は自分で選ばない」との前提を感じるからだ。

例えば学校が知識を与えてくれる場だとすれば、会社も似たようなものだ。多くの知識や経験を与えてくれるし、おまけにカネまでくれる。「会社は自分で選んでいて」に関しても、ほとんどの人は高校や大学も自分で選んでいるはずだ。学校と対比させる形で「会社は自分で選んだ」と強調する意味があるだろうか。

高度成長期と違って、伸びる会社、つぶれる会社がはっきりしています」という断定も気になった。そんなにはっきりしているのなら、3年以内につぶれる上場企業を教えてほしいものだ。空売りで一儲けできそうな気がする。本当に分かるならばだが…。


◎飲み歩くのは「無」?

【ダイヤモンドの記事】

青野 単純に「長時間をやめましょう!」ではなくて、それで浮いた時間で何をするか。残りの時間を何に充てるかという発想が大事です。結局、会社の仲間と毎日飲み歩くというのでは、意味がない

他の業種の人と会う、あるいは、家事育児で社会参加することも学びになります

篠田 そうなんですよ! 子育てって社会人のスキルとして生きないわけがないんですよ。家庭で過ごす時間って“無”じゃない

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家庭で過ごす時間って“無”じゃない」のは確かだろうが、それで言えば「会社の仲間と毎日飲み歩く」のも「」ではない。「会社の仲間と飲みに行くのが無意味で、他業種の人と会ったり家庭で過ごしたりするのは有意義」と決め付けること自体に「意味がない」と思えるが…。


◎嫌いな上司でも論理は通じる?

【ダイヤモンドの記事】

青野 だいたい、子育てに比べると、会社の人間関係って楽に感じますから。嫌だなあと思う相手でも「ちょっといいでしょうか、これやってくれないでしょうか」と丁寧に言えば、動いてくれます。でも、子供に「ちょっと、歯を磨いてくれないでしょうか」と丁寧に言っても聞きやしない。

篠田 嫌いな上司でも論理は通じますもんね。子供は台風とか、自然現象と同じですから(笑)。

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本人たちの体験から得た実感なのだから否定はしないが、随分と恵まれた職場環境なのだなとは感じた。「嫌だなあと思う相手でも『ちょっといいでしょうか、これやってくれないでしょうか』と丁寧に言えば、動いてくれます」と青野氏は言う。社長が頼めば、それは動いてくれるだろう。丁寧に言わなくても、やってくれる公算大だ。しかし、普通の社員が丁寧に言ったとしても、動いてくれない人はどの会社にもたくさんいる。そこに思いを巡らせてほしかった。

嫌いな上司でも論理は通じますもんね」に関しては「それは上司に恵まれましたね」と言うほかない。「ごちゃごちゃ理屈を言わずにとにかくやれ」などと命じられずに会社人生を送ってこれたのならば羨ましい限りだ。

東芝で上からプレッシャーをかけられて不正会計に関与した人たちに「嫌いな上司でも論理は通じますもんね」と同意を求めたら、何と言うだろうか。

こんな感じで、全体的に「この2人は世の中のことが分かっているのかな」というムード漂う対談になっている。清水記者が間に入って色々と質問してあげれば、こんな浮世離れした内容にはならなかったと思うのだが…。

※記事の評価はC(平均的)。清水量介記者の評価は暫定でF(根本的な欠陥あり)を維持する。F評価については「『3年で株価3倍』? 週刊ダイヤモンド 清水量介記者に問う」を参照してほしい。

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