2015年7月9日木曜日

ダイヤモンド「瀬戸際戦術続けるギリシャ」 2つの誤り

週刊ダイヤモンド7月11日号「瀬戸際戦術続けるギリシャ~想定外のユーロ離脱はあるか」という記事に誤りと思える記述を2つ見つけた。



アムステルダムのミュージアム広場に面するコンセルトヘボウ
                   ※写真と本文は無関係です
◎危機発端は「2009年1月」?

【ダイヤモンドの記事】

ギリシャ危機の発端は、2009年1月に巨額の財政赤字が発覚したことだ。ギリシャ国債が暴落(利回りは上昇)して資金調達ができなくなり、EU、ECB、IMFに支援を求めざるを得なくなった。


政権交代に伴い巨額の財政赤字が発覚したのは「2009年10月」のはずだ。ダイヤモンドも2010年5月17日付の記事「ギリシャ危機・ユーロ危機噴出 100兆円支援措置でも燻る火種」で以下のように書いている。「その発端は昨年(※2009年)10月21日、ギリシャ政府が発表した驚愕の数字だった。2008年の財政赤字の実績と、09年の財政赤字見通しを大幅に上方修正したのである。08年の赤字の対GDP比率は5.0%から7.7%に、09年は3.7%からなんと12.5%に修正された


◎飛び火したのは「08年」?

【ダイヤモンドの記事】

08年、リーマンショックがギリシャと南欧諸国に飛び火する。巨額の財政赤字が露見したギリシャだけでなく、ポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインなど財政赤字の大きい国の国債が暴落した。これら国債を保有しているドイツやフランスなどの金融機関にも当然、危機は波及した。これが欧州債務危機へと発展した。


ギリシャで巨額の財政赤字が露見し、ポルトガルなどの国債価格の急落につながったのは2009年10月以降であり、「飛び火したのは08年」という記事の説明は誤りだろう。08年のリーマンショックは即座に世界中の経済に影響を与えたので、「その意味で飛び火したのは08年」と強弁できないくもないが、無理がある。

ついでに言うと「ギリシャと南欧諸国」と書くと「ギリシャは南欧ではない」との印象を与えてしまう。「ギリシャをはじめとする南欧諸国」などとした方がよい。「南欧諸国に飛び火」から「ポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインなど財政赤字の大きい国の国債が暴落」と続けているのも感心しない。この書き方だと「アイルランド=南欧」になってしまうが、アイルランドが南欧に含まれないのは自明だ。

※記事の説明は誤りではないかと6日(月)に問い合わせをした。8日までに回答はない。記事の評価はE(大いに問題あり)。大坪雅子、鈴木崇久、竹田孝洋、山口圭介の各記者の評価は暫定でDとする。


(注)結局、回答はなし。「2009年1月」に関しては、7月25日号に訂正が出た。

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