2020年7月8日水曜日

過去との比較が不十分な日経「大手銀、店舗業務を効率化」

7日の日本経済新聞朝刊 金融経済面に載った「大手銀、店舗業務を効率化~三井住友、全支店に予約制 手続き、ネット利用拡大」という記事は過去との比較がきちんとできていない。それで「ネット利用拡大」と打ち出すのは感心しない。全文を見た上で具体的に指摘したい。
九州佐賀国際空港(佐賀市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

大手銀行で個人向け取引のデジタル化がじわりと広がっている。三井住友銀行では4~6月の取引のうち、インターネット経由の比率が50%を超えた。みずほ銀行でもネットでの口座開設が増えている。新型コロナウイルスの感染予防のために呼びかけてきたネット利用が広がり、店舗業務の効率化が進みそうだ。

金融インフラを担う銀行はコロナ下でも営業継続を求められている。大手行の手続きの大半はすでにネットで代替でき、店舗の「3密」を避けるためにホームページや店頭でネット取引の活用を呼びかけてきた。

当初は窓口を訪れる顧客が目立ったが、三井住友銀では、口座開設や名義変更などの各種手続きにおけるネット取引の利用率が4~6月で50%を超えた。みずほ銀は5月に口座を開設した顧客のうち、4割がネット経由で、三菱UFJ銀行はスマートフォン経由の口座開設が6月に前年比で5割増えた

三井住友銀は6日、412ある全国の支店すべてで来店時の予約を受け付けると発表した。店舗ではコンサルティングなど高度なサービスに注力する考えで、リアルとネットの差別化を図りたい考えだ。三菱UFJ銀やみずほ銀もネットでの来店予約の対象を広げており、今後は地銀などにも広がりそうだ。

◇   ◇   ◇

問題点を列挙してみる。

◆以前の「利用率」は?

三井住友銀行では4~6月の取引のうち、インターネット経由の比率が50%を超えた」とは書いているが、その前との比較はない。1~3月でも前年同期でもいい。「デジタル化がじわりと広がっている」と伝えたいのならば、過去との比較は要る。

付け加えると「三井住友銀行では4~6月の取引のうち、インターネット経由の比率が50%を超えた」と記した後に「三井住友銀では、口座開設や名義変更などの各種手続きにおけるネット取引の利用率が4~6月で50%を超えた」と同じような情報を繰り返している。重複を避けて記事を作る技術を身に付けてほしい。


◆「みずほ」も比較がない…

みずほ銀行でもネットでの口座開設が増えている」「みずほ銀は5月に口座を開設した顧客のうち、4割がネット経由」と書いているだけで、こちらも過去の数値との比較がない。


◆「三菱UFJ」は比較があるが…

三菱UFJ銀行はスマートフォン経由の口座開設が6月に前年比で5割増えた」と、ここだけは過去の数値との比較がある。ただ「スマートフォン経由の口座開設」の比率がない。「三井住友」と「みずほ」では「ネット経由」の比率を見せたのに、なぜ「三菱UFJ」では触れないのか。「三菱UFJ」が公表していないのならば、その点を明示してほしい。


◆予約制「従来」はどうだった?

記事の終盤に出てくる「来店時の予約」の話にも注文を付けておきたい。「三井住友銀は6日、412ある全国の支店すべてで来店時の予約を受け付けると発表した」と書いているだけで、従来どうだったのかは分からない。

日経の別の記事では「三井住友銀は2019年1月に試験的に予約制を導入し、店舗の混雑を防ぐ目的から対象となる店舗を広げてきた」「現状、300店舗で予約制を導入している」と説明している。「現状、300店舗」という情報は今回の記事でも盛り込むべきだろう。


※今回取り上げた記事「大手銀、店舗業務を効率化~三井住友、全支店に予約制 手続き、ネット利用拡大
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200707&ng=DGKKZO61203970W0A700C2EE9000


※記事の評価はD(問題あり)

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