2023年2月25日土曜日

日経朝刊1面「ウクライナ侵攻1年」連載に2つの誤り

25日の日本経済新聞朝刊1面の囲み記事を書いた甲原潤之介記者(安全保障エディター)と中村亮記者は「第2次大戦の後」の歴史を誤認しているのではないか。そう思えたので以下の内容で日経に問い合わせを送ってみた。

錦帯橋

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 甲原潤之介様 中村亮様

25日の朝刊1面に載った「ウクライナ侵攻1年:変わる世界秩序(中)核抑止、米ロ危うい均衡 ~やまぬ脅し、拡散リスクも」という記事についてお尋ねします。まず問題としたいのは「第2次大戦の後、他国への軍事侵攻は国際法違反となった。侵攻に踏み切る国は米欧の軍事介入に遭ってきた」とのくだりです。「第2次大戦の後」に「侵攻に踏み切る国は米欧の軍事介入に遭ってきた」とは必ずしも言えないのではありませんか。

例えば1979年に起きた中越戦争は「中国とベトナムとの戦争」(日本百科全書)であり「中国軍は雲南、広西方面から侵攻」したものの「米欧の軍事介入」に遭うことなく「近代戦に慣れたベトナム軍によって多大の損害を強いられ、自主的に撤退」(同)しています。

1969年の六日戦争(第3次中東戦争)も「イスラエルがエジプト、ヨルダン、シリアとの間で行なった戦争」(ブリタニカ国際大百科事典)であり「米欧の軍事介入」に至っていません。ちなみにイスラエルは「6日間に東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区、ガザ地区、シナイ半島、ゴラン高原を占領」(同)しています。

付け加えると、今回の記事の「ウクライナ侵攻が過去の例と決定的に異なるのは国連安全保障理事会の常任理事国で、核保有を認められているロシアが国際秩序を侵す暴挙に出たことだ」との説明にも問題を感じました。

1978年にソ連はアフガニスタンに侵攻しています。言うまでもなく「国連安全保障理事会の常任理事国で、核保有を認められている」国でした。この侵攻を「国際秩序を侵す暴挙」と見た日本を含む西側諸国は1980年のモスクワ五輪をボイコットしました。「ウクライナ侵攻」と似た状況と言えます。

第2次大戦の後」に「侵攻に踏み切る国は米欧の軍事介入に遭ってきた

ウクライナ侵攻が過去の例と決定的に異なるのは国連安全保障理事会の常任理事国で、核保有を認められているロシアが国際秩序を侵す暴挙に出たことだ

いずれも説明として誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。御紙では読者からの間違い指摘を無視してミスを放置する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。


◇   ◇   ◇


※今回取り上げた記事「ウクライナ侵攻1年:変わる世界秩序(中)核抑止、米ロ危うい均衡 ~やまぬ脅し、拡散リスクも

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230225&ng=DGKKZO68768550V20C23A2MM8000


※記事の評価はE(大いに問題あり)。甲原潤之介記者と中村亮記者への評価もEとする。


※甲原記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

何があってもやっぱり「日米同盟強化」? 日経 甲原潤之介記者「アフガンの蹉跌(下)」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/08/blog-post_20.html

日経 甲原潤之介記者は「非核化の歴史3勝3敗」と言うが…https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/33.html

どうなったら「世界分裂」? 日経 甲原潤之介記者に問うhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_25.html

日経 甲原潤之介記者の見立て通りなら在日米軍は要らないような…https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/04/blog-post_20.html


※中村亮記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

メキシコは「低税率国」? 日経1面「税収 世界で奪い合い」http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/09/blog-post_3.html

なぜ韓国は対象外? 日経 中村亮記者「米軍がアジアに対中ミサイル網」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/03/blog-post_5.html

EU批判は「NATO批判」? 日経  中村亮記者に注文https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/eunato.html

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