2015年5月23日土曜日

日経の地域経済面…短いベタ記事に問題山積

日経の地域経済面を久しぶりに読んでみた。相変わらず完成度が低い。九州経済面の22日付のベタ記事「一蘭 全従業員対象に接客マナー検定」を例に取ろう。


【日経の記事(全文)】
アントワープ(ベルギー)の裁判所 
               ※写真と本文は無関係です

豚骨ラーメン店を手掛ける一蘭(福岡市、吉冨学社長)は全従業員を対象にユニバーサルマナー検定を実施する。自分以外のことを思いやれるようにすることで、すべての来店客が心地よく過ごせるようにする。福岡のほか、東京や大阪で実施する。


障害者や高齢者の定義、ユニバーサルデザインの基礎知識、心構えなどを学ぶ。200人以上の全社員が対象になる。


わずか16行の記事の中によくもこれだけ問題点を詰め込めたと感心してしまう。気になる点を列挙してみる。


(1)Whenがない

この記事も、日経のお家芸とも言える「Whenがない記事」だ。これからの話を記事にしているのだから「When」は必ず入れてほしい。


(2)いきなり「ユニバーサルマナー検定」はちょっと…

「ユニバーサルマナー検定」とは日経(あるいは九州経済面)の読者なら当然知っているものなのだろうか。とてもそうは思えない。枕詞を付けて読者の理解を助けるといった配慮が欲しい。


(3)余計な言葉が多い

思いやりとは基本的に自分以外が対象となるものなので、「自分以外のことを思いやれる」と書く必要があるのか疑問だ。「すべての来店客が心地よく」というくだりも「すべて」はなくていい。ついでに言うと「こと」「実施する」を繰り返しているのも上手くない。


(4)何の「心構え」を学ぶか不明

「障害者や高齢者の定義、ユニバーサルデザインの基礎知識、心構えなどを学ぶ」と書いてあると、何を学ぶのだと読者は受け取るだろうか。読点を頼りに考えれば「障害者や高齢者の定義」「ユニバーサルデザインの基礎知識」「心構え」だろう。しかし、単に「心構え」と言われても何を学ぶのか分からない。「ユニバーサルデザインの心構え」と解釈したくなるが、「デザインの心構え」もイメージしにくい。それに「ユニバーサルデザイン」も注釈なしに使うのは問題がある。「ユニバーサルマナー」との関係も分かりづらい。


(5)誰が対象か分かりづらい

最初は「全従業員が対象」と書いているのに、最後の方では「全社員が対象」となっている。ラーメン店チェーンならば、常識的には従業員の中にアルバイトもいるはずだ。アルバイトは検定の対象なのか違うのか、よく分からない。


(6)学ぶ内容が「思いやり」につながっていない

自分以外のことを思いやれるようにすることで、すべての来店客が心地よく過ごせるようにする」ための検定のはずだ。しかし「障害者や高齢者の定義」「ユニバーサルデザインの基礎知識」を学ぶと思いやりの心を持てるようになるのだろうか。「心構え」は思いやりと関連がありそうな感じだが、何の「心構え」なのか不明なので何とも言い難い。


「検定」を受けるだけで「学べる」のかどうかよく分からない。こうした点も含めて(1)~(6)の問題点を解消した改善例を示しておく。情報が足りない部分は適当に補っているので、事実とは必ずしも合致しない。



【改善例】 ※事実と異なる内容を含む可能性あり

豚骨ラーメン店を手掛ける一蘭(福岡市、吉冨学社長)は、高齢者や障害者への理解度を測れるユニバーサルマナー検定を6月から全社員に受けさせる。検定時に受ける講習などを通じ、社会的弱者への思いやりを身に付けさせ、接客に生かしてもらう。

講習では、障害者や高齢者に接する時の心構えなどを学ぶ。200人以上いる社員には、福岡、東京、大阪のいずれかの試験会場で、来年3月までの受験を義務付ける。


※全体を通して決定的な問題点はないものの、短いベタ記事でこれだけ問題点があるのは致命的。典型的な粗製乱造型の記事であり、デスクなどのチェックもまともに働いていない点を重く見て、記事の評価はEする。



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