2021年9月22日水曜日

自らの「ダンマリ」は棚に上げて朝日新聞を批判するFACTAの罪

どの口が言うーー。FACTA10月号に載った「『子宮頸がんワクチン』を妨害!万死に値す『朝日新聞』」という記事を読んでの感想だ。「日本では空白の8年間に2万人以上が命を失ったが、朝日はいまだに反省も謝罪もせず、ダンマリを決め込んでいる」とFACTAは訴える。読者からの間違い指摘を無視して「ダンマリを決め込んでいる」FACTAに他のメディアの「ダンマリ」を批判する資格があるのか。

夕焼け

さらに言えば「朝日」が「反省」や「謝罪」をすべきとの根拠が乏しい。「朝日」の報道に誤りがあったのならば分かる。しかし、そういう説明は出てこない。当該部分を見ていこう。


【FACTAの記事】

HPVワクチンの接種率(2018年)は英国が82%、米国は55%、カナダは83%に達する。17年時点で接種率が80%というオーストラリアでは、28年ごろには子宮頸がんの「根絶」に相当する10万人あたり患者数を4人に減らせると予測している。これに対して日本は0.8%と極端に接種率が低い。

接種したのとは反対側の腕や肩、つま先、膝、背中などで頻繁にひどい痛みに襲われ、強い頭痛や激しい痙攣で日常生活に支障をきたすなどの副作用が報告されたからだ。これを受けて13年3月25日に発足した「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」は「サーバリックス」「ガーダシル」という2種類のHPVワクチンを槍玉に挙げ、大々的な反対運動を展開した。事務局長を務める東京都日野市議会の池田利恵議員は「これは間違いなく、戦後最大の薬害事件」と週刊朝日(13年7月26日号)誌上で煽った。同被害者連絡会をメディア側から全面バックアップしたのが朝日新聞の斎藤智子記者だ。国の積極的勧奨再開の動きに対し、14年4月9日付の「記者有論」というコラムで「私は納得できない。(中略)健康な少女たちに、治療方法のわからない副作用のリスクを負わせ続けるより、検診をより受けやすくする工夫を凝らす方が賢い選択ではないか。検診では副作用は起きないのだから」と論陣を張った。

だが、検診だけでは発症していても一定の割合で「異常なし」と判定されてしまう。その先に待っているのは子宮や卵巣、リンパ節を摘出する根治手術、強い副作用を伴う化学療法や放射線療法だ。幸い救命できても妊娠・分娩ができなくなり、排尿障害やリンパ浮腫、ホルモン欠落症状などの重い後遺症が残る。

斎藤記者と歩調を合わせたのが信州大学医学部の池田修一教授(当時)だ。13年12月15日付の記事では「痛みのある部位で、分子レベルで何が起きているのか原因を明らかにしたい」「痛みの発生に自律神経系の障害が関わっている可能性がある」と述べ、斎藤記者の原稿を補強した。盟友となった池田教授は子宮頸がんワクチンの影響などを調べる厚生労働省研究班の代表となり、16年3月16日の研究成果発表会で「子宮頸がんワクチンを打ったマウスだけに異常な抗体が見られた」などとぶち上げ、テレビでも同様の論旨を展開した。


◎どこが間違い?

朝日」の記事の何が間違いなのか。「私は納得できない。(中略)健康な少女たちに、治療方法のわからない副作用のリスクを負わせ続けるより、検診をより受けやすくする工夫を凝らす方が賢い選択ではないか。検診では副作用は起きないのだから」と「斎藤智子記者」が訴えたらしいが、何が間違いなのかをFACTAは明らかにしていない。「検診だけ」ではダメだと指摘しているだけだ。見解の相違にしか見えない。

そして話は「斎藤記者と歩調を合わせた」という「信州大学医学部の池田修一教授」の話に移っていく。記事では「痛みのある部位で、分子レベルで何が起きているのか原因を明らかにしたい」「痛みの発生に自律神経系の障害が関わっている可能性がある」という「池田教授」のコメントを使ったという。

発言の趣旨を曲げずにコメントとして使っているのならば、「池田教授」の主張が正しくなかったとしても「朝日」の責任はそれほど重くない。医学の分野で専門家の見方が正しいかどうかの検証を記者に求めるのは酷だ。

それでも「池田教授」の主張が間違っていたのならば、まだ分かる。しかし「痛みのある部位で、分子レベルで何が起きているのか原因を明らかにしたい」に関しては、意欲を語っているだけだ。「痛みの発生に自律神経系の障害が関わっている可能性がある」というコメントにしても「可能性がある」と断っており、何かを断定している訳ではない。

なのになぜ「朝日」が「反省」や「謝罪」をしなければならないのか。話が強引過ぎる。

記事の終盤でFACTAは以下のように記している。


【FACTAの記事】

朝日新聞はなぜ軌道修正できなかったのか。村中氏の「ジョン・マドックス賞」受賞は絶好のタイミングのはずなのに、小さな記事で受賞を報じただけ。国際政治学者の三浦瑠麗氏は村中氏の受賞を毎日新聞の「メディア時評」(17年12月28日付)で取り上げて「ジャーナリズムは間違えた時の対応こそ真価が問われる」と説いた。


◎人の振り見て我が振り直せ

ジャーナリズムは間違えた時の対応こそ真価が問われる」という「三浦瑠麗氏」の見方に異論はない。それをFACTAに当てはめるとどうなるか。

2017年1月号に関して間違い指摘をして、回答がなかったので催促したところ、宮嶋巌編集長(現在の編集人兼発行人)から「お問い合わせをいただいた諸点について申し上げることはございません」との返事が届いた。事実上のゼロ回答だ。そして、これを最後にFACTAは問い合わせに対して一貫して「ダンマリを決め込んでいる」。もう5年近くが経過している。

朝日」に対して「いまだに反省も謝罪もせず、ダンマリを決め込んでいる」と批判する前に、やるべきことがFACTAにはあるはずだ。

人の振り見て我が振り直せ

宮嶋氏にはこの言葉を贈りたい。


※今回取り上げた記事「『子宮頸がんワクチン』を妨害!万死に値す『朝日新聞』」https://facta.co.jp/article/202110018.html


※記事の評価はE(大いに問題あり)。宮嶋巌 編集人兼発行人については以下の投稿を参照してほしい。

記事の誤りに「説明なし」 宮嶋巌FACTA編集長へ贈る言葉https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/01/facta.html

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