2022年2月28日月曜日

「女性議員が増えない理由」を「選挙制度」と断言する三浦まり上智大教授の無理筋

25日付で時事ドットコムニュースに載った「なぜ増えない?女性議員 制度が壁、『クオータ制』導入を~三浦まり上智大教授に聞く」という記事では三浦氏のおかしな主張が目立った。中身を見ながら具体的に指摘したい。

夕暮れ時の筑後川

【時事ドットコムニュースの記事】

 ―初めて女性議員が誕生してから70年以上たつ。女性議員が増えない理由は何か。

選挙制度だ。(当時は)大選挙区制と戦後の女性解放の流れの中で、(政治分野に)出ようという女性たちがいた。(現行の)選挙制度は党利党略で、どの制度だと誰にとって有利・不利というのがはっきりしており改革が難しい。

政治分野における男女共同参画の推進に関する法律ができたにもかかわらず、昨年の衆院選では女性議員数が減ったことは教訓だ。日本は現職優先の仕組みが強すぎる。閉ざされた世界で公認権を政党が独占しており、民主的ではないことが最大の問題だ。ここを変えなければ、女性は増えないし、女性だけではなく多様性が確保されない。


◎女性のやる気の問題では?

「女性議員が増えない理由」を三浦氏は「選挙制度だ」と言い切るが、「選挙制度」のどこがどう問題なのか、まともに説明していない。

「(現行の)選挙制度は党利党略で、どの制度だと誰にとって有利・不利というのがはっきりしており改革が難しい」という説明は、厳しく言えば意味不明だ。「改革が難しい」ことは「選挙制度」を「女性議員が増えない理由」と見なす根拠にはなっていない。

「日本は現職優先の仕組みが強すぎる」「閉ざされた世界で公認権を政党が独占」などとも述べているが、これは「選挙制度」の話ではないだろう。「選挙制度」に関して言えば「現職優先」ではないはずだ。

「公認権を政党が独占しており、民主的ではないことが最大の問題だ」という説明も謎だ。「公認権を政党が独占」するのは当然ではないか。自民党がどの候補者を「公認」するのかは自民党の勝手だ。自民党の外部に「公認権」を譲渡せよと言いたいのか。

「政党」内部での決め方が「民主的ではない」というケースはあるだろう。それが「最大の問題」だとしたら「女性議員が増えない理由」は「選挙制度」ではない。「政党」の体質だ。

「ここを変えなければ、女性は増えない」と言うが、既存政党の体質を変える必要はない。新党を作ればいい。女性が新党を立ち上げて大量の女性候補者を擁立し女性有権者の圧倒的支持を得れば、それだけで「女性議員」は大幅に増える。

今の「選挙制度」は男女平等だ。新党立ち上げも自由だ。なのに、なぜ既存政党の枠組みで考えて「女性議員が増えない理由」を「選挙制度」のせいにするのか。今の「選挙制度」の下では、女性の力だけで「女性議員」を大きく増やせる。有権者は男性より女性の方が多いのだから女性有利だ。

男女平等が確保された現行の「選挙制度」の下で「女性議員が増えない」のだとしたら、その主因は「女性のやる気のなさ」に求めるべきだ。「やる気を出せ」とは言わない。ただ、女性がやる気になれば容易に女性議員を増やせる「選挙制度」は既にある。そのことを忘れてはならない。

「クオータ制」に関する三浦氏の主張も見ておこう。


【時事ドットコムニュースの記事】

―どのような形で「クオータ制」を導入すればよいか。

政党が自主的にクオータ制をやることは今すぐできるので、ぜひやってほしい。市民社会からのプレッシャーがない限り、政党が変わらないのはどの国も一緒だ。女性運動が一番重要で、社会として支援することで(運動を)大きくしていくことが不可欠だ。まず中道左派政党から始まり、選挙で勝てるとなると保守政党も変わる。日本は野党が弱いので、政権交代のダイナミズムの流れがない。社会党の土井たか子氏がマドンナ旋風を吹かしたことによって、90年代は自民党も女性を増やすという流れが確実にあった。その流れがまた出ないと変わりにくい。

もう一つは、法律で(クオータ制を)義務付けることだ。日本と選挙制度が近い台湾や韓国などでやっているので、その形で導入することがふさわしいと思う。


◎「クオータ制」のメリットは?

聞き手の川上真央記者は「どのような形で『クオータ制』を導入すればよいか」と「クオータ制」導入を前提に質問している。これは感心しない。

「政党が自主的にクオータ制をやること」はいいとしても、議員の一定割合を女性にするなどと「法律で義務付けること」は明らかな性差別だ。川上記者も三浦氏も性差別容認論者なのだろう。とは言え「クオータ制」には男女平等主義者からの批判があると知っているはずだ。「クオータ制」導入を訴えるならば、性差別を正当化する根拠は欲しい。

自分は男女平等主義者ではあるが、性差別制度を完全に否定はしない。「クオータ制導入で国民の幸福度を大幅に引き上げられる」といったエビデンスがあれば導入を検討しても良い。だが、国民全体としての大きなメリットがないのであれば、男女平等の原則堅持でいい。

さらに記事の中身を見ていこう。


【時事ドットコムニュースの記事】

―出馬に当たり資金面での課題もある。

供託金は下げないといけない。そうすれば、政党はもっと名簿に女性を掲載できるようになり、当選しそうにない女性も名簿に載る。

ほかの国も全く同じで、見た目だけやる。そんなやり方は制度の趣旨と違うと社会が怒って、順位に規則を設けようと何度も何度も制度を改正して、良くなった歴史がある。日本も(クオータ制を導入すると)同じようなことが起きると思う。何かをやればそれをかいくぐるように、形だけのことをやり、それじゃだめだと、また変えていく。それを10年くらい繰り返していくことによって、より良い制度になってくる。日本はやっとそのスタートラインには立ったと思う。

ほかの国は具体的な制度を変えて、女性を支援している。日本は一切何もやっていない。これだけ制度が不利で支援もしなければ、増えないのは当然だ。


◎本当に「制度が不利」?

「これだけ制度が不利で支援もしなければ、増えないのは当然だ」と三浦氏は言うが、どこが「不利」なのか。選挙権や被選挙権は男女平等ではないのか。政党の立ち上げに際して女性が「不利」となる「制度」があるのか。

繰り返すが「女性議員が増えない」のは、女性のやる気の問題だ。「支援」を当てにする姿勢も頂けない。性差別容認論者ゆえに「女性限定の特別な支援はあって当然」と考えるのだろうが…。

さらに続きを見ていく。


【時事ドットコムニュースの記事】

―女性が活躍している分野は限られているのではないか。

重要な安全保障や金融など国の方針に関わるところは、男性ががっちり占めるというのはよくある話だ。金融や国際関係の知識が豊富で、いろいろな場面で活躍している女性はいる。その専門性を生かすべきだ。ありとあらゆる政策にジェンダーの視点を横串で刺していく必要がある。女性議員が3割を超えたら、(個人の)専門性に合わせて、もっと活躍できると思うが、女性議員数が3割以上にならないと数で負けてしまう。

―なぜ3割なのか。

ある一定を超えないと悪目立ちしてしまう。過度に女性であることが強調されると同時に、過度に男性に合わせなければならない。そこから少しでも外れると、「やっぱり女性だからだめだ」となり、無理をすることになる。しかし、女性の割合が3割を超えると、「女性だから」というものが当てはまらない。党派に関係なく、女性がその場にいるということが重要だ。


◎「3割を超えると」急変?

「女性の割合が3割を超えると、『女性だから』というものが当てはまらない」と言うが、何を根拠にそう断定しているのか。

女性議員比率が29%だと「やっぱり女性だからだめだ」という見方をする人も「女性の割合が3割を超えると」急に考えが変わるのか。ちょっと信じがたい。

「女性議員数が3割以上にならないと数で負けてしまう」「ある一定を超えないと悪目立ちしてしまう」ということは、これまで日本のすべての「女性議員」は「数で負けてしまう」上に「悪目立ちしてしまう」存在だったことになる。本当にそうか。

そもそも「女性議員」は、与野党関係なく団結して男性議員と戦う存在なのか。

個人的には「議員」の性別なんて、どうでもいい。なりたい人が立候補して多数の票を得た人が「議員」になる。それでいいではないか。男女平等の原則を崩してまで「クオータ制」を導入すべき理由は何なのか。あくまで「クオータ制」にこだわるのならば、三浦氏には説得力のある性差別容認論をしっかり組み立ててほしい。



※今回取り上げた記事「なぜ増えない?女性議員 制度が壁、『クオータ制』導入を~三浦まり上智大教授に聞く」

https://www.jiji.com/jc/v8?id=20220225seikaiweb


※記事の評価は見送る。三浦まり上智大学教授に関しては以下の投稿も参照してほしい。

三浦まり上智大学教授が日経ビジネスで訴えたクオータ制導入論に異議ありhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2021/05/blog-post_15.html

東洋経済でのクオータ制導入論にも無理がある三浦まり上智大教授https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/06/blog-post_36.html

2022年2月27日日曜日

大石格編集委員の「辞めさせ方」を問いたくなる日経「風見鶏~閣僚の上手な辞めさせ方」

日本経済新聞の大石格編集委員が相変わらず苦しい。書き手としての能力が高くない上に、やる気も感じられない。27日の朝刊総合3面に載った「風見鶏~閣僚の上手な辞めさせ方」では、長々と昔話をした後に、少しだけ今の政局に絡めて終わり。しかも、絡めた部分がまた苦しい。

筑後川

中身を見ながら具体的に指摘したい。

【日経の記事】

組閣のときによく耳にする単語のひとつに「入閣待機組」がある。閣僚ポストを得ようと、首相や派閥の領袖への売り込みに奔走する国会議員のことだ。

政治記者になった中曽根内閣のころは「待望組」と呼ぶことが多かった。こちらは「大した能力もないのに高望みしている」と若干からかう語感があった。

いずれが妥当な呼び方かはさておき、大臣病の患者が多いのは、昔もいまもあまり変わらない。


◎長い前置きは何のため?

かなり長い導入だ。この後に「入閣待機組」や「大臣病の患者」の問題をしっかり論じるならば、まだ許せる。しかし、そうはならない。続きを見ていこう。


【日経の記事】

「首相の力は衆院を解散をすればするほど増すが、内閣改造をすればするほど弱まる」。こんな永田町格言がある。ポストを得られなかった議員の恨みはそれほど深いということだ。

人事は起用すれば終わりではない。何かあれば辞めさせなければならない。これがさらに難儀である。

朝刊でスキャンダルを報道された閣僚が夕方までに辞表を出した例はあまり記憶にない。延命できないかと逃げ回り、言い訳し、泣きつき、とのドタバタ劇を嫌というほどみてきた。

解決策のひとつが内閣改造である。不祥事で辞任となれば、その議員の政治生命が終わることもある。しばらくかばい、時期をみて一斉に入れ替えることで「定期異動」と言いくるめる。役所や民間企業でもよく聞く話だ。

この手法を編み出したのは自民党の草創期に首相を務めた岸信介とされる。ワンマン首相だった吉田茂は意に沿わない閣僚がいると即座にクビを切った。能力本位は正しいとはいえ、人事のもつれなどで子分に裏切られたことが織田信長なみによくあった。岸はそれを反面教師にした。


◎なかなか本題に入らない…

「入閣待機組」や「大臣病の患者」の問題は掘り下げないらしい。話は「不祥事で辞任」へと移ってきた。しかし、これも本題ではない。

ようやくこの後で本題らしき話に移っていく。


【日経の記事】

その岸でも難渋したであろう出来事が1999年にあった。行政改革を掲げる自由党と連立を組むため、当時の小渕恵三首相が20人の閣僚枠を2つ減らすことに同意したのだ。

自由党に1枠を渡したので、現職閣僚を3人も辞めさせなくてはならなくなった。不祥事でも働きが悪いのでもないのにだ。当時の野中広務官房長官は「自民党内がごたついて政局になる」と心配した。

政界が固唾をのむなか、選ばれたのは5人いた小渕派出身者のうち3人。野中氏の盟友だった西田司自治相は「俺が降りる」と言いに来たそうだ。

同派の前身の田中派には「かごに乗る人、担ぐ人、そのまたわらじを編む人」という言い回しがあった。他人のための下働きをいとうなという意味で、西田氏らのその通りの振る舞いはいまも語り草だ。

3人も辞めさせるのは大変だったが、多くてよかった面もあった。つらいのは君だけではないと納得させることができた。


◎昔話が長すぎる

今回の問題は、簡単に言えば「『閣僚枠』が減るときの適切な対処法とは?」だ。そのために、どうしても昔話をしたいのならば、上記の「小渕恵三首相」時代の件だけでいい。行数稼ぎに難渋しているのは分かるが、要らない昔話が多すぎる。7割以上を昔話に費やしている。昔話をしたい年齢でもあるし、新たな取材なしで書けるのも魅力なのだろう。

最後に、ようやく今の話へ移る。

【日経の記事】

現在の閣僚数は内閣法で定めた17人に、別枠で設けた復興相、五輪相、万博相を加えた20人である。このうち五輪相は3月いっぱいで設置期限が切れる。通常国会のさなかという異例の時期に、閣僚のひとりを去らせねばならない。

ふつうに考えれば、現職の五輪相である堀内詔子氏だが、ことはそれだけでは済まない。ワクチン相もしているからだ。追加接種が政治課題のさなかに、担当がまた交代するのか。新型コロナウイルス対策を軽んじたとのそしりを、岸田文雄首相は免れまい。

堀内氏の国会答弁があやふやだったことも辞めさせにくくする。「閣僚枠が減るので仕方なく」といくら説明しても、世間は更迭と受け止めかねない。

首相は昨年秋にいまの布陣を決めた時点で、閣僚の辞めさせ方をどう思い描いていたのか。ポストは配るときよりも取り上げるときの方が手腕が必要になる。


◎「別枠」はもう作れない?

いくつか疑問が湧く。まず「閣僚のひとりを去らせねばならない」のかどうかだ。「五輪相は3月いっぱいで設置期限が切れる」のならば「ワクチン相」を「五輪相」に代わる「別枠」として「設置」すれば済むのではないか。できない事情があるのならば説明すべきだ。

そもそも「堀内詔子氏」の「ワクチン相」続投を国民の多くが望んでいるのかという問題がある。望んでいない場合、辞めさせたとしても問題は小さい。「担当がまた交代するのか。新型コロナウイルス対策を軽んじた」と批判する人もいるかもしれないが、基本的には内閣支持率の上昇要因と見るべきだ。

この場合「世間」が「更迭と受け止め」るのは、むしろ好ましい。「国会答弁があやふやだった」頼りない大臣を「更迭」させたとして政権にはプラスになるはずだ。

国民の多くが「堀内詔子氏」の「ワクチン相」続投を望むのであれば「辞めさせ方」が難しくなるのは確かだ。しかし「堀内詔子氏」に対する国民の支持の度合いに大石氏は言及していない。そこが辛い。

さらに気になるのが「堀内詔子氏」の「上手な辞めさせ方」について大石氏自身の見解を明らかにしていない点だ。自分にも「上手な辞めさせ方」が分からないのならば、長すぎる昔話まで持ち出して今回のテーマを選ぶ気が知れない。

「ポストは配るときよりも取り上げるときの方が手腕が必要になる」のだから、長い政治取材の経験を生かして「上手な辞めさせ方」を大石氏が伝授すればいい。それは無理なのか。だとしたら、日経としては大石氏の「上手な辞めさせ方」を考えるべき時だ。


※今回取り上げた記事「風見鶏~閣僚の上手な辞めさせ方」

https://www.blogger.com/blog/post/edit/6389495891574633352/4866561329638391958


※記事の評価はD(問題あり)。大石格編集委員への評価もDを維持する。大石編集委員については以下の投稿も参照してほしい。


日経 大石格編集委員は東アジア情勢が分かってる?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_12.html

ミサイル数発で「おしまい」と日経 大石格編集委員は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_86.html

日経 大石格編集委員は「パンドラの箱」を誤解?(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_15.html

日経 大石格編集委員は「パンドラの箱」を誤解?(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_16.html

日経 大石格編集委員は「パンドラの箱」を誤解?(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_89.html

どこに「オバマの中国観」?日経 大石格編集委員「風見鶏」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/08/blog-post_22.html

「日米同盟が大事」の根拠を示せず 日経 大石格編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_41.html

大石格編集委員の限界感じる日経「対決型政治に限界」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_70.html

「リベラルとは何か」をまともに論じない日経 大石格編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/blog-post_30.html

具体策なしに「現実主義」を求める日経 大石格編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/12/blog-post_4.html

自慢話の前に日経 大石格編集委員が「風見鶏」で書くべきこと
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/04/blog-post_40.html

米国出張はほぼ物見遊山? 日経 大石格編集委員「検証・中間選挙」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/blog-post_18.html

自衛隊の人手不足に関する分析が雑な日経 大石格編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_27.html

「給付金申請しない」宣言の底意が透ける日経 大石格編集委員「風見鶏」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/05/blog-post_74.html

「イタリア改憲の真の狙い」が結局は謎な日経 大石格上級論説委員の「中外時評」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/blog-post_7.html

菅政権との対比が苦しい日経 大石格編集委員「風見鶏~中曽根戦略ふたたび?」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/blog-post_18.html

「別人格」を疑う余地ある? 日経 大石格上級論説委員「中外時評~政治家は身内にこそ厳しく」

https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/03/blog-post_17.html

日経「風見鶏~基本法花盛りの功罪」に感じる大石格編集委員の罪https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/07/blog-post_11.html

「米『お節介外交』は終わるのか」に答えを出さない日経 大石格上級論説委員https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/09/blog-post_8.html

2022年2月24日木曜日

FACTA「割高の日経電子版に購読者『80万の壁』」を受けて日経に3つの提言

FACTA3月号に永井悠太朗氏が書いた「割高の日経電子版に購読者『80万の壁』~創刊12年で頭打ち。本紙との合計も260万まで減少。打開策は値引きか、値上げか?」という記事は納得できる内容だった。記事の中身を見ながら、紙の新聞も電子版も購読する日経の一読者として思うところを述べてみたい。

両筑橋架け替え工事現場

【FACTAの記事】

日本の新聞業界でデジタル版の優等生と言われる日経電子版の有料会員が伸び悩んでいる。2021年7月に初めて80万人を超えたものの、22年1月には79万人台に後戻りしてしまった。日経新聞朝刊販売部数との合計も18年中に300万を割り、22年1月には約260万まで下がった。朝刊の部数減が加速する中、電子版の「80万の壁」をどう乗り越えるのか。日経新聞社のデジタル戦略は正念場を迎えている。

日経電子版は10年3月に他の全国紙に先駆けて創刊。同年10月にiPhone(アイフォーン)に対応したことも手伝って、12月には有料会員は早くも10万人を突破。12年4月に20万人、13年5月に30万人、15年4月には40万人に達した。さらに17年1月には50万人、18年6月には60万人、そして創刊10年目前の20年2月には70万人を超えるなど、伸び悩む朝日新聞デジタルなど他社のデジタル版に比べおおむね順調な伸びを示してきた。

ところが、20年7月に76万7978人に達した後、21年1月には76万244人とわずかながらもマイナスに。同年7月には81万1682人と80万の大台に乗せたものの、22年1月には再び79万7362人までダウンするなど、「80万の壁」をスッキリと超えるところまではいけていない。

一方、日経朝刊の販売部数(日本ABC協会調べ)は02年7月の310万部をピークに減少傾向が続いている。12年1月に300万部を切り、20年12月には1983年9月以来37年ぶりに200万部を割り込んだ。直近の21年12月には181万部と、80年の水準まで落ち込んでいる。有力紙の販売関係者によると、実際の購読者を上回る部数の仕入れを販売店に強いる「押し紙」が日経新聞の場合2、3割程度あるので実売部数は125万~145万部程度とみられる。

日経電子版と朝刊の合計数の推移を見ると、電子版創刊以降18年初めまでは300万台を確保しており、朝刊の部数減を電子版の伸びで補うことができていた。特に17年は321万と最高を記録した。しかし18年以降は、「押し紙」の整理・削減を進めたことも相まって部数減が電子版の伸びを明らかに上回るようになり、21年1月には275万、22年1月(朝刊部数は21年12月の数字)には261万まで下降した。

20年の前半まではほぼ順調に伸びていた日経電子版が、それ以降はなぜ頭打ち傾向に陥ってきたのか。背景の一つには購読料の割高感がある。日経電子版の情報に月額4277円(電子版単独の場合)、年額5万円余りを払おうという意欲、払える余裕のあるビジネスマンや経済・金融関係者は、労働力人口が減少している日本ではもう80万人程度が限界ではないか、という見方は同社内でもささやかれている。これまでは経済情報という優位性の故に一般紙のデジタル版より多くの読者を獲得できたが、その裏返しとして経済メディアとしてのマーケットの狭さに苦しみ始めているというわけだ。


◎「80万人程度が限界」には納得

「年額5万円余りを払おうという意欲、払える余裕のあるビジネスマンや経済・金融関係者は、労働力人口が減少している日本ではもう80万人程度が限界ではないか、という見方は同社内でもささやかれている」らしい。これは納得できる。むしろ「80万人」に届いたことが驚きだ。法人契約がどの程度あるのか分からないが、個人で言えば「80万人」は限界を超えている気もする。かなり無理して契約を伸ばしたのではないか。

「経済情報という優位性の故に一般紙のデジタル版より多くの読者を獲得できたが、その裏返しとして経済メディアとしてのマーケットの狭さに苦しみ始めている」との分析も的を射ている。そもそも小さな「マーケット」なのだ。

続きを見ていこう。


【FACTAの記事】

しかし、電子版とあまり料金が変わらない日経新聞(朝夕刊セット月額4900円、朝刊のみは4000円)朝刊の購読部数はまだ180万ほどある。朝日新聞もデジタル(全機能使用可)が3800円、朝夕刊セットで4400円、朝刊のみで3500円と、日経に比べ500円ほど安いという程度だ。割高感だけでは説明しきれない何かがありそうだ。

日経新聞社は「デジタル有料購読者100万」(20年有価証券報告書)を目標に掲げている。紙媒体は購読料に加え広告収入も生み出しているが、部数減が止まらず将来性は限られている。他方、電子版は将来性はあるものの、広告収入はこれからの課題だ。日経関係者によると現在でも紙の新聞の方が電子版より収入が多いという。

日経新聞社としては紙媒体が収入を生まなくなる前に、電子版を「看板役者」に育て上げねばならないのだが、現段階では紙の収入が依然大きいだけに電子版への全面的な切り替えに全力を挙げることにまだためらいがあるのではないか。ただ部数減はさらに加速していく可能性が高いため、いずれかの段階でその決断をしなければならなくなるだろう。


◎日経に3つの提言

「割高感だけでは説明しきれない何か」は永井氏にも分からないようだ。自分にも明確な答えはない。ただ、一読者としての要望は持っている。それを列挙したい。


(1)ミス放置をやめよう!

繰り返し指摘しているが、日経では読者からの間違い指摘を無視して多くのミスを放置してきた。長く続く悪しき伝統だ。読者の信頼を得て契約を伸ばしたいのならば、この悪習を断ち切るべきだ。


(2)「抜いた抜かれた」をやめよう!

「いずれ発表されるネタを発表前に記事にする」という意味での“スクープ”は要らない。他紙の“スクープ”を追いかける必要もない。追いかける場合でも、他紙の報道を見て慌てて確認に走るといった仕事はしなくていい。一読者としては、そんなことを求めていない。

「いずれ発表されるネタを発表前に記事にしたい」という気持ちで取材に当たると、どうしても取材先への忖度が過大になる。

永井氏も今回の記事を「これまで指摘されてきた産業界との持ちつ持たれつの関係を断ち切り、『ここでしか読めないコンテンツ』にまで磨き上げる努力が、結果的に購読者増につながると考える」と締めている。

「産業界との持ちつ持たれつの関係」を生む最大の要因が早耳筋系の“スクープ”を欲しがる体質だ。これこそが「報じなければ表に出てこない本物のスクープ」から日経を遠ざけている最大の要因だ。


(3)リスクを取れる書き手を育てよう!

日経では「しっかり議論を」型の社説が目立つ。筆者である論説委員の多くがリスクを取りたがらない書き手だからだろう。なぜそうなるのか。余計なリスクを避ける記者が社内で好まれて論説委員の地位を与えられるのではないか。

だとしたら、この流れを変えるべきだ。日経にとって重要なのは早耳筋系の“スクープ”を獲得できるヨイショ記者ではない。リスクをうまく回避しながら出世階段を登っていく世渡り上手な記者でもない。

大量の批判が返ってくるのを覚悟の上で鋭い分析や提言ができる記者だ。紙面を眺めながら、そういう記者を懸命に探しているが、なかなか見つからない。

その手の記者が増えてくれば「80万の壁」を超えられるとは言わないが、現状維持は可能ではないか。


※今回取り上げた記事「割高の日経電子版に購読者『80万の壁』~創刊12年で頭打ち。本紙との合計も260万まで減少。打開策は値引きか、値上げか?」https://facta.co.jp/article/202203005.html


※記事の評価はB(優れている)

2022年2月23日水曜日

「大国衝突」時代に突入? 日経 秋田浩之氏「大国衝突、漂流する世界」の無理筋

日本経済新聞の秋田浩之氏(肩書は本社コメンテーター)がウクライナ問題に関して「大国衝突、漂流する世界」という記事を23日の朝刊1面に書いているが、内容はやはり苦しい。そもそも「大国衝突」なのか。記事の前半を見ていこう。

夕暮れ時の筑後川

【日経の記事】

ロシアのウクライナ進駐は明らかな国際法違反であり、決して許されてはならない。主要国は直ちに重い制裁を浴びせるときだ。

ロシアがウクライナに深く侵攻することも想定し、対抗策を強める必要がある。

第2次世界大戦後、世界は地域紛争が絶えなかったが、大国がぶつかる戦争はほぼ避けられてきた。今回の事態は、80年近くにおよんだ「平和の時代」が終わろうとしていることを意味する。


◎「大国がぶつかる戦争」が始まる?

「今回の事態は、80年近くにおよんだ『平和の時代』が終わろうとしていることを意味する」と秋田氏は言う。

現状では「大国がぶつかる戦争」とはなっていない。「ロシアがウクライナに深く侵攻すること」になっても米国は軍事介入しないと明言している。なのに「大国衝突」なのか。

いずれ「大国がぶつかる戦争」(米ロの戦争)に発展していると秋田氏は確信しているのか。それならばまだ分かるが、そこには触れていない。だったら「今回の事態」を受けて「大国がぶつかる戦争はほぼ避けられてきた」時代が「終わろうとしている」と見るのは無理がある。

続きを見ていこう。


【日経の記事】

安定がほころんでいるのは、欧州だけではない。アジアでも中国が台湾海峡、東・南シナ海で軍拡に走り、北朝鮮が核ミサイルを量産する。

ロシアの全面侵攻を止められなければ、西側諸国の足元を見透かし、中朝も強硬な行動に拍車をかけるだろう。

では、主要国はどうすればよいのか。なぜ「平和の時代」が息切れしてしまったのか、その原因を見つめ、有効な手を打っていくことが大事だ。

いちばんの原因は、米国の体力と気力の衰えだ。米国は約10年前、もはや「世界の警察」ではないと宣言。外交や軍事力をアジアに傾け、対中戦略を最優先する路線を急いできた。

ところが、米国は中国の軍拡に追いつけず、アジアの軍事バランスは年々、中国優位に向かっている。通商でも、米国は環太平洋経済連携協定(TPP)から抜け、その空白を埋めるように中国が加盟を申請した。

米国は準内戦ともいえる国内分断に追われ、同盟強化への取り組みもおぼつかない。トランプ前政権は同盟をあからさまに軽視。バイデン政権はその再建を唱えるが、実質的には米国ファーストの路線に大差はない。

こんな状況をにらみ、中ロはさらに結束を誇示し、米国主導の秩序を壊しにかかっている。

核兵器の拡散も、世界の平和をむしばみつつある。冷戦中、米ソが圧倒的な核戦力を握り、良くも悪くも「恐怖の均衡」によって大戦争が防がれてきた。

この構図は崩れ、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮が核兵器を持つにいたり、米国の核抑止力に陰りがみえる。


◎どういう理屈?

「核抑止力」とは「核報復兵器を保有することによって、国家間の戦争を思いとどまらせる力。また、他国に核攻撃を思いとどまらせる力」(デジタル大辞泉)だ。

「インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮が核兵器を持つ」ようになったとしても、米国が大量の「核兵器」を有しているのであれば「米国の核抑止力」は損なわれない。

「核兵器」を持つようになったからと言って「インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮」などが本気で米国と「戦争」しようとは考えないはずだ。

「中ロ」に関しても同じだろう。相互確証破壊の考え方に基づいて大国同士の「大戦争が防がれてきた」のならば、その構図は変わっていない。秋田氏は違う考えなのか。

記事の結論部分にも注文を付けたい。


【日経の記事】

これらの問題は長年にわたって堆積してきたもので、即効薬はない。ただ、1つだけ確かなのは、米国の同盟国が平和への貢献を格段に増やさなければ、世界の安定は取り戻せないことだ。


◎「有効な手」はどうなった?

「主要国はどうすればよいのか。なぜ『平和の時代』が息切れしてしまったのか、その原因を見つめ、有効な手を打っていくことが大事だ」と訴えていたのに、何が「有効な手」なのか結局は教えてくれない。

そして「1つだけ確かなのは、米国の同盟国が平和への貢献を格段に増やさなければ、世界の安定は取り戻せないことだ」と記事を締めてしまう。「有効な手」は「米国の同盟国が平和への貢献を格段に増や」す中にあるのだろう。だが漠然とした話なので、どんな「手」か特定はできない。

米国の求めに応じて日本が軍備増強を進めるのは「平和への貢献」なのか。それとも「大国がぶつかる戦争」へと続く道なのか。そこだけでも明らかにしてほしかった。

台湾有事の際に日本は米国と共に対中戦争に踏み切るべきかどうか。その判断から逃げ続けている秋田氏は、この手の問題では具体性を欠く主張でごまかすしかないのかも…。


※今回取り上げた記事「大国衝突、漂流する世界」

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220223&ng=DGKKZO80397640T20C22A2MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。秋田浩之氏への評価はE(大いに問題あり)を据え置く。秋田氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。


日経 秋田浩之編集委員 「違憲ではない」の苦しい説明
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post_20.html

「トランプ氏に物申せるのは安倍氏だけ」? 日経 秋田浩之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/02/blog-post_77.html

「国粋の枢軸」に問題多し 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/deep-insight.html

「政治家の資質」の分析が雑すぎる日経 秋田浩之氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_11.html

話の繋がりに難あり 日経 秋田浩之氏「北朝鮮 封じ込めの盲点」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/blog-post_5.html

ネタに困って書いた? 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/deep-insight.html

中印関係の説明に難あり 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/11/deep-insight.html

「万里の長城」は中国拡大主義の象徴? 日経 秋田浩之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/02/blog-post_54.html

「誰も切望せぬ北朝鮮消滅」に根拠が乏しい日経 秋田浩之氏
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_23.html

日経 秋田浩之氏「中ロの枢軸に急所あり」に問題あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_30.html

偵察衛星あっても米軍は「目隠し同然」と誤解した日経 秋田浩之氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/blog-post_0.html

問題山積の日経 秋田浩之氏「Deep Insight~米豪分断に動く中国」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/deep-insight.html

「対症療法」の意味を理解してない? 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/deep-insight.html

「イスラム教の元王朝」と言える?日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/deep-insight_28.html

「日系米国人」の説明が苦しい日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/12/deep-insight.html

米軍駐留経費の負担増は「物理的に無理」と日経 秋田浩之氏は言うが…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/01/blog-post_30.html

中国との協力はなぜ除外? 日経 秋田浩之氏「コロナ危機との戦い(1)」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/03/blog-post_23.html

「中国では群衆が路上を埋め尽くさない」? 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/06/deep-insight.html

日経 秋田浩之氏が書いた朝刊1面「世界、迫る無秩序の影」の問題点
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/08/1_15.html

英仏は本当に休んでた? 日経 秋田浩之氏「Deep Insight~準大国の休息は終わった」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/deep-insight_29.html

「中国は孤立」と言い切る日経の秋田浩之氏はロシアやイランとの関係を見よ
https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/07/blog-post.html

「日本は世界で最も危険な場所」に無理がある日経 秋田浩之氏https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/10/blog-post_11.html

日経 秋田浩之氏「Deep Insight~TPP、中国は変われるか」に見える矛盾https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/10/deep-insighttpp.html

台湾有事の「肝」を論じる気配が見えた日経 秋田浩之氏「Deep Insight」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/11/deep-insight.html

「弱者の日本」という前提が苦しい日経 秋田浩之氏の「Deep Insight」https://kagehidehiko.blogspot.com/2022/01/deep-insight.html

2022年2月22日火曜日

「韓国女性」は男女平等を忌避? 金珍児氏が書いた東洋経済オンラインの記事が興味深い

ソウル新聞東京特派員の金珍児氏が2日付の東洋経済オンラインに書いた「男性に不満を持つ『韓国女性たち』の容赦ない本音~『男vs.女』バトルが激しさを増す韓国のリアル」という記事は興味深い。「兵役」に関して「女性側」が性差別制度を守ろうとする一方、「若い男性ら」が「男女平等」の実現を訴えているらしい。金氏の解説が正しいとの前提で言えば「韓国女性たち」は「男女平等」を嫌っていることになる。

久留米球場

当該部分を見ていこう。

【東洋経済オンラインの記事】

男性と女性の確執は兵役をめぐる論争にもつながっている。若い男性らは、男女平等と言いたいのであれば女性も兵役の義務を負うべきだと主張する。

韓国では、男性は必ず18カ月間の兵役を課せられる。20代の男性らは、若い盛りに軍への服務があるために女性と付き合えないという犠牲を払っているのだと主張するが、兵役経験は就職の際に経歴として認めてもらえるし、女性の新入社員よりも月給を多くもらえるということもある。

それでも若い男性の不満は小さくない。このため政界の一部ではこうした男性らの支持をあてこんで「女性も軍に服務すべきだ」と主張し、男女間の確執をさらにあおりがちだ。

対する女性側は、こうした一部政治家や若い男性らの主張に不満を爆発させる。女性には出産の苦痛があるうえ、毎月の生理を抱えそれが後を引くというのに、男性は18カ月の苦労だけですむではないか、という主張している。


◎女性優遇が大前提?

「女性側」は「女性には出産の苦痛があるうえ、毎月の生理を抱えそれが後を引くというのに、男性は18カ月の苦労だけですむではないか、という主張している」らしい。

こういう考えがどのぐらい広がっているのか不明だが、とりあえずこれが「韓国女性」の多数派の意見だとしよう。

この「主張」を言い換えると「男女は元々平等ではない。女性が優遇されるべきだ。なので男性のみに兵役が課されるのも正当化される」となる。「男女平等」を否定している。

個人的には「性別に関係なく権利を平等に与えられ義務を平等に負う」という意味での「男女平等」を支持している。韓国は男性のみに「兵役の義務」を課しているので明らかな性差別であり容認できない。

では「女性側」の主張には、どんな問題があるのだろうか。

まず、この主張を認めると差別を際限なく拡大できる。「出産の苦痛があるうえ、毎月の生理を抱えそれが後を引く」という条件がどの程度の男性差別で相殺できるのか基準作りが難しい。「男性は18カ月の苦労だけですむ」と「女性側」は訴えているらしいが、例えば30カ月ならどうか。「女性側」の「出産」「生理」の負担と釣り合うのか。仮に均衡するとして、それはどうやって計測するのか。

さらに言えば「女性側」が持ち出してきた理屈を男性側も使える。平均寿命は韓国でも女性の方が6年長い。

「男性は寿命が短い。女性は平均して6年も長く生きられるのだから18カ月の兵役は女性だけに課すべきだ。兵役分を差し引いても、女性は男性より長く生きられる」

こう訴えられたら「女性側」はどう反論するのか。「男性で長生きする人もいる」と言い出せば「女性で出産しない人もいるし生理の負担が重くない人もいる」と返されてしまうだろう。

どちらかが大変でその分は優遇されるべきとの主張は均衡点を見出すのが難しい。なので結局「男女平等」が分かりやすい。男女ともに「兵役の義務」を負う。徴兵制の継続を前提とすれば最も好ましい解決方法だ。

真の「男女平等」は女性に優しくない。そのことに多くの「韓国女性」は気付いているようだ。


※今回取り上げた記事「男性に不満を持つ『韓国女性たち』の容赦ない本音~『男vs.女』バトルが激しさを増す韓国のリアル」

https://toyokeizai.net/articles/-/511454?page=4


※記事の評価はC(平均的)

2022年2月21日月曜日

日銀以外の中銀は「金融引き締め方向に転換」?永井洋一 日経QUICKニュース編集委員の勘違い

「日本を除く世界の中銀は金融引き締め方向に転換」したと日経QUICKニュースの永井洋一編集委員は認識しているらしい。違うと思えたので、以下の内容で日本経済新聞社に問い合わせを送った。

夕暮れ時の工事現場

【日経への問い合わせ】

日経QUICKニュース編集委員  永井洋一様 日本経済新聞社 担当者様

21日の日経朝刊グローバル市場面に載った「脱ゼロ金利後は新世界~通貨防衛、暗号資産も参戦」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは「21年末、英イングランド銀行(中銀)が利上げに動くなど日本を除く世界の中銀は金融引き締め方向に転換」という記述です。

記事の説明を信じれば、日銀を除く全ての「中銀は金融引き締め方向に転換」しているはずです。本当でしょうか。例えばトルコです。「トルコ中銀、政策金利を据え置き」という2月17日付の日経の記事では「トルコは2021年9~12月、政策金利を計5%引き下げた」「(大統領の)エルドアン氏は17日の演説でも『金利(の引き上げ)はもはや議題ではなくなった』と述べ、経済運営に自信を示した」と伝えています。

この記事の内容が大筋で正しいとすると「トルコ中銀」は「金融引き締め方向に転換」していないはずです。

中国も「金融引き締め方向に転換」していないと思えます。1月20日付の日経の記事では「中国、2カ月連続利下げ」と報じています。その後に「金融引き締め方向に転換」したと取れる報道は、私が探した範囲ではありません。

「日本を除く世界の中銀は金融引き締め方向に転換」という説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。日経では読者からの間違い指摘を無視して多くのミスを放置する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。


◇   ◇   ◇


2月21日付の日経夕刊では「中国、政策金利据え置き」と伝えており、中国の中央銀行も「金融緩和の効果を見極める方針」のようだ。やはり「日本を除く世界の中銀は金融引き締め方向に転換」と見るのは間違いだろう。


※今回取り上げた記事「脱ゼロ金利後は新世界~通貨防衛、暗号資産も参戦」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220221&ng=DGKKZO80318010Q2A220C2ENG000


※記事の評価はD(問題あり)。永井洋一編集委員への評価はDを据え置く。永井編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「異次元緩和撤退が株高持続の条件」? 日経QUICKニュース永井洋一編集委員の無理筋https://kagehidehiko.blogspot.com/2022/01/quick.html

根拠なき楽観論が残念な日経社説「ロシアはこの戦いに勝てない」

根拠を欠く楽観論とでも言うべきか。21日の日本経済新聞朝刊 総合・政治面に載った「ロシアはこの戦いに勝てない」という社説は説得力がなかった。社説の前半を見ていこう。

夕暮れ時の美津留川

【日経の社説】

ロシアがウクライナとの国境近くに部隊を集結し、いまにも軍事侵攻する態勢を整えている。

ウクライナ国民は徹底的に抵抗する構えだ。西側諸国もかつてない結束を示し、ロシアに対峙している。もし暴挙に出れば、プーチン大統領が重視する国際社会でのロシアの権威や評価は地に落ち、経済面でも大打撃を受ける。

侵攻するにせよ、しないにせよ、ロシアは最終的に、この「戦い」に勝利することはできない。即座に撤退するのが賢明だ。

主要7カ国(G7)は19日、ミュンヘンで緊急外相会合を開き、ロシアによるウクライナ国境近くでの軍備増強に「重大な懸念」を示す共同声明を発表した。侵攻すれば「経済・金融制裁を含め甚大な結果を招く」と警告した。

ドイツのベーアボック外相は18日、ロシアと結ぶガスパイプライン「ノルドストリーム2」を稼働させない可能性を示唆。対ロ制裁で一歩踏み込んだ。

足並みの乱れが指摘されていた西側諸国だが、G7が一致してロシアに立ち向かう姿勢を示したことの意味は大きい。

特に、米国は一連の危機のなかでロシアの侵攻の兆候を示す情報を積極的に開示し、友好国と共有した。ロシアをけん制し、西側諸国が対策を講じる手助けとなったのは確かだ。


◇   ◇   ◇


疑問点を2つ挙げたい。


(1)どんな「戦い」?

「侵攻するにせよ、しないにせよ、ロシアは最終的に、この『戦い』に勝利することはできない」と書いているので「この『戦い』」は武力による戦争だけを指すのではないと取れる。とは言え、どんな「戦い」なのか明示していない。何を「勝利」の基準とするかも不明。それで「ロシアは最終的に、この『戦い』に勝利することはできない」と言われても困る。

見立てが正しかったか検証できないように、あえて漠然とした書き方にしたのかもしれないが…。


(2)なぜ「即座に撤退するのが賢明」?

「侵攻するにせよ、しないにせよ」結果は敗北だとしよう。その場合、どちらの方が敗北として受け入れやすいかで選択が定まるはずだ。「即座に撤退するのが賢明」と書いているのだから「侵攻する」方がロシアにとって失うものが大きいと日経は見ているはずだ。しかし、その根拠は見当たらない。

「もし暴挙に出れば、プーチン大統領が重視する国際社会でのロシアの権威や評価は地に落ち、経済面でも大打撃を受ける」かもしれないが、ウクライナへの実効支配を確立すれば「経済」などへの「大打撃」を上回る利益を得られるかもしれない。

利益より損失の方が圧倒的に大きいと日経が確信しているのならば、その説明は欲しい。

例えば「ウクライナ国民は徹底的に抵抗する構え」であり、ロシアがどんなに兵力をつぎ込んでも軍事的にウクライナに対して劣勢だと言うのならば「経済・金融制裁」などを覚悟してまで「侵攻」する意味はないだろう。だが、そうした記述もない。

結局「ロシアはこの戦いに勝てない」というのは分析ではなく願望なのだろう。そんな社説に意味があるのか。よく考えてほしい。


※今回取り上げた社説「ロシアはこの戦いに勝てない」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220221&ng=DGKKZO80322220R20C22A2PE8000


※社説の評価はD(問題あり)