2018年9月10日月曜日

東洋経済オンライン「投資信託はこの3本が良い」の自己矛盾

東洋経済オンラインに9月9日付で載った「『投資信託はこの3本が良い』と言える理由~『グローバル=国際分散投資』とは限らない」という記事は信用しない方がいい。筆者であるマネーコンサルタントの頼藤太希氏は以下のように書いている。
そよ風ホールとハンググライダー(福岡県久留米市)
             ※写真と本文は無関係です

【東洋経済オンラインの記事】

もし、投資で負ける可能性を減らして堅実に勝ちたいなら、キーワードは、やはり「低コスト」と「国際資産分散」です。その観点で商品を絞っていけば、選ぶべき投資信託はすぐに見つかります。

(中略)そこで、今回は最後に、「世界全体の成長を得ながら勝つための投資信託」を3本選んでみました。

選ぶ基準は、(1)投資対象・地域が世界に分散されている、(2)運用コストが低い、(3)一定以上の成長をしているか、(4)純資産総額は一定規模以上(少ないと効率よく分散投資できないため)、(5)運用コストを控除した運用実績が堅調推移している(リスクに見合ったリターンが得られているか)などを判断して、選びました。最重要指標はもちろん「運用コスト」です。

●楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天投信投資顧問)
●eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)(三菱UFJ国際投信)
セゾン資産形成の達人ファンド(セゾン投信)

(中略)最後はベンチマーク(運用目標)となる指数を上回る成績を目指すアクティブファンドですが、「セゾン資産形成の達人ファンド」を選びました。独立系運用会社の「セゾン投信」が運用しています。

特徴は、それぞれの地域に強みをもち、安全性や長期的な収益力を基準に、選別投資をおこなうファンドへ投資する「ファンドオブファンズ」であること。国内を含む世界中の株式に分散投資をしています。なお、株式市場の過熱により有望な投資先がない場合は、債券にも投資する運用方針となっています。

短期的に利益を狙うのではなく、投資対象となる銘柄の価値を重視し、長期的な視点に立って値上がりを目指しているところが特徴です。10年以上も運用実績のあるファンドであり、順調に基準価額、純資産総額も増加。10年の累積リターンを見ると、TOPIX(東証株価指数)やモルガンスタンレー・キャピタル・インターナショナルが提供するMSCI-KOKUSAIなどの指数をしっかり上回っています。

ただ、信託報酬は年率1.35%±0.2%(税込)であるので、できれば「もう少し低くなると良いかな」というのが願望です。税抜きで1%を切れば一段と魅力が上がります。なお、セゾン投信は積極的に、全国で長期投資に関する初心者向けセミナーも随時開催しています。顧客を大事にしている運用会社であることが、今回の3本に選んだ要因の一つでもあります。

今回は「国際・資産分散」の観点で、投資信託の選び方をお伝えし、読者に最後に3本を紹介しましたが、ほかにも良い投信はまだあります。読者の長期的な資産形成にお役に立てれば幸いです。


◎最重要指標は「運用コスト」のはずだが…

キーワードは、やはり『低コスト』と『国際資産分散』」「最重要指標はもちろん『運用コスト』です」と書いているのに「信託報酬は年率1.35%±0.2%(税込)」という高コストの「セゾン資産形成の達人ファンド(セゾン投信)」を選んでしまっている。明らかな自己矛盾だ。
有明海(佐賀県太良町)※写真と本文は無関係です

記事で挙げた5つの基準を満たす投信が「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」と「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」の2つしかなく、仕方なく条件を満たさない「セゾン資産形成の達人ファンド」を選んだと言うならば、「投資信託はこの3本が良い」ではなく「投資信託はこの2本が良い」とすべきだ。

頼藤氏も後ろめたさがあるのだろう。「ただ、信託報酬は年率1.35%±0.2%(税込)であるので、できれば『もう少し低くなると良いかな』というのが願望です」と言い訳はしている。だったら迷わず「この3本」から外すべきだ。「セゾン投信」に何か恩でもあるのか。

セゾン資産形成の達人ファンド」がダメな理由をさらに2つ挙げたい。まず「『ファンドオブファンズ』であること」だ。「ファンドオブファンズ」では「セゾン資産形成の達人ファンド」が投資する「ファンド」の信託報酬も投資家が負担するので高コストになりやすい。

最重要指標はもちろん『運用コスト』」と考えるのならば、「ファンドオブファンズ」は論外だ。個別のファンドに投資するだけで「運用コスト」を下げられる。

セゾン投信は積極的に、全国で長期投資に関する初心者向けセミナーも随時開催しています。顧客を大事にしている運用会社であることが、今回の3本に選んだ要因の一つでもあります」という説明も納得できない。

初心者向けセミナー」は営業活動の一環と捉えるべきだろう。「顧客を大事にしている」と解釈するのは無理がある。ここでも、頼藤氏は「セゾン投信」に恩があるのかと疑いたくなる。

しかも「初心者向けセミナー」には無料で参加できるようだ。裏返せば、セミナーの開催費用は「セゾン資産形成の達人ファンド」の購入者などから得たカネで支えられているとも言える。やはり「セゾン資産形成の達人ファンド」は選択肢から外すべきだ。少なくとも「投資信託はこの3本が良い」と言える1本とは思えない。

アクティブファンド」だからダメだとは言わない。コストが同じならば、アクティブ運用でもパッシブ運用でもどちらでもいい。しかし、明らかにコストが高い「アクティブファンド」を積極的に選ぶ理由はほぼない。

頼藤氏は「投資信託 勝ちたいならこの7本! 」という本も出しているようだ。読んではいないが、今回の記事から判断すると、投資の参考にするのは危険だ。


※今回取り上げた記事「『投資信託はこの3本が良い』と言える理由~『グローバル=国際分散投資』とは限らない
https://toyokeizai.net/articles/-/237006


※記事の評価はD(問題あり)。頼藤太希氏への評価も暫定でDとする。

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