2015年5月24日日曜日

日経の「拡販」記事は読む必要なし

日経で主見出しに「拡販」が入ってたら、読む必要のない記事だと判断して間違いない。「拡販」は無理に記事を生み出す時に使いやすい言葉であり、記事の質も基本的に高くない。典型例として、23日朝刊企業面の3段記事「大塚製薬 香港で機能性食品拡販」の全文を見てみよう。
オランダのロッテルダム中央駅から見えるビル
            ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

大塚製薬は香港で機能性食品を拡販する。このほど栄養ドリンクの「オロナミンC」、飲料などに溶かして飲む食物繊維食品の「賢者の食卓」を発売した。既に販売しているスポーツ飲料「ポカリスエット」や栄養食品「ソイジョイ」などに加え、販売品目を増やす。健康志向の高まりに伴い、ビジネスマンなどの需要を見込む。

オロナミンCはこれまで韓国や中東諸国で展開している。日本を除き8カ国・地域目となる香港は、社会ストレスの増加などを背景にビタミン飲料やエナジードリンクの市場が拡大している。価格は1本12.9香港ドル(約200円)と、日本(105円)よりも高めに設定し、ブランド化を目指す。

賢者の食卓は初の海外展開。糖分や脂肪の吸収を抑える効果があるとされ、外食の多いビジネスマンや富裕層への拡販を目指す。

2014年4~12月期の大塚ホールディングスの機能性食品事業の売上高は2381億円。国内販売は伸び悩むが、海外売り上げは増加傾向にある。


「オロナミンC」は5月20日、「賢者の食卓」は4月23日に大塚製薬が香港での発売を発表している。「何日も前に発表したものを今頃書くな」と言う気はない。しかし、ニュースリリースの内容を抜粋して1つの記事に仕上げたとしか取れない内容ではダメだ。記事はニュースリリースと決算短信さえあれば、ほぼ取材なしで書ける。こんな付加価値のない記事を世に送り出して、筆者は平気でいられるのだろうか。

「拡販」を柱に据えるのならば、売上高をどの時期にどの程度拡大しようとしているのかは必須の情報だ。上記の記事の場合、大塚製薬が香港で機能性食品を年間いくらぐらい販売していて、それをどこまで伸ばそうとしているかは外せない。大塚製薬がその情報を教えてくれないとしたら、「オロナミンC」「賢者の食卓」に関して、香港での販売目標を入れ、そこからどの程度「拡販」するのかを読者に見せるといった工夫がいる。そうした情報さえ得られないのならば、「拡販」を柱に据えて記事を書くのは諦めるべきだ。

記事で「大塚ホールディングスの機能性食品事業の売上高」には触れていても、香港の売上高に関する情報はない。海外全体の売上高でさえ具体的な数値はなく、言ってみれば「読者をなめた記事」だ。

今回の記事には「なぜ他の地域ではなく香港なのか」も入れたい。香港に関して「健康志向の高まり」「社会ストレスの増加」といった文言が記事中に出てくるものの、なぜ他地域ではなく香港なのかは分からない。さらに言えば、もし自分が筆者ならば、中国全土に販路を広げる考えがあるかどうかにも言及しただろう。

付け加えると、記事の最後の方で注釈なしに「大塚ホールディングス」が出てくるのは感心しない。冒頭では「大塚製薬は~」と書いているのだから、最終段落で大塚ホールディングスを出すのであれば「大塚製薬の親会社である大塚ホールディングス」などと表記すべきだ。

※工夫のかけらも感じられない安直な記事であり、評価はEとする。

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