2015年12月18日金曜日

紙面もフィンテックバブル? 日経「日立 スマホで現金引き出し」

「フィンテック」と見出しに付けられれば、あまり内容は問わないということだろうか。18日の日本経済新聞朝刊企業面に載っていた「日立 スマホで現金引き出し フィンテック進出」は疑問が残る内容だった。革新性に欠ける中身でも宣伝のために日立が発表するのは分かる。しかし、日経はもう少し考えて紙面化すべきだ。記事の疑問点を列挙してみたい。
久留米市役所(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】 

日立製作所は金融とIT(情報技術)を融合したフィンテック関連事業に進出する。第1弾としてスマートフォン(スマホ)にキャッシュカード機能を持たせる金融機関向けサービスを17日に始めた。カードがなくてもスマホをかざせばATMで現金を引き出せる。2018年度にフィンテック関連事業で800億円の売上高を目指す。

「日立モバイル型キャッシュカードサービス」の名称で提供する。スマホ用の専用アプリを開発し、読み取り装置を付けたATMにスマホをかざすことで利用できるシステムを構築する。

店舗での振込時の伝票記入や押印を不要にもできるという。残高照会などネット銀行と同等の機能もスマホで利用可能にする

同サービスだけで18年度までに10法人程度の顧客を獲得し、100億円の売上高を目指す。

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◎疑問その1~「進出する」?

サービスを17日に始めた」のであれば「フィンテック関連事業に進出する」ではなく「進出した」だろう。


◎疑問その2~これまでは「伝票記入や押印」が必要だった?

店舗での振込時の伝票記入や押印を不要にもできるという」と書いてあると、現状では店舗での振り込み時に「伝票記入や押印」を必ず求められているような印象を受ける。しかし店舗内のATMを使って振り込みをすれば今でも「伝票記入や押印」は不要だ。

日立のニュースリリースから判断すると、記事を書いた記者は「店舗での振込時」ではなく「窓口での振り込み時」と言いたかったのかもしれない。だとしても、現金での振り込みであれば「押印」は必要ないはずだ。多少の例外はあるかもしれないが…。


◎疑問その3~スマホでネットバンキングは使えなかった?

残高照会などネット銀行と同等の機能もスマホで利用可能にする」という説明も引っかかる。まず「残高照会」はネット銀行でなくてもできるので、なぜ枕詞に採用しているのかとは思う。また、現状でもスマホでネットバンキングは利用できるはずだ。わざわざ「ネット銀行と同等の機能もスマホで利用可能にする」と書いているのか理解に苦しむ。

日立のニュースリリースから推測すると、「日立のモバイル型キャッシュカードサービスで利用者が登録を済ませれば、別に申し込まなくてもネットバンキングを利用できるようになる」という話かもしれない。

結局、銀行の利用者から見てこのシステムにどんなメリットがあるかと言うと、財布からキャッシュカードが消えることだろう。ただ、クレジットカード機能付きのカードであれば、カードで持っておきたいとのニーズも強いはずだ。窓口での銀行振り込みで「伝票記入や押印」が不要になるのもメリットと言えばメリットだ。しかし、それならネットバンキングを使えば済む。窓口に出向く必要もない。

結論として、日立の新サービスは大した話ではなさそうだ。「フィンテック第1弾」とうたってニュースリリースを出した日立の広報手法をほめるべきなのかもしれないが…。

※記事の評価はD(問題あり)。

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